「売れている投資信託」には要注意!?…投資で“カモられる人”が気づいていない「残念な事実」【CFPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

投資をはじめるにあたり、「この投資信託は売れている」「人気がある」と聞いた場合、危険信号だと思ったほうが良いと、『ファイナンシャルプランナーが手取り足取り教える新NISA』著者でCFPの小山信康氏はいいます。株式投資には人気投票的な性質があるにもかかわらず、いったいなぜ「人気=危険なのか」。ほかの投資家から“カモ”にされないため、知っておきたい「残念な事実」をみていきましょう。

日本の投資家は投資が下手?

読者のみなさんのなかには、金融機関の担当者のアドバイスや風の便りで「この投資信託は売れている」「この投資信託は人気がある」と聞くと、少し心が揺れてしまうという人もいるのではないでしょうか?

もし、どこかで投資信託の情報を見て、そこに「人気がある」と記されていたら、危険信号と思ってください。なぜなら、「日本の投資家は投資が下手」だからです。

欧米には、次のような格言があるそうです。

「最初にアメリカ人が投資する。値上がりはじめたところでヨーロッパ人が投資する。高値を付けたところに日本人が寄ってくるから、そうなったら逃げろ」

日本人としては腹立たしいですが、全否定できない現実もあります。

[図表1]は、とあるバランス型の投資信託の純資産総額と分配金込基準価額を示したものです。一般的に、純資産総額が増えている商品は、投資の資金がたくさん流入し、人気が高まっていることを示していると考えられます。

[図表1]とあるバランス型の投資信託
『口座開設から銘柄選定・利益確定まで ファイナンシャルプランナーが手取り足取り教える新NISA』(彩図社)より抜粋

この投資信託は、比較的リスクの低い運用をするコンセプトの商品で、2020年初頭あたりまで、着実に値上がりしてきました。

ところが、コロナショックによる暴落以来、その基準価額は頭打ちとなり、人気が低迷しています。純資産総額も減少の一途をたどっています。

この商品に限らず、投資信託の基準価額と純資産総額の動きを分析すると、似たような傾向を示すケースが多くなっています。次のようなループです。

①運用成績が良い(基準価額が上がる)

②人気が高まり、純資産総額が増える

③運用成績が悪くなる(基準価額が下がる)

④人気が低迷し、純資産総額が減る(orあまり増えない)

⑤運用成績が良くなる(基準価額が上がる)

①に戻る

まとめると、値上がりすれば追いかけて、その後の値下がりをダイレクトに受け、値下がりする中で売却し、また値上がりし始めたものに手を出すという流れです。

だから投資をするなという話ではありません。「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」という孫子の兵法があるように、「決して自分は投資が上手な方ではない」ことを知っていれば、高値掴みせずに賢く投資ができるようになるはずです

人気に流されず、冷静に商品分析を行う姿勢を保ちましょう。

人気のアメリカ株式で運用する投資信託はどうか?

ここ数年、アメリカの株式で運用する投資信託の人気が高まっています。なかでも、「S&P500」に連動する運用を行う投資信託に人気があります。

[図表2]は、2023年11月までの30年間のS&P500の推移です。リーマンショック等の急落局面はありましたが、この30年のパフォーマンスは右肩上がりで推移しています。

[図表2]S&Pの推移
『口座開設から銘柄選定・利益確定まで ファイナンシャルプランナーが手取り足取り教える新NISA』(彩図社)より抜粋

[図表2]を見れば、長期投資にうってつけの資産と考えるのは当然なのかもしれません。

このような値動きを背景として、ここ数年、SNSや雑誌等で「S&P500」への投資が推奨される機会が増えています。しかも、2023年は円安ドル高の進行がパフォーマンスを後押ししました。

誰もが認める通り、アメリカは世界一の経済大国です。世界を代表する企業も、その多くがアメリカに集まっています。日本のように人口が減少していく不安もない上、新興国のようにクーデターが起こるようなリスクも高くありません。

「世界の株式の中で、リターンとリスクのバランスがもっとも良いのがアメリカの株式」と考える人がいても、仕方ないことでしょう。筆者自身も、アメリカの株式への投資は避けて通ることができないと考えています。

しかし、妄信的にアメリカの株式の値上がりに期待することには注意が必要とも感じています。

[図表3]は、1989年12月末までのTOPIXの推移(30年間)です。

[図表3]TOPIXの推移
『口座開設から銘柄選定・利益確定まで ファイナンシャルプランナーが手取り足取り教える新NISA』(彩図社)より抜粋

S&P500の推移に似ていると思いませんか? ちなみに、この当時は「ジャパンアズナンバーワン」という言葉も生まれ、日本経済が世界を引っ張っていると、日本人の多くが考えていた時代でした。

ところが、その後は「失われた10年」、「失われた20年」「失われた30年」と長い経済低迷の時代が続き、株価も低迷しました。

ここ数年、株価もだいぶ回復してきましたが、30年以上経った今でも、TOPIXは最高値を更新していません。

なお、現在では世界第2位の経済大国となった中国の上海総合指数も、2007年に最高値をつけて以来、現在は半分程度の水準です。

はたして、アメリカは日本や中国と違うのか、慎重に考えてみる必要はあるでしょう。

小山 信康
CFP®
1級企業年金総合プランナー

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