イライラを見える化せよ! ストレスフルな毎日への処方箋「アンガーマネジメント」

最近イライラ気味のあなたに、手帳形式のおもしろい本を見つけましたよ。その名も『アンガーマネジメントトレーニングブック』(日本アンガーマネジメント協会 監修/ミネルヴァ書房)。アンガーマネジメントとは怒りの感情と上手につきあうための心理トレーニングのこと。パワハラ予防として企業研修などにも取り入れられていて、新聞や雑誌でもよく目にするようになりました。

イラスト:しばざきとしえ(オフィスキリコミック)

価値観の違いが怒りを生む

『アンガーマネジメントトレーニングブック』には、イラッとしたことを記録する「アンガーログ」、自分がよく怒る「べき」を書き出して怒りを客観視する「べきログ」などのフォーマットがあり、感情を書いてコントロールしようというものです。

2024年度版には、一般の人の参加型企画「私の心が落ち着く魔法の言葉」も収録。冷静さを取り戻し、怒りの増幅を防ぐ言葉が掲載されていましたよ。自分用はもちろん、プレゼントにもよいかもしれません。

イラスト:しばざきとしえ(オフィスキリコミック)

そもそも怒りはどうして生まれるのでしょうか。日本アンガーマネジメント協会理事・戸田久美さんの著書『アンガーマネジメント』(日経文庫)によると、「こうするべきだ」「こうあるべきだ」といった、自分にとって譲れない価値観、信条、信じているもの(コアビリーフ)が破られたときに怒りが生まれるといいます。コアビリーフは人それぞれだから、同じ出来事を体験しても怒る人と怒らない人が当然出てくるわけです。

そして怒りというのは第二次感情であり、その裏側には落胆、不安、困惑、さびしい、悲しい、といった第一次感情が潜んでいます。これらが怒りという態度で表に出てしまうのだとか。

例えば、

(1)Aさんに挨拶したら返事がなかった

(2)「挨拶されたら返すべきだ」と考える(コアビリーフ)

(3)「あの人に悪いことしたっけ?」と不安になる(第一次感情)

(4)返事をしないAさんに怒りの感情を持つ

――という流れなわけです。

Aちゃんの例でいうと、返事がないことに対して落胆や困惑があり、それが怒りという態度で表に出てしまうのだとか。わかるわぁ。

イラスト:しばざきとしえ(オフィスキリコミック)

相手の一次感情に寄り添う

でもねでもね、自覚がある人はまだいいと思うの。「いけない、私変わらなきゃ」って、けなげじゃありませんか。

大変なのは自覚なくキレる人の怒りに巻き込まれたときです。グループLINEでも「えっ、そこ、そんなに怒るとこ?」みたいなポイントでキレちゃう人が急増中だそうですよ。イライラがたまっているのかもしれませんが、さて、こんな時どうする?

前述した書籍『アンガーマネジメントトレーニングブック』には巻き込まれたときの対処法も載っていました。要約すると、第一に、こちらも感情的になって言い返さないこと。こじれるだけだからね。相手の「べき」(価値観=コアビリーフ)を否定しないことです。

できれば相手の一次感情を考えてみましょう。「この人は本当は困っているんだ」「どうしたらいいのか不安に思っているんだ」とわかれば共感もしやすく、話を聞く姿勢をとりやすくなります。そうすると相手も「気持ちをわかってくれた」と態度を柔らかくしてくれることが多いのだそう。

そういえば昔、取材の電話をかけたら「気軽に電話するな、こっちはそれどころじゃない」と怒られたことがありました。

アレルギー対応食の先駆けみたいなお店だったから、さぞや言い尽くせぬ苦労話があるんだろうなと30分ばかりクレームというか愚痴に耳を傾けていたら、言いたいことを言ってスッキリしたのか「いろいろ言っちゃってごめんね」と取材OKをもらえたんです。これ、今みたいにメールだけのやりとりだったらアウトだったろうな……。

冷静に具体的にリクエストを伝える

では相手の「べき」をむりやり押しつけられたときは? 対処法のひとつは「異文化の人が言うこと」と思ってさらりと受け流すことです。

イラスト:しばざきとしえ(オフィスキリコミック)

もうひとつは事実と一緒にこちらの想いや要望を冷静に伝えること。著者の戸田さん自身も「女性は子どもがいたら出張なんかすべきじゃない」「子どもが小さいうちから働いていたら子どもがグレるよ」などと言われたそうです。

こういうときに「はあ?それ男性にも言います?言わないですよね?」とか「ププ。3歳児神話かよ」などと、ケンカ腰になったり冷笑したりしてはいけません。

戸田さんは関わりの薄い人から言われたときは「そう考える人もいますよね」と軽やかにスルー。ある程度関係性の深い人の場合は「家族の同意のもとで判断していることなので、これ以上言わないでほしい」とはっきり(かつ冷静に)伝えたそうです。

相手の怒りをコントロールしようと思わず、ネガティブな感情は相手のものだと割り切って引っ張られない。こちらが困っていることへの対処を冷静に具体的にリクエストする。こういった姿勢が大切なんですね。

心理的な距離をとって、主語を相手に置き換えて考えてみるのもよさそうです。

怒りは必要な感情

もちろん、怒りがすべて悪いわけではなく、自分たちの権利や心身の安全・安心を守るために必要な感情ではあるんですよ。「地域の医療を守れ!」とか「わいせつ教師に教員免許を再交付するな!」とか訴えることはとても大切。

問題なのは、周囲をふりまわして人間関係に悪影響を及ぼすような怒りの表現についてなので、そこんとこお間違えなく。理不尽なことには怒ってもいいんですよ。ただし建設的な行動につなげましょうねってことなんです。

イラスト:しばざきとしえ(オフィスキリコミック)

ともあれ、自分や周囲の怒りと上手につきあって、LOVE&PEACEな毎日を楽しみたいものですね。(サラマンダー華子)

■Profile

サラマンダー華子
ジャンルを問わない雑食系コピーライター

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