野球の米大リーグ(MLB)ロサンゼルス・ドジャースのスター選手、大谷翔平氏が25日(日本時間26日)、通訳だった水原一平氏に違法スポーツ賭博に絡む窃盗疑惑が持ち上がっていることについて、記者団を前に声明を発表した。大谷氏は、「ショック」を通り越して「言葉では表せないような感覚」だと語った。
大谷氏の通訳を長年務めてきた水原氏は、窃盗疑惑が浮上した先週、ドジャースから解雇されている。
大谷氏はこの日、ドジャースの球場で、用意した声明を読み上げた。「信頼していた方の過ちというのを悲しく、というかショックです」と述べた。
大谷氏は現在、いかなる不正行為にも問われていない。同氏は最優秀選手(MVP)に2度選選ばれるなど、MLBを代表する選手の1人。
今回の疑惑をめぐっては、大谷氏の代理人弁護士が水原氏を「巨額の窃盗」で告発している。また、米内国歳入庁(IRS)が犯罪の疑いで捜査しており、MLBも調査を進めている。
声明の発表で大谷氏は、自身はスポーツ賭博に関わったことはないと説明。水原氏が借金返済のために、大谷氏の銀行口座から数百万ドルを送金していたとされることについては、「全く知りませんでした」と述べた。
米スポーツ専門チャンネルESPNによると、大谷氏の銀行口座から少なくとも450万ドル(約6億8000万円)が賭博の胴元に送金されたという。
スポーツ賭博はアメリカの38州で合法だが、カリフォルニア州では違法。MLBもスポーツ賭博を禁止する独自ルールを設けている。
水原氏はESPNの取材に対して当初、ギャンブル絡みの借金返済で大谷氏に助けを求め、大谷氏がそれに同意したと述べていたとされる。
水原氏はESPNに、「明らかに(大谷氏は)喜びはせず、私が二度とこうしたことをしないよう助けると言った」と述べたという。
大谷氏の代理人は初め、メディアの取材で、この主張のとおりだとしていた。しかし、その後に水原氏が解雇されると、その説明を撤回した。
そして大谷氏はこの日、「(水原氏が)みんなにうそをついていた」と述べた。
韓国での開幕戦の後に
大谷氏はまた、水原氏は自らのスキャンダルをめぐって記者から問い合わせがあったことを大谷氏に伝えておらず、大谷氏の代理人に対しても、同氏が借金返済の肩代わりをしたと虚偽の話をしていたと述べた。
大谷氏によると、水原氏のギャンブル問題を初めて知ったのは、先週韓国で行われたドジャースの開幕戦の後だったという。水原氏から二人きりで会うよう頼まれ、「巨額の借金」があると告げられたという。
大谷氏は、「彼の借金返済にももちろん同意していませんし、ブックメーカーに対して、彼に送金してくれと頼んだことも、許可したこともないです」と述べた。
そして、この問題の対応は弁護士に任せ、自らは今シーズンに集中する考えを表明した。
大谷氏は2018年にアメリカでプレーを開始。以来、水原氏が常にそばにいた。
経歴詐称の疑いも
今回のスキャンダルで、水原氏の経歴にも疑いの目が向けられている。
水原氏は過去に、カリフォルニア大学リヴァーサイド校に通っていたと自身の公式経歴紹介で説明していたが、同校は水原氏が在籍していた記録はないとする声明を発表した。
また、報道やロサンゼルス・エンゼルス(大谷氏と共に昨年まで所属)の報道資料では、水原氏はボストン・レッドソックスに通訳として雇われていたとされてきたが、同球団は水原氏を雇ったことはないと発表した。
ドジャースのデイヴ・ロバーツ監督は24日、この問題に対応するとした大谷氏の決断を支持すると表明。
「彼が自分の知っていることを話し、この状況全体について自分の考えを述べようとしていることをうれしく思う」と記者団に話した。
大谷氏は先週、韓国・ソウルで行われたドジャース対サンディエゴ・パドレスの2連戦で、大観衆の前でプレーした。チケットは完売だった。
大谷氏は昨年12月、ドジャースと史上最高の10年総額7億ドルの契約を結び、同球団の顔となった。