【3月27日付編集日記】家の中心

 福島市のあづま総合運動公園内を散策したついでに、古い民家などを移築、保存する市民家園に寄ってみた。ジョギングしたり、子どもと遊んだりしている人でにぎわう園内とは打って変わり、ひっそりしていた

 ▼ある古民家に足を踏み入れたとたん、いつにも増して懐かしい香りが広がってきた。いろりに水の入った鍋がかけられ、まきが燃えていた。イベントで料理を振る舞うのかと思って近くの職員に聞いてみたら、休園日を除き毎日、順繰りに燻蒸(くんじょう)しているという

 ▼いろりから立ち上る煙は屋内を乾燥させる。すすと一緒にかやぶき屋根や柱に染み込み、防虫や防水の役割を果たす。いろりを囲み鍋を分け合うだんらんの時間を思い浮かべる。揺るぎない家の中心が、かつてそこにあった

 ▼マイナス金利解除の影響が気になるところだが、近くの分譲地で新築ラッシュが続いている。建築中の家を見かけると、入居を心待ちにしている人たちはどんな家族なのだろうとつい想像してしまう。人ごとながらリビングの間取りも気になる

 ▼若い世代にとって子育ては経済的な負担が大きい。少子化が進む将来への不安も抱える。笑顔の絶えないリビングから、希望が広がっていくことを。

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