象徴的だった開始5分のショートカウンター。マリ戦から一転、大岩ジャパンはウクライナ戦で積極的な姿勢を打ち出し勝利を掴んだ【U-23代表】

[国際親善試合]U-23日本 2-0 U-23ウクライナ/3月25日/北九州スタジアム

大岩剛監督が率いるU-23日本代表は、ウクライナに2-0で勝利を飾った。マリに1-3で敗れてから中2日、右サイドの山田楓喜(東京V)だけが2試合続けてスタメン。残りは入れ替わり、キャプテンマークは山本理仁(シント=トロイデン)に代わって、MF藤田譲瑠チマに託された。

その藤田が「前半から自分たちは積極的に、攻撃の部分でも守備の部分でも前から行けていた」と振り返るように、ウクライナのGKを使ったビルドアップに対して、コンパクトにプレッシャーをかけて、高い位置でボールを奪うことで、効果的な攻撃にも繋げることができた。

前半は多くのチャンスを作りながらも0-0で終わってしまったが、良い流れを呼び込む象徴的なシーンが開始5分にあった。

ウクライナのGKフェシュンがボールを持ったところに、FW染野唯月(東京V)が右センターバックに対するパスコースを切って、左脇からプレッシャーをかけに行く。キックの瞬間に足を出すと、ディフレクションのボールを藤田が相手より先に拾う。

GKからすると、染野に右センターバックへの選択肢を消されただけでなく、山田に左センターバック、荒木遼太郎(FC東京)にボランチのゼリズコへの選択肢を消された状況で、前に蹴るしかノーリスクな選択がない。しかし、そこが罠であり、染野にカットを狙われていたわけだ。

結果的にボールは前に飛んだが、藤田が予測してMFシヘイエフより早くボールの到達点に。見事だったのは、ボール奪取がそのまま素早いショートカウンターに繋がったことだ。

藤田はワンタッチで荒木にパスをつけると、荒木はチェックに来たゼリズコを外して右足シュートに持ち込んだ。シュート自体はやや上に浮いて外れてしまったが、チームに流れを呼び込むプレーになったことは間違いないだろう。

よく見ると、右外から山田がフリーで動き出しており、荒木がシュートモーションからパスに切り替えていれば、よりゴールチャンスは広がったかもしれない。それでも、マリ戦では前半からシュートが少ないことを藤田が指摘しており、そうしたことは試合前に話し合われていたようだ。

藤田も「最後、パスを出せば他の人がうまく打てるのになというシーンが前半にありましたけど、シュートを打ってこそリズムが生まれることもあると思うので。そこに関しては良かった」と振り返る。

そして前半のチャンスになかなか決めきれなかった荒木に関しても「決めたら嬉しいですけど、ああいうところから自分たちに流れが向いたかなとも思う」と語る。

【厳選ショット】後半に佐藤恵允・田中聡がゴール!無失点勝利でアジア最終予選へ!|国際親善試合 U-23日本 2-0 U-23ウクライナ

このシュートに行く流れに象徴されるように、雨のピッチでミスのリスクもあるなかでも、前向きなプレーが多く目につく試合だった。藤田は「今回のセンターバック2人も落ち着いてビルドアップできましたし、守備でハメて行く時も、前に強く行けていた」と振り返る。

「馬場(晴也)だったり(鈴木)海音もうまくコントロールしていましたし、他にも大畑(歩夢)だったりセキ(関根大輝)、後ろは全般的に声を出していましたし、前もうまく要求できていた」

リズムの良かった前半に得点が生まれず、嫌な雰囲気が漂いそうな状況ではあったが、ロッカールームでも「高い位置で奪ってからチャンスというシーンは多くて、それで点を取れなかったですけど、ハーフタイムでも焦れずに行こうという声は出ていました」と藤田。

そのうえで、後半のスタートから投入された細谷真大(柏)や平河悠(町田)など、途中出場の選手たちをうまく活かして得点を狙う意識をチームで揃えて、後半に入ったという。

待望の先制点は、CKから関根が絡んで、最後は佐藤恵允(ブレーメン)が押し込む形だったが、勝利を決定づける終盤の追加点は、佐藤のボール奪取から細谷が鋭い動き出しでショートカウンターを引き出し、3枚目の交代選手だった田中聡(湘南)の左足によるゴールとなった。

マリ戦は慣れないアフリカ勢ということを差し引いても、全体的に消極的なプレーが目立ち、試合中の声も限られた。それから短い時間で立て直せたのは見事だった。

もちろん、パリ五輪の出場権が懸かる4月のU-23アジアカップは、親善試合と違った戦いになるし、A代表がアジアカップで苦しんだような戦いに似てくる可能性もある。山本や藤田を中心に、チームの姿勢を共有して一旦解散。カタールに乗り込むメンバーがどうなるかは分からないが、ある種、A代表のワールドカップ最終予選より難しいとも言われる五輪の切符を掴む戦いに向けて、悪くない流れだろう。

取材・文●河治良幸

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