~観光都市(?)奈良のこれからを考える ⑩~世界遺産 ふたたび~

今回は、以前お話した奈良県の「世界遺産」について、ふたたび触れたいと思います。

昨年2023年10月から2024年2月にかけて開催されたアニバーサリーイベントに関連してお話したいと思います。

それでは、世界遺産の登録順で進めさせていただきます。

法隆寺地域の仏教建造物

伽藍配置が素晴らしい法隆寺

まず初めに、1993年に日本で初めて世界遺産に登録された「法隆寺地域の仏教建造物」です。2023年は世界遺産登録から30周年にあたります。これを記念して、2023年10月28日(土)・29日(日)の2日間、法隆寺聖徳会館で「第10回世界遺産サミットin斑鳩」が開催されました。

第10回の節目となる今回のテーマは、「温・故・知・新~世界遺産の普遍的価値の継承と活用をデザインする持続可能な地域づくり~」でした。世界遺産の保全や観光面での活用の重要性はもちろんのこと、世界遺産を核として地域の特色を活かしながら、地域と調和のとれた「持続可能」な世界遺産のあり方やこれからのまちづくりについて、のべ約570人の参加者を前に活発な議論を展開されました。

世界遺産が所在する自治体の長をはじめ、文化財分野や観光分野の有識者などが法隆寺聖徳会館に集結しました。

古都奈良の文化財

朱色が映える春日大社

次に、1998年に登録された奈良市内の社寺仏閣を中心に構成された「古都奈良の文化財」です。こちらも2023年は世界遺産登録から25周年にあたります。これを記念して、8つの構成資産のうち全てのお寺と神社(東大寺、興福寺、春日大社、元興寺、薬師寺、唐招提寺の6社寺)の「共通拝観券」が8月22日から発売されました。

古都奈良の文化財(シンポジウム)

6社寺共通拝観券は史上初の試みです。そのため、発売開始日には、6社寺と奈良市、奈良市観光協会が東京都内で記者会見を開きました。

また、深まる秋の夜を満喫する催し「秋夜の奈良旅2023」が11月の毎週金・土曜日に行われました。そして、8つの構成資産にちなんで「新南都八景」もが選出されました。

紀伊山地の霊場と参詣道

紀伊山地の霊場と参詣道遠景

最後に、2004年に登録された和歌山・奈良・三重の三県に跨る「紀伊山地の霊場と参詣道」です。こちらも2024年は世界遺産登録から20周年にあたります。これを記念して、「紀伊山地の霊場と参詣道」世界遺産登録20周年記念サミットが、2024年2月に東京・秋葉原で開催されました。

奈良・和歌山・三重の3知事と沿線の奈良県吉野町・天川村・野迫川村、和歌山県九度山町、那智勝浦町、三重県尾鷲市・熊野市・紀宝町・多気町の9首長からの魅力紹介を交え、さまざまな取組みと今後の連携についてトークセッションが展開されました。

候補・・・飛鳥・藤原の宮都とその関連遺産群

偶然にも3つが周年事業、何かの縁かも知れません。

そして、これらに加え、2026年に「飛鳥・藤原の宮都とその関連遺産群」が世界遺産に登録されることになると、益々奈良が盛り上がることでしょう。また最近、「富雄丸山古墳」の未盗掘の木棺内から青銅鏡と竪櫛が見つかったことや、平城宮に近い平城京の土坑(穴)から「大嘗分」と書かれた木簡が出土しました。そのため、秘儀とされる大嘗祭の実態に迫る発見になりそうだという報道が駆け巡りました。

奈良の歴史について、そのポテンシャルの高さを伺わせるニュースではないでしょうか。

機会があれば、ぜひ奈良で奥深き日本の歴史に触れてみて下さい。

若草山で戯れる鹿たち

(つづく)

(これまでの寄稿は、こちらから)

寄稿者 志茂敦史(しも・あつし) 奈良交通㈱ 東京支社長

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