「賃金と物価の好循環」定着へ、方向性議論 新資本主義実現会議

Kentaro Sugiyama

[東京 26日 ロイター] - 政府は26日、新しい資本主義実現会議を開き、先行きの人手不足が見込まれるなか、中長期的に「賃金と物価の好循環」を定着させるための方策を議論した。討議では、中高年齢層が活躍できる環境の整備や、多様な事業承継の支援などの論点が示された。

2024年春闘の連合1次集計では、ベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)を合わせた賃上げ率が33年ぶりの5%超えとなり、日銀も3月の金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除を決めた。実現会議では、物価の状況や金融環境の変化を踏まえて、今後の日本経済の大きな方向性について議論した。

事務局がまとめた基礎資料は、人手不足の中で意欲のある中高年層の活躍機会を確保することは重要だと強調。最近の米国の研究によれば急成長スタートアップ企業の創業時の平均年齢は意外に高いといい、これまでの仕事の経験を活かした起業も選択肢になり得ると指摘した。

自動化技術を利用している企業は、利用していない企業と比べて生産性・賃金が高いというデータも示された。仕事でのAI利用は、法律事務所や会計士事務所など専門サービス業、運輸業、宿泊・飲食などで業務効率向上に役立つとされた。

事業承継では、同族承継が減少し、内部昇格や外部からの就任が増加しているという。多様な承継を支援するため、金融・税制などの支援措置を検討すべきとの論点が示された。M&A(合併・買収)では民間仲介事業者などの手数料透明化や、地域金融機関の取り組み促進が必要ではないかとの指摘がなされた。

© ロイター