把と鞘 これまでに例のない構造 富雄丸山古墳の「蛇行剣」 全体像が判明

国内最大の円墳・富雄丸山古墳から発掘された古代東アジア最大の「蛇行剣」について、これまでに例のない構造の把(つか)や鞘がつけられていたことが新たに分かりました。

4世紀後半に造られたとされる富雄丸山古墳では奈良市教育委員会の発掘調査で、これまでに出土例のない「だ龍文盾形銅鏡」と長大な「蛇行剣」が見つかり、県立橿原考古学研究所が保存に向けた処理を行っています。26日はこのうちクリーニング作業が終わった蛇行剣が公開されました。

「クリーニング作業が終わった蛇行剣。今回の新発見は、L字型の把頭と縁に付いた突起です」

蛇行剣の把は全長38cm前後、1本の木から作られたと見られ、手で握る部分以外には黒漆が塗られています。そして、把の先端にあたる部分には縦9cm、横18cmの大きな「把頭」がつけられていて、表面にはかすかに文様も確認できます。また、把の縁には突起がつけられていることも確認されました。この構造について、古墳時代の鉄製武器に詳しい専門家からは驚きの声が上がりました。

奈良大学 豊島 直博教授

「もう目を疑ったというか、大変驚きました。刀と剣のグリップの両方の要素を併せ持っているんですね。それは5世紀に、それぞれの刀と剣に分かれて主流になっていく分岐点になるものが富雄丸山古墳から出ているものだと思っています。」

一方、鞘にも新たな発見がありました。蛇行剣の鞘はホオノキが使われ、全長は2m48cmにも及びます。そして、先端にあたる鞘尻には刀剣を地面に立てて置く際に鞘を傷付けないよう保護する「石突」が、古墳時代の刀剣の鞘で初めて確認されました。

かつてない発見の蛇行剣。土やサビを取り除くクリーニング作業は、130日以上かけて傷付けないよう注意しながら手作業で行われ、これにより蛇行剣の全体像が明らかになりました。

県立橿原考古学研究所 奥山誠義さん

「指先がこわばるようなことも多々ありましたし、気を使いながら作業を進めたという点で非常に苦労しました。(蛇行剣は)我々も今まで見たことがない大きさということと、その先端部に漆で装飾された姿が見えるということに注目していただければと思います。」

なお、今後行われる本格的な保存処理作業を前に、蛇行剣の特別公開が行われます。特別公開は3月30日から4月7日までの間、県立橿原考古学研究所附属博物館で行われます。

© 奈良テレビ放送株式会社