県内公示地価 富山「独り勝ち」顕著に 断続的な駅前開発がけん引

富山駅周辺。開発事業が進み、駅の南北で土地の価格が上昇している=富山市内

  ●総曲輪、桜木町4年連続下落 

 26日に発表された富山県の公示地価(1月1日時点)は、富山駅周辺の再開発事業を背景に、商業地で価格上昇が目立った。駅周辺では北陸新幹線金沢開業や路面電車の南北接続以降、断続的に商業施設やホテルの開発が行われており、富山の「独り勝ち」が顕著になっている。一方、長らく富山市の中心街を形成してきた総曲輪商店街や歓楽街・桜木町周辺は4年連続で価格が下落した。

 上昇率、価格ともに県内トップだった富山市桜町2丁目は、CiCビル近くの飲食店が集積する地点で、駅周辺の開発とともに観光客が訪れるようになり、にぎわいが増している。

 2015年の新幹線開業、20年の南北接続後、駅周辺ではホテルや商業施設の開発が盛んに行われている。22年に商業施設「マルート」とホテルヴィスキオ富山が入るJR富山駅ビル、ホテルJALシティ富山が、23年にはダブルツリーbyヒルトン富山がそれぞれ開業した。駅北では昨年、市がオーバード・ホール中ホールを開館し、隣接地には今月、7階建ての複合テナントビル「Dタワー富山」が完成した。

 富山駅周辺開発協同組合の白倉三喜理事長は駅周辺の地価の上昇について「路面電車の南北接続やマルートのオープンで駅前の露出が増え、人が集まるようになった。明るい兆しで大変ありがたい」と歓迎した。

 今後も駅北では商業施設やマンションなどの開発が計画されている。牛島本町でタカラレーベン(東京)が分譲マンションの建設を進めており、北陸銀行は26年度をめどに新本社ビルを整備する。富山市は市営住宅「奥田団地」跡地の再開発を予定する。

 白倉理事長は「この先さらに地価は上がるのではないか」と期待した上で「駅から総曲輪まで1キロ程度。駅周辺の動きが中心部にも広がってほしい」と話した。

  ●「にぎわい戻らず」桜木町 

 ただ、総曲輪や桜木町では地価の下落が止まらない。総曲輪3丁目は前年比マイナス1.6%の37万円、桜木町は同1.1%の18万2千円だった。桜木町は調査地点となった1993年以降、上昇していない。総曲輪は2008年に上昇して以来、下落と横ばいを繰り返している。

 桜木町地区振興事業協同組合の澤田悦守理事長は、駅周辺に人が集まる一方、町の飲食店にはコロナ前のにぎわいが戻っていないと嘆く。隣接する総曲輪1丁目でビジネスホテル「スーパーホテル」の建設が始まったことを挙げ、「経済回復には観光客の増加が必要。(21年に閉館した)富山第一ホテルの活用も決まれば、客の流れは変わる」と中心部の再開発に期待した。

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