会社から転勤や出向の命令は拒否できる?拒否できるのはどんなケース?

転勤や出向命令を拒否できるか?

労働基準法には、転勤や出向の命令に応じないといけないかどうかの規定はありません。そのため、転勤や出向の命令に応じるかどうかは、民事上の問題です。従業員と会社との間で結んでいる労働契約書の内容、就業規則を確認するようにしましょう。

労働契約で勤務地を限定して働くことが記載されていれば、従業員は転勤や出向を断ることができます。しかし、労働契約に勤務地を限定するという記載がなく、就業規則に「転勤がある」ことが記載されている場合は、次に挙げるケースに当てはまらないかぎり、転勤や出向に応じなくてはなりません。

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・業務上、転勤や出向が必要ないケース
・退職を促すなどの不当な理由で転勤や出向を命じるケース
・従業員に特別な事情があるケース
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例に挙げた人の場合、「遠い地方に転勤したくない理由」が特別な事情に当てはまるかどうかが、転勤や出向を断る決め手になります。特別な事情には、「高齢の親の介護が必要」「子どもが病気で入院していて、妻にだけ任せておくことができない」など、家族の生命に関わるようなことが挙げられます。

転勤や出向をしたくない場合の対処法とは?

転勤や出向を命じられないためには、次のような対策を行っておくとよいでしょう。

(1)採用面接時に「転勤や出向はできません」と伝える

会社の採用面接のときに、転勤や出向ができない旨をしっかりと伝えておきましょう。とはいえ、入社した後に自分自身の都合が変わることも十分あり得ます。こうした場合は会社に対してなぜ事情が変わったのか、丁寧な説明を行うようにしましょう。

(2)上司や人事部とのコミュニケーションを大切にする

日頃から、上司や人事部とよりよい関係を築いておくと、転勤や出向が難しい事情を考慮してくれる可能性があります。

(3)特別な事情を詳しく伝える

ただ単に「転勤や出向ができません」というよりも、「高齢の親の介護があります」など、なぜできないのか、詳しく事情を説明したほうが会社を説得できるでしょう。

(4)仕事で成果を出す

所属している部署で成果を上げて、なくてはならない存在になっておけば、転勤や出向を命じられにくくなるでしょう。ただし、頼りになる存在ということで、業績の悪い勤務地への転勤や出向を命じられる可能性も出てきます。

介護などの理由があれば拒否できる可能性も

労働契約書に勤務地を限定して働くことが記載されていれば、従業員は転勤や出向を断ることが可能です。しかし、そうした記載がないうえに、就業規則に「転勤がある」ことが記載されている場合、断ることは難しくなります。

ただし、従業員に「高齢の親の介護が必要」「子どもが病気で入院していて、妻にだけ任せておくことができない」などの特別な理由があるケースは拒否できる可能性もあります。

それでも、必ず転勤や出向をしないですむということではありません。上司や人事との話し合いでも折り合わなかったときは、転職をするという選択肢もあります。

その一方で、転勤や出向は決してデメリットだけではなく、新たな人脈の構築やスキルアップにつながります。転勤や出向を命じられたら、自分や家族の状況を整理のうえ、上司や家族に相談してから判断するとよいでしょう。

出典

厚生労働省 大阪労働局 よくあるご質問(配置転換等)

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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