相手が知りたいと思うことをしっかり拾って伝えたいことを伝えているか

前回と前々回は、ECサイトで重要な写真と商品説明について解説しました。今回は、その商品説明を、さらにブラッシュアップして、より売れるようにするテクニックを身に付けることを説明します。

売れる文章の前に、見つけてもらえるワードを選定しているか

どんなに素晴らしい商品説明文が書けても、海外の人が検索で使うであろうワードが使われていなかったら、見つけてもらえないので売り上げは立ちません。

例えば、野球場の管理人が、外国からバックスクリーン用の電球を取り寄せようとネットで検索しようとして、「Light for Backscreen」と打っていたらなかなか見つかりません。なぜなら海外ではバックスクリーンはセンターフィールド・スクリーンと呼ばれているからです。したがって、海外の人が使う可能性の高いワードを使えていないと、いつまでたっても売り手と買い手は出会えません。

では、海外の人が使いそうなワードを探すにはどうしたらいいでしょうか。こうしたキーワード探しには、キーワードツールを使えば簡単に探せます。ネット上には無料のものから有料のものまでさまざまありますが、ここでは無料版で使い勝手の良い、Wordstreamを紹介します。

Wordstream Free Keyword Tool

使い方は簡単です。自分が使おうと思っているワードを入れて「Find my keyword」を押すだけです。私は以前、和菓子について調べていました。「和菓子」は日本語ですから通じないだろうと思い、「Japanese Traditional Sweets」と自己翻訳し、キーワードツールにかけてみました。結果は、「Wagashi」が最も良いと教えてくれました。また、どうしても訳すのなら「Traditional Japanese Desserts」のほうが良いということも教えてくれました。こうして、よかれと思って使ってみた表現が、海外ではあまり使われていないということをこのツールを使うと知ることができます。これで海外の人がよく使うワードを手に入れたら、それを商品タイトルや説明文に使います。

海外の人の感覚で興味関心を引き寄せる表現ができているか

続いて、商品名や商品説明をブラッシュアップし、売り上げを上げるものに変化させます。

実店舗において、数ある商品の中から手に取るか取らないかを決める要因の一つとしては、店員の書いたPOPなどがあります。POPは消費者の興味関心を引くように工夫された言葉遣いやキャッチ―な表現が使われています。

これは、オンラインでも同じです。サイトを訪れても、興味関心を引くキャッチコピーがなければクリックしてもらえません。つまり、詳細な説明も読んでもらえませんし、購入ボタンも押してくれません。

では、興味関心を引く表現とはどういうことでしょうか。国内ECで使用している商品説明文は、日本人相手に説明する文章ですので、日本人が理解できれば良いレベルの文章のはずですし、控えめな方が美徳とされる文化的背景もあり、比較的おとなしいものが多いと思います。

しかし、海外では控えめなアピールはアピールにならないので、もう少し派手な表現に変える必要もあります。

これは、あたかも通信社や新聞社の文章から雑誌社の文章に変えるようなものです。前者は誰が読んでも極端な解釈が生まれないように配慮して書かれますが、後者はセンセーショナルに書き立てて、多くの人が表に出さずにしまっている本能的情感に訴えるような表現が多く、解釈や影響は受け取り手によって変わります。

例えば、グラミー賞やアカデミー賞などのイベントでセレブたちは着飾ってレッドカーペットを歩きますが、その様子を伝える場合でも、

新聞社は 「グラミー賞のファッション、ミュージシャンの「勝負服」をチェック(読売新聞)」
雑誌社は 「『ほぼ裸』と話題に…米歌姫、安全ピンで作られた大胆ドレスに騒然(女子SPA)」

と書いていました。個人的には後者のタイトルのほうが、ついクリックしたくなってしまいます。こういった興味関心を引く大胆な表現も必要になります。

また、以下の写真は私がロサンゼルスで撮ってきた写真ですが、L.A.には道路沿いに交通事故専門の弁護士の看板が目立ちます。この看板では広告主の弁護士が吹き出しでこのように言っています。

「L.A. Legal Heroes!(ロサンゼルスの法曹会のヒーローだ!)」

日本では、自分自身をヒーローだといってのける感覚はなかなか理解できませんが、海外ではこのくらいは割と普通です。日本人相手で考えたら大げさかな? と思うくらいでちょうどよいです。リアルに進出する場合でも「自分こそが、この分野の第一人者だ」と語れる人が成功すると言われます。外国人相手の仕事のときだけは図々しくなりましょう。

さらに、海外の人が求める情報は何かを説明しますと、商品の背景、歴史、売り手の歴史、人となりなどの情報です。このあたりは日本人相手のときにはあまり書かない部分かもしれません。実際、海外で活躍するバイヤーもこうした部分が海外の人には刺さると話していました。

ところが、この重要な情報をうまく書けていない事業者が多いです。売る側は「このくらい(消費者も)知ってて当たり前だろう」と思ってしまい、書いていない、あるいは書こうともしないからです。そのため、「何が深掘りした情報なのか」が分からないというケースがあります。

そんなときは以下のような自問自答をしてみてください。

「御社の製品、ちょっと高くないですか?」

客に言われたら、ちょっとムカッ腹が立つこの質問。これを面と向かって言われたと仮定してください。当然、価格は妥当であるという根拠を示して説明するはずです。それを列挙してみてください。それこそが深掘り情報ですし、海外の消費者がほしい情報です。もし、第三者の人と話ができる機会があれば、その人に商品の説明をしてみてください。そこで質問が出てくればラッキーです。質問が出てくるということは、裏を返せば上手く説明できていなかったという証拠です。そここそが消費者の知りたい情報なのです。

最後に、もう一つ重要なことがあります。一般的に日本では学校教育の場で読書感想文や、遠足後の感想文など、感想文を書く訓練はしてきましたが、レポートを書く指導はあまり受けてきません(大学に入ってさえも!)。ディベートもすぐ口喧嘩になってしまいます。つまり、日本人は情緒的でロジカル・シンキングが苦手で、目的と手段も履き違えやすく、非合理的な方向に向かって無意味な時間をかけてしまったりしがちです(それ故、クレームは感情的で非常に厄介です)。

商品説明文にもそうした面が現れます。とにかく商品の良さをこれでもかと矢継ぎ早に書き連ねて、ひたすら素晴らしいものであることを主張します。また、消費者も「そこまで言うのなら、きっと良いものなのだろう」と情緒的に判断し購入する人もいます。

しかし、海外の人はもう少しロジカルなので、素晴らしさを訴えられても「素晴らしいことは理解したが、それを手に入れた後の生活や人生がどう変化するのか?」といった結論が見えないと行動に移りません。この部分こそ興味関心を引く部分なのです。この部分を意識した商品説明文を書くように心がけましょう。

寄稿者 横川広幸(よこかわ・ひろゆき)ジェイグラブ㈱取締役

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