回転焼きで有名な『御座候』の、隠れた冬限定名物「肉まん」

東京では今川焼。名古屋では大判焼。北海道ではおやき、岡山や広島では夫婦饅頭とも。いろいろな名前をもつ日本のおやつ、回転焼き。関西人にとっては『御座候』だ。

食堂からはじまった『御座候』

「お買い上げ賜り、ありがたく御座候」の思いを込めた、うどんと回転焼きが売りの食堂だった『御座候』。戦後間もない昭和25年、砂糖も小麦粉もまだ統制下にある中、「当時としては考えられないほど上質の回転焼き」は、看板商品として人気を集めた。「御座候ちょうだい」と、いつしか客が商品名として呼ぶようになって定着したのだとか。

味は、薄皮にたっぷり小豆の赤あん、てぼう豆の白あんの2種のみという潔さ。そのシンプルな味わいを求めて店先にいつも列ができている。

1950年から販売されている御座候 赤あん、白あん。

多角経営の歴史

先述の通り、『御座候』の回転焼きはあんこのみ。

でも実は、昭和37年頃には、ショートケーキやモンブランを売り出し、高級ステーキ、肉まん・あんまん、桶に乗って料理が流れてくるレストラン?!、100円ラーメン、居酒屋などなど、多角経営の歴史がある。

「それもこれも、小豆相場の乱高下に左右されることのない、安定経営を目指して」のことだった。

昭和60年から、新製餡工場、小豆の定温倉庫が完成。平成6年には小豆の契約栽培を開始。ようやく小豆を安定した価格で供給できるようになり、1990年代には、50店を出店。同時に、その他の商品の多くは姿を消していった。

時を経て復活した肉まん

そんななか、「当時のノウハウを生かした」という肉まんだけが2005年に復活。通常9月末~4月末までの冬場だけ、ショーケースのある店で売られている。

凍ったままレンジへ。1分で皮はふんわり、具はジューシーに。特殊な袋がプシュウと音をたてればできあがりだ。

2005年から復活した肉まん。冬限定で、ショーケースのある店で販売。

『御座候 本社』

住所/兵庫県姫路市阿保甲611-1

※こちらの記事は、関西の食のwebマガジン「あまから手帖Online」がお届けしています。

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