スポーツ移住促進に力 五輪基準の練習設備PR 茨城・境町 家族向け住宅も整備進む

第6期の定住促進住宅が完成しテープカットする橋本正裕町長(中央)ら=境町住吉町

「スポーツを核としたまちづくり」を掲げる茨城県境町は、五輪基準を満たすスポーツ施設と移住者向け住宅の整備をセットでPRし、町を挙げて〝スポーツ移住〟を促している。自転車BMXなど若者に人気の競技に着目し、練習環境の充実とともに家族との生活も大切と、家族ぐるみでの移住を支援する態勢だ。

同町がスポーツ施設に力を入れたきっかけは2021年の東京五輪。長年にわたるアルゼンチンとの交流が縁で同国選手団が事前キャンプを張るホストタウンに名乗りを上げ、五輪基準のホッケー場やテニスコート、柔道場などを整備してきた。今年2月には、BMXの国際大会誘致を目指して二つ目の競技場となる「アーバンスポーツパーク2nd(セカンド)」を完成させた。

BMXの国内トップ級選手で、23年4月に一家そろって町に移住してきた白井怜穏さん(14)、玲恵奈さん(12)のきょうだいは国内大会でともに上位に入る実力者。兄の怜穏さんはフリースタイル・パーク種目の強化育成だ。白井さん一家が東京都内から引っ越してきた理由は、父親の雷音さんが「世界基準の施設がある」と、同町にほれ込んだからだ。

神奈川県川崎市の斉木崇之さんは近く同町に移住してくる。「9歳の息子がBMXの練習に来た時に『ここで毎日練習したい』と話し、移住を考えた」と語る。

受け皿となる定住促進住宅は2018年度から毎年度建設され、第8期まで計画されている。これまでに整備したマンションタイプの集合住宅全108戸と、一戸建て住宅5棟を含めた計44棟は予約も含め全て満室だ。25年間家賃を払い続けると、土地も含めて持ち家にできる特典も魅力に映っているようだ。

23年度に同町住吉町に完成した第6期の一戸建て住宅22棟には、秋田県、沖縄県、フィリピンなどから約230件の申し込みがあり、大好評だった。3月15日に現地で落成式があり、沖縄県北谷町から移住する安次富美和さんのコメントが紹介された。「サッカー選手を目指す長男が、久保建英選手も選ばれた『バルサキャンプ』のMVPに選ばれ、関東への移住を考えた。その時に英語教育に力を入れる境町が目に留まった」

橋本正裕町長は「今回、新たに100人を超える子育て世帯が3月末までに転入してくる。町からBMX競技などの五輪選手が出る日も近い」と笑顔を見せた。

町によると、東京五輪以降、選手や家族ら25人以上が移住し、今後もプロスノーボーダーの鬼塚雅選手や、ホッケー女子の日本代表候補の永井葉月選手が移住してくるという。

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