『Eye Love You』絵本の結末を乗り越えた侑里とテオ “希望”に溢れた感動の最終回に

「僕は(心の声は)聞こえないけど、侑里さんの気持ち、わかります。全部はわからないかもしれないけど、侑里さんの気持ち、いっぱいわかりたいです。大丈夫です。僕たちなら、大丈夫です」

ついに最終回を迎えた火曜ドラマ『Eye Love You』(TBS系)。誰もが固唾をのんで見守ったのは、侑里(二階堂ふみ)とテオ(チェ・ジョンヒョプ)に待ち受ける運命の行方だ。テレパスの能力を持つがゆえに、不幸なことが続き、最終的には愛する人を失ってしまうかもしれないという結末を絵本で知った2人。それでも侑里を愛し続けることを覚悟していたテオだったが、危うくバイクと衝突してしまう事態に……。

幸いにも命に別状はなかったものの、自分の身に何かが起きたときに最も悲しむのはほかでもなく侑里だという現実を突きつけられる。愛する人から離れることなんてできない。でも、そのせいで辛い思いをさせてしまうことはもっと耐えられない。そして、テオは身を切るような思いで侑里の会社「Dolce & Chocolat.」を退職し、愛を諦めるために韓国・ソウルへと帰ってしまうのだった。

2人が一緒にいられるために考えられる条件は、ただひとつ。侑里のテレパスの能力をなくすこと。だが、それは同時に声を出せない父・誠(立川志らく)としていた心の声での会話ができなくなることを意味していた。父との会話か、恋人との未来か……。しかし、このドラマは侑里に愛する2人のどちらかを選択するようなことはさせなかった。星空の下で愛する人と33秒間目を合わせれば能力をなくすことができると知った侑里は、テオとそれを試そうと決意する。場所は、2人がシャボン玉や木の葉を撒いて笑ったあの思い出の屋上だ。しかし、30秒を過ぎたギリギリのところでテオは「やっぱり嫌です」と、その試みを阻止。そして侑里を抱きしめながらこう言うのだ。「僕が好きになったのは、そのままの侑里さんです」と。

これまで心の声が聞こえてしまうからこそ、たくさん傷つき、誰かを愛することに臆病になっていた侑里。彼女にとっては苦しい秘密だったけれど、その能力ゆえにたった1人の父親と繋がることができた。そして、その力があったからこそ「Dolce & Chocolat.」という夢を叶えられたのも事実。人に向けて言葉を慎重に選ぶ長所も、誰かに心を開くことを怖がる短所も。今の侑里をテレパスを抜きにしては語ることができない。だから、テオは「なくさないでください」と侑里を抱きしめたのだ。無理に自分を変える必要はないのだと。いいところも、そうではないと思っているところも、全部含めてありのままの侑里なのだから、と。

誰かと共に生きるためには、様々な変化に順応していくことは大切だ。でも、それが大事な“その人らしさ”まで失ってしまうことになるのは、どこかに歪みが生まれてしまうもの。それは侑里がビジネスで実現したいと願った「Dolce & Chocolat.」のスタンスでもあり、テオが絶滅危惧種を研究する飯山教授(杉本哲太)のもとで学んできたことにも繋がっているような気がした。

ありのままを愛し続けるために、何ができるのかを考え続ける。それが2人に待ち受ける運命を大きく変えるキーワードだったように思う。その一つの答えが、花岡(中川大志)の「人が頭で考えてることが100%だとしたら、言葉で相手に伝えられてることって実は5%ぐらいしかないらしい。それなら、その5%、大事に使わなきゃもったいなくない?」という台詞に集約されていたのではないか。

「僕たちなら、大丈夫」と2人で絵本の結末を乗り越えた侑里とテオの1年後は、日本語と韓国語、そして時には心の声と口にする言葉とを交えながら、今の自分の頭の中で考えていることを相手と全力で共有しようとする姿が描かれた。同じ意味でも、言語が異なればその響きが変わる。テオが日本語で話しかけるのは、侑里に寄り添いを感じるし、逆に侑里が韓国語で話したときにはさらに心の距離が縮まったような感覚がある。心の声が直接聞こえることと、口に出してましてや大きな声で言ってみるのとでもまた印象が大きく違う。実際に、ここまで物語を見つめてきた人なら侑里が「マニサランヘ」と叫んだ言葉が、かつてよりもずっと愛しく聞こえたのではないだろうか。

今、自分が何を思っているのか。それを5%以上伝えるために、試行錯誤しようと思えばいくらでもできるということ。真尋(山下美月)と小野田(清水尋也)との恋模様だって、同じ日本語を母国語としている2人にも関わらず、いつもすれ違いばかりだった。それでも相手の気持ちを知りたい、自分の想いを知ってほしいと願い続けた結果、ついに小野田は真尋を喜ばせることに成功する。また、言葉を発することのできない誠と飯山教授もアイコンタクトで意思疎通を試みようとする姿が映し出された。

さらに、娘の彼氏とご飯に行くことになった亀井(ゴリけん)が、新しい髪型で臨もうとしているのも、言葉にはならないけれど娘とその彼氏と「仲良くなりたい」という意思の表れだろう。人はもっともっといろんな形で愛を伝え合うことができる。そんなメッセージがエンディングから伝わってくるようだった。

そして、あれだけ「職権乱用」を嫌う存在として恐れられていたからこそ、侑里の元へ行けとチケットを渡しながら「(職権を乱用をした)業務命令だ」と言ってのけた粋さも、このドラマの作り手から花岡というキャラクターへの愛を感じるシーンだった。自分の能力のせいで恋人が命を失ったと思っていたミン・ハナ(玄理)に、そうではなかったのだという背景を伝えた花岡。打ち合わせの後、「Dolce & Chocolat.」メンバーとのお花見に誘ったのも、きっと侑里のように「もう誰も愛さない」と心を閉ざして生きているであろうミン・ハナを思ってのことではないかと想像する。

誰もがテオのように、そしてあの絵本の少年のように、愛で誰かの心を開くことができる。その姿を見た他の誰かが、また愛を伝えていく……。その連鎖に私たちもきっと入ることはできるはず。そして、この世界はもっと温かなものになる。そんな「希望」を感じずにはいられない最終回だった。

(文=佐藤結衣)

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