今年70歳になる父親の口座には「3000万円」が。詐欺が怖いので、息子である私の口座に移したいのですが、税金はどれほど発生するでしょうか?

高齢者の「お金」は狙われている?

警察庁によると、令和5年の特殊詐欺の被害額は前年比70億円増の441億円、認知件数は前年比1463件増の1万9033件でした。そのうち、65歳以上の高齢者の認知件数は、1万4878件となっています。

前年比236件の減少ではありますが、全体に占める割合は78.3%で、依然として高齢者が特殊詐欺の主なターゲットになっていることが分かります。このように、高齢者のお金は特殊詐欺を働く者たちから常に狙われています。そのため、被害に遭わないためには、高齢の親に対する注意喚起が重要です。

とはいえ、それだけでは防げない可能性もあるため、親の預貯金を子どもの口座に移動させるのも有効な対策の1つでしょう。ただし、その際には税金が発生する可能性が高いため注意が必要です。

親の「預貯金」を子どもの口座に移動させた場合に発生する税金とは?

特殊詐欺対策として、親の口座から子どもの口座に預貯金を移動させた場合には、「贈与税」が発生する可能性があります。贈与税は、贈与によって個人から財産を取得した際に発生する税金です。そのため、用途を限定せずに親の預貯金を子どもの口座に移動させた場合には、贈与税が発生すると考えてよいでしょう。

なお、贈与税には、暦年課税と相続時精算課税の2種類があります。では、親の口座から現金3000万円を子どもの口座に移動させた場合には、それぞれどれくらいの贈与税が発生するのでしょうか。

・暦年課税
暦年課税は、1人が1年間に贈与された財産の合計額から、110万円の基礎控除額を引いた残額に課税する方法です。暦年課税の税率は累進制で、課税対象になる贈与財産の金額によって異なります(10〜55%)。また、税率には一般税率と特例税率があって、税率ごとに異なる控除(0〜640万円)も設けられています。

・相続時精算課税
相続時精算課税は、当課税制度を選択した受贈者は特定贈与者ごとに、その年1年間に贈与された財産の合計額から、基礎控除額の110万円を控除し、特別控除額の適用がある場合はそれを控除した残額に課税する方法です。ただし、特別控除額が適用されるのは、贈与税の期限内申告書を提出した場合のみとなります。税率は一律20%です。

「3000万円」を贈与された場合の贈与税はどれくらい?

贈与税の課税方法には、暦年課税と相続時精算課税の2種類があることが分かりました。では、それぞれの贈与税はいくらになるのでしょうか。なお、本記事で紹介するのは、70歳以上の父親から18歳以上(贈与年の1月1日時点)の息子に3000万円を贈与した場合の計算例です。税率は、特例税率を使用します。

・暦年課税の場合
暦年課税の場合は、3000万円から基礎控除額の110万円を引いた残額の2890万円に課税されます。この場合の税率は45%で、控除額は265万円です。そのため、贈与税は1035万5000円になります。

・相続時精算課税の場合
相続時精算課税の場合は、3000万円から基礎控除額の110万円と、特別控除額の2500万円を引いた残額の390万円に課税されます。税率は一律20%のため、贈与税は78万円です。

「預貯金」を移動する場合は、親と話し合って「同意」を得よう

警察庁の統計によって、令和5年に特殊詐欺に遭った人の8割近くが高齢者であることが分かりました。このような状況を踏まえれば、親の口座から子どもの口座へ預貯金を移動させるのは得策であるといえます。

ただし、親から子どもへの預貯金の移動は贈与税の対象になる可能性があります。なお、家族であっても、他人の預貯金を勝手に別口座へ移動させることはできません。そのため、預貯金を移動させる場合は、親とよく話し合ったうえで必ず同意を得るようにしましょう。

出典

警察庁 令和5年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値版)

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

© 株式会社ブレイク・フィールド社