「紅麹」健康被害で小林製薬に問い合わせ約3600件 武見厚労相、行政への情報提供遅れに「遺憾」表明

「紅麹」が含まれた小林製薬(大阪市)のサプリメントによる健康被害問題で、「体調が悪い」などと訴える利用者からの問い合わせが約3600件に上ると、同社が2024年3月26日、取材に明らかにした。

このサプリを利用していた腎疾患の患者が死亡したケースも分かり、不安が広がっている形だ。武見敬三厚労相は、同社による行政への情報提供が遅れたことを批判し、消費者庁は、サプリについて「安全性の科学的根拠の再検証」を同社に求める事態になっている。

消費者庁は「安全性の科学的根拠再検証」求める

各社の報道によると、小林製薬は、24年1月にサプリを利用した患者や医師から健康被害の指摘があってから、2か月以上もこのことを発表しなかった。2月上旬には、複数の患者から訴えがあったというが、同社が発表したのは、3月22日だった。

発表時の報道では、「紅麴コレステヘルプ」など3商品の利用者13人に症状が出て、うち6人が一時入院するなどした。2人は、人工透析が一時必要になったほどで、25日の発表では、入院がさらに20人増えた。そして、26日になると、新たに約50人が入院したとの報道が出たほか、同社は同日、3年間同社のサプリを利用していた高齢者が2月に腎疾患で亡くなっていたと公式サイトで発表した。

これらのサプリについて、小林製薬は、安全に関するガイドラインに基づく資料を提出して、消費者庁に機能性表示食品の届け出をしている。これに対し、同庁は、健康被害が発生したとの報告を受けて、同社の資料について、「安全性の科学的根拠を再検証してほしい」と22日付で要請した。4月5日までが回答期限としている。

一方、健康被害については、武見厚労相は26日の閣議後会見で、「小林製薬が原因究明の調査をしている間、行政への情報提供を行わなかったのは遺憾だ」と批判した。

大阪市も「もっと早く情報提供してもらえれば」

厚労省の食品基準審査課によると、02年に、健康食品で健康被害が発生したときは、保健所に報告するという内容の通知を出している。

同課は3月26日、J-CASTニュースの取材に対し、「法的にやらなければいけないものではないが、この通知に沿ってご対応いただければと思っています」と説明した。

紅麹が製造された小林製薬の大阪工場を管轄する大阪市の生活衛生課は同日、取材に対し、健康被害が発生した原因などについて調査しているとしたうえで、「もっと早く情報提供してもらえればとの思いはあります」と明かした。

小林製薬は、商社や食品メーカーなど52社に紅麹を原料として提供しているが、市では、同社に対して情報提供するよう指導していると述べた。厚労省によると、52社のうち約25社が自主回収などの対応をしており、市では、残りの社についても、自主回収を行えば保健所に届け出るよう求めている。

不安が広がっているサプリについて、小林製薬の広報・IR部は同日、取材に対し、通信販売の問い合わせフォームを通じて、「体調が悪い」などといったメールが22~25日昼過ぎまでに約3600件に達したことを明らかにした。「その後も、続々お問い合わせが来ています」という。

安全性の根拠を求める消費者庁の要請については、「指示を受けて対応しており、期限までには回答できると思います」とした。行政への健康被害報告が遅れた理由については、「確認中ですので、お答えできません」と述べた。52社の名前などは、非開示の方針に変わりがないとしている。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)

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