那須雪崩事故で幼なじみ亡くし...衝撃乗り越え警察官に 鹿沼署の高野巡査「人を助ける仕事」胸に

那須雪崩事故をきっかけに警察官を志した高野巡査。「多くの人を助けたい」と誓う=3月下旬、日光市今市

 2017年3月の那須雪崩事故で、幼なじみを亡くし、警察官を志した女性がいる。25日に今市署から鹿沼署に赴任した県警の高野美優(たかのみゆ)巡査(24)。事故で大きなショックを受けた一方、「人を助ける仕事がしたい」との思いを強くした。「雪崩事故は警察官として働く原動力」と語る。山岳救助や被害者支援で力を発揮することを目標に、新天地で職務に当たる。雪崩事故は27日、発生から7年を迎える。

 17年3月27日。懸命な捜索活動を伝えるテレビのニュースに高野さんはくぎ付けになった。当時、高校2年生。雪崩に巻き込まれた山岳部員には、幼少期に家族ぐるみの付き合いがあった浅井譲(あさいゆずる)さん=当時(17)=がいた。「どうか無事でありますように」。しかし、願いは届かなかった。

 高野さんは宇都宮市出身。父の転勤で那須塩原市に住んでいた幼少期、子育て関連施設で浅井さん家族と知り合い、交流が始まった。家の近くでよく遊び、公園で日が暮れるまで過ごした。ひまわり畑で撮った写真は宝物だ。転勤で同市を離れても、家族間で年賀状のやりとりは続いた。

 譲さんの母道子(みちこ)さん(58)は「譲がいじめられているような場面では助けてくれた。昔から正義感が強かった」と高野さんの姿を思い起こす。

 幼なじみが巻き込まれ、8人が亡くなった雪崩事故。「とにかくショックだった」。一方で「なぜ事故は起きたのか」「防ぐことはできなかったのか」との思いもこみ上げた。中学時代から漠然と抱えていた「多くの人を助けたい」との気持ちがより強くなった。

 心理カウンセラーにも憧れていたが、「現場で人命救助に携われる」と警察官を目指した。大学で犯罪心理学を学び被害者支援のあり方にも興味を持ち、22年4月、県警に採用された。

 昨年5月、タケノコ採りの高齢者が行方不明になった事案では家族に寄り添った。無事が確認されると、涙を流して感謝された。

 高野さんは「ありがとうという言葉が励みになる」と話す。「雪崩事故を決して忘れず、多くの人を助けたい」。山岳救助や被害者支援に携わることを目指している。

 道子さんは、警察官になった高野さんを頼もしく思っている。「将来助けられる人は何人もいるはず。まずは自分の命を大切にしてほしい」と願った。

© 株式会社下野新聞社