低反発バット影響、小技重視に センバツ1回戦16試合分析 盗塁・犠打増、長打・安打変わらず

1回戦で新基準の金属バットではなく木製バットを使い、サヨナラ勝ちにつながる三塁打を放った青森山田の吉川=21日、甲子園球場

 反発力を抑えた新基準の金属バットが導入された第96回選抜高校野球大会(センバツ)は、26日までに出場32校による1回戦計16試合を終えた。東奥日報のまとめによると、今年と前回大会での各校初戦の打撃成績は長打、安打数などに大きな差はないものの、盗塁数や犠打数は増加。各校はより1点の重みが増したと見て、小技も生かした野球を展開する傾向にある。

 新基準バットは、ピッチャーライナーなどによる投手のけがを防ぐことを主な目的に導入した。従来と比べ最大直径を3ミリ細くし64ミリ未満に、さらに打球部(芯付近)の厚みを3ミリから4ミリに厚くすることで反発性能を抑制。打球の初速は約3.6%減少し、飛距離も5、6メートルほど低下するといわれる。重さは900グラム以上で変わらない。

 今大会は出場32校が1回戦の計16試合で初戦を終えた。記念大会により36校が出場した前回大会は1、2回戦の計20試合で全チームが出そろった。試合数や対戦カードが異なるため単純比較はできないものの、本塁打2本、三塁打5本はいずれも同数。二塁打は今年が35本、昨年が30本で、1試合平均では今年の方が多い計算になる。

 安打数は今年が239本(1試合平均14.9本)、昨年が282本(同平均14.1本)。1試合平均得点も今年が6.4点、昨年が5.0点と増えた。盗塁数、犠打数は昨年より大きく伸びており、各校が1点を巡って小技、機動力を生かした攻撃を展開していることがうかがえる。

 新基準バットについて八戸学院光星の仲井監督は「芯で捉えれば飛んでいく」、1回戦で大飛球を放った青森山田の主砲原田も「芯に当たれば飛距離は変わらない」と強調。新基準バットへの移行を見据え、冬場のウエートトレーニングに重点を置いた学校もあり、長打数が維持された背景には筋力アップの成果が表れた可能性もある。

 一方、青森山田の對馬、吉川は、操作性の高さや、こすった時の打球の伸びなどを理由に木製バットを使用。吉川はサヨナラ勝ちにつながる三塁打を放ち、球場をどよめかせた。

 長打は減っていないものの、やはり芯を外した打球は詰まる場面が多く、八学光星の主将で中堅手の砂子田は「打者によって以前より2、3歩前で守っていた。『カキーン』と音が鳴っても、想像より打球が飛んでこないことがあった」と言う。青森山田の三塁手・菊池伊も「ボテボテの打球が多い。内野安打を与えないよう1歩目の早さを意識している」と変化を語る。

 新基準バットの導入は、より芯で捉えるための打撃技術に加え、さまざまな打球を処理するための守備技術の向上にも一役買いそうだ。

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