すりおろしリンゴを食べ6カ月女児死亡 国の指針に沿わず生で、119番も遅く…保育園の問題が検証委報告書で明らかに

認可保育所「興教寺保育園」=姶良市

 姶良市の認可保育所「興教寺保育園」で昨年4月、6カ月の女児がすりおろした生のリンゴを食べた後に急変、約40日後死亡した事案について市は26日、有識者らでつくる検証委員会の報告書全文をホームページで公表した。離乳食の与え方に関し、リンゴは加熱して提供するといった国の事故防止指針に沿っていなかったとして同園で誤嚥(ごえん)・窒息防止の「危機管理が不十分」だったと問題視。女児の月齢に対し、離乳食の回数が多かったことも指摘した。

 リンゴは、栄養士が7ミリ程度に薄く切り生のまま保育室に運び、女児に提供する保育士がすりおろしていた。リンゴの状態は、同じ保育士が目視したのみで、複数によるチェックはなかった。

 離乳食の回数について国のガイドで離乳食初期(生後5~6カ月ごろ)は1日1回だが、女児には当日3回提供していた。園は「おやつを食事として数えていなかった」と説明した。

 急変の直前には、女児を着替えさせるために保育士があおむけで寝かせた。「寝かせる前に口の中に食べ物が残っていなかったかの確認や表情観察が不十分だった可能性がある」とした。

 女児の異変発見後に119番するまで約8分経過していた。「窒息を発見した時点で、大声で人を呼び、119番し、並行して異物除去の応急処置を行うべきである」と課題に挙げた。

 再発防止に向けては、乳児のケガや事故を想定した研修・訓練を行う、市独自の「離乳食提供ガイドライン」を作成するなど7項目の提言を示した。

 事案発生時に対応した職員らの勤務形態や年代、保育経験年数について記載はなかった。市の対応に関する課題の分析もなかった。

 遺族の代理人によると死因は、誤嚥し窒息状態になったことが原因とみられる多臓器不全。検証委は、警察から窒息の原因となった異物などの情報提供は受けられず、「リンゴを誤嚥して窒息状態になった」という仮定で分析した。

 検証委は22日、市に報告書を提出した。会見では、検証の経緯、課題と提言の項目のみを示し「概要版」としていた。

 同園の代理人は、報告書について26日までに南日本新聞の取材に応じていない。

検証委の報告書が指摘した保育園の問題をまとめた表

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