「ようやく安心できた」 犯罪給付金、同性パートナーも対象「事実婚と同じ」 最高裁初判断、高裁に審理差し戻し

記者会見で話す原告の内山靖英さん(右)と代理人の堀江哲史弁護士(2024年3月26日/東京・霞が関の司法記者クラブ/弁護士ドットコム撮影)

犯罪の被害者や遺族に給付金を支給する国の「犯罪被害者給付制度」をめぐって、同性のパートナーを殺害された男性が、給付金を支給しないとした愛知県の決定の取り消しを求めた裁判の上告審で、最高裁・第3小法廷(林道晴裁判長)は3月26日、「犯罪被害者と同性の者は事実上婚姻関係と同様の事情にあった者に該当しうる」との解釈を示し、支給対象外と判断した二審・名古屋高裁の判決を破棄し、審理を差し戻した。

●原告「ようやく安心できた」

最高裁は判決で、同性パートナーについて「犯罪被害者の死亡により、民法上の配偶者と同様に精神的、経済的打撃を受けることが想定され、その早期の軽減等を図る必要性が高いと考えられる」としたうえで、そうしたケースは「犯罪被害者と共同生活を営んでいた者が、犯罪被害者と異性であるか同性であるかによって直ちに異なるものとはいえない」などと判断の理由を示した。

最高裁の判決後、原告側は東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開いた。

事件後に声を発することが難しくなった原告の内山靖英さん(49)は、代理人を通じて「ほっとした。パートナーを殺害された苦しみは同性でも異性でも変わらないのに、違う扱いをされることはおかしいと思っていた。今回、最高裁が同性パートナーも異性パートナーも同じだよと認めてくれてようやく安心できた」とするコメントを出した。

最高裁判決について、原告代理人の堀江哲史弁護士は「犯罪被害者給付制度の趣旨を踏まえて法の文言を解釈し、結論を導くという素直な法解釈がなされたものと評価している」と話した。

一方、これから名古屋高裁で改めて審理されることについて、弁護団は「非常に残念。愛知県は本判決を受けて速やかに遺族給付金を支給すべきで、審理をするのであれば名古屋高裁は速やかに請求認容判決を出すべきだ」という声明を出した。

●2014年に同性パートナーを事件で失う

訴状などによると、内山さんは名古屋市に住んでいた2014年12月、20年以上生活を共にした同性のパートナー(当時52歳)を殺害された。

「犯罪被害者等給付金支給法」(犯給法)は、遺族に該当する者として「犯罪被害者の配偶者」を挙げており、この「配偶者」について「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む」と規定してる。

そこで内山さんは、同性パートナーもこの「犯罪被害者の配偶者」にあたると考えて、2016年12月、愛知県に遺族給付金の支給を申請した。

しかし、愛知県は2017年12月、給付金を支給しないと裁定したため、2018年7月にその取り消しを求めて名古屋地裁に提訴した。

●名古屋地裁「社会通念が形成されていない」と判断

名古屋地裁は2020年6月、愛知県の決定があった時期に同性婚の法制化が実現していないことなどを挙げ、「当時の我が国において同性間の共同生活関係が婚姻関係と同視し得るものであるとの社会通念が形成されていたとはいえない」などとして訴えを退けた。

内山さんは控訴したが、名古屋高裁も2022年8月、「犯給法における『事実上婚姻関係と同様の事情にある者』についても異性間の関係を前提とする定めであると解するのが他の法令の解釈とも整合する」などとして退けていた。

内山さんは上告。最高裁第3小法廷が今年3月5日に当事者の意見を聞く弁論を開いたため、二審の判決が見直される可能性があるとみられていた。

© 弁護士ドットコム株式会社