オーイシマサヨシがまさかのアニメ化 『道産子ギャル』の注力箇所が“なまらめんこい”

毎週、「ほとんどの作品を観ている」アニメライター・はるのおとによる週刊連載「【アニメ】神回・オブ・ザ・ウィーク」。3月18日から3月25日に放送された分から注目の“神回”をピックアップ!(編集部)

先週は『ちびまる子ちゃん』においてTARAKOさんがまる子役を務めた最後の放送がありました。今回は1時間スペシャルということで過去放送分を含む4本立て、しかも主題歌が往時のものだったり、TARAKOさんへのメッセージが表示されたりと特別感の強い内容(個人的には、過去放送分で水谷優子さんが演じられていたお姉ちゃんとまる子の掛け合いに涙腺が刺激されました)。TVerであと1週間ほど観られるので、未見の方はぜひ。

ちなみに今週は『サザエさん』が放送55周年の前祝いとして1時間スペシャルとなり、サザエさん一家が日本三大史跡を巡るそう。翻って考えると、『ちびまる子ちゃん』と『サザエさん』はどちらもいわゆる“日常系”の代表的な存在であることに疑いないでしょうが、日常系は繰り返される日常のなかで生まれる変化や非日常の描かれ方にこそ醍醐味があるとして、『ちびまる子ちゃん』のようなケースの変化はあまり見たくないものですが、『サザエさん』も旅という非日常のなかで何が描かれるか(もしくはいつも通りなのか)楽しみなところです。

閑話休題。今回は「やっぱり日常系っていいな」と思わされた作品の最終回の話からです。

●シリアス具合はこれくらいでいい『ぽんのみち』

『ぽんのみち』は女子高生たちが尾道にある元雀荘を遊び場として過ごす日々を描いたアニメ。そんな作品なのでメインキャラクターたちも対局をしたり、しなかったり。アクの強い麻雀マンガパロディも随所にありましたが、ご飯を食べるだけだったり、クリスマスパーティーをしたりといった話も多く、麻雀のルールをまったく知らない筆者のような人でも存分に楽しめる作品です。

そんな『ぽんのみち』において、いつもみんなが麻雀やご飯のために集い、囲んでいた電動雀卓のジャンタ君が故障するというのがこの最終回の話。つまりみんなが過ごしていた大切な場所が失われ、当たり前だった日常も少しずつ変化していく……のですが、結局はみんなでお金を出し、メーカー修理によってジャンタ君がサクッと復活する流れが実に軽やかで、ラストはこれからも少しずつ変化しながら楽しい日常が続くことを予感させるもの。『即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。』の最終回もそうですが、「終盤だからって変にシリアスになり過ぎず、こういうのでいいんだよ……」と改めて思わされます。

『五等分の花嫁』の春場ねぎ先生による魅力的過ぎるキャラクターや、滅茶苦茶にキャッチーなオープニング&エンディングといったフックがありながらも、地味~にいい日常系として忘れられない佳作となりました。

●注力箇所のおかしさがなまらめんこい『道産子ギャルはなまらめんこい』

アニメにおいて挿入歌は演出面においてかなり強い武器ですが、『道産子ギャルはなまらめんこい』第11話のような使われ方は珍しいかもしれません。本作は東京から北海道北見市に引っ越してきた男子高校生の翼と、彼が出会った道産子ギャル・美波によるラブコメで、この話ではふたりがデートに出かけます。

そして美波にとっての秘密の場所・芝桜が見られる公園(ここだそうで※)でふたりが仲睦まじく過ごし始めたところで、急にオーイシマサヨシさんが歌うオープニングテーマが挿入歌としてスタート。画面には、ステージ上でバンドと共にライブをするオーイシさんが唐突に映されます。あの公園に営業でもしに来ていたのでしょうか。

最近では同じく主題歌担当のHilcrhymeさんが『ピーター・グリルと賢者の時間 Super Extra』で声優に挑戦したり、『プリキュア』などでも芸人や俳優がゲスト声優として登場することはザラですが、これほどのインパクトは『ぷにるんず』でぺこぱが登場した時以来かもしれません。

しかもこのオーイシさん、明らかにほかのキャラクターとは異なる精緻な動きだったのも印象的。いろんなアニメが終盤に入って力を入れており、『道産子ギャル』もクライマックスに向けて恋愛劇が盛り上がる話なのにも関わらず「オーイシさんに力入れるの!?」という驚きもある一連のシーンでした。まあ、オープニングのラストのキャラクターによるダンスもやたらにキレよく動くし、ちょっとユニークな注力ぶりが好ましい作品です。

参照
※ https://shibazakura.net/news/43211/

(文=はるのおと)

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