『ブギウギ』最終回直前で心苦しい展開に 羽鳥が気づいたスズ子への“特別な感情”

羽鳥善一(草彅剛)とのわだかまりを残したまま、悶々とした日々を過ごしていたスズ子(趣里)。しかし、スズ子の歌手引退への決意は固く、善一との関係がこじれたまま時間が過ぎ去っていく。

これまで二人三脚で数々のヒットソングを世に生み出してきたスズ子と善一。2人の間には単なる仕事関係では収まらない、2人にしか見えない絆が存在していた。善一の悲しいとも取れる静かな怒りの感情は、歌手・スズ子への信頼があってこそだろう。『ブギウギ』(NHK総合)第123話で、スズ子は歌手引退報告会見を開催することを決意する。

善一に次いで、引退の報告をしに行ったのはこれまで良きライバルとして切磋琢磨しあいながらも、困難な時代を乗り越えてきた茨田りつ子(菊地凛子)。スズ子が引退を伝えると、りつ子は「そう、残念ね」とあっさりと答える。いつものりつ子であれば、「そんなの自分には関係ない」と言わんばかりに無関心を貫いているはずだが、さすがに今回ばかりは違っていた。「歌手として女として同じ時代を生きてきた同士。だからあなたの決断を尊重します」とスズ子の引退を後押しする。引退を決めたスズ子に対して、「生涯歌い続けるわよ」というりつ子の言葉はどこかいつも通りでほっとしてしまった自分がいた。

その後、自宅へと戻るとタケシ(三浦獠太)がスズ子の帰りを待っていた。タケシはスズ子に無礼を詫び、「どこに行っても通用しなかった僕を励ましてくれたのがスズ子さんの歌だったんです。だからもっとスズ子さんの歌を聴きたかったんです」とまっすぐな眼差しで告げる。スズ子の歌に励まされたのはタケシだけではない。戦後、失意のどん底に落ちていた日本に元気と勇気を届けたのは、間違いなくスズ子の歌だった。そこでタケシの計らいもあって、スズ子はファンに向けて会見の場を用意することに決めるのだった。

●会見当日にスズ子(趣里)の引退会見を知らされた善一(草彅剛)

数日後にカツオ(竹下健人)が留学先のヨーロッパから一時帰国したということで、再び羽鳥家を訪れることに。しかし、肝心の善一はスズ子が来ると分かった途端に用事を作って外出してしまっていた。善一が会いに行った先はりつ子。善一はりつ子にスズ子の引退を撤回してもらうよう説得を試みるものの、あっさりと断られてしまう。その上で、りつ子はこう述べる。

「やっぱりあの子なんです。そしてあの子も先生なんです」

これまで善一は様々な歌い手に対して曲を書き続けてきた。だけど、スズ子と善一の間にある信頼は、りつ子から見ても特別なものに見えていた。りつ子の言葉を聞いた善一が恥ずかしそうな笑みを浮かべていたのが印象深かった。善一も、恋心とも友情とも全く異なる特別な感情をスズ子に対して抱いていたことに気づいたのかもしれない。

会見当日に麻里(市川実和子)からスズ子の引退会見を知らされた善一。その表情はどこか寂しげだが、すでに覚悟をしているようでもあった。前週とは打って変わって、最終回に向けて心苦しい展開が続いている『ブギウギ』。スズ子の物語もいよいよ終わりに近づいてきた。
(文=川崎龍也)

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