「日本酒派」に朗報
倉敷には、倉敷にいながら全国各地の銘酒が味わえる飲食店があるんです。そのお店は「和酒楽食 せりべ(わしゅらくしょく せりべ)」。
店主は、大の日本酒好き。日本酒好きが日本酒好きのために厳選した、全国各地の日本酒。
その数、なんと100種以上。日本酒好きにとっては、たまりません。
日本酒は地域ごと、酒蔵ごと、銘柄ごとの個性を味わうのも醍醐味のひとつ。訪れた土地ならではの地酒は、観光の大きな楽しみですよね。
それがひとつのお店で楽しめるんです。しかも、出される料理はどれも日本酒に合うものばかり。
店主との日本酒談義が楽しめるのも魅力です。さらに、せりべでは日本酒初心者にもおすすめのお酒を出してくれます。
日本酒大好きな人から、日本酒をあまり吞まない人まで楽しめるお店、せりべを紹介します。
せりべとは?日本酒にこだわり、日本酒に合う料理・おばんざいを出してくれるするお店
せりべは、日本酒に力を入れている居酒屋です。
ランチ営業もしており、満足度の高いランチメニューが人気。
また、せりべの店主「ベリー」こと須藤 和隆(すどう かずたか)さんは大の日本酒好き。日本酒好きのベリーさんが厳選した、全国各地の日本酒が楽しめます。
そして、夜のメニューでは日本酒に合う料理を出してくれます。
特にカウンター上に並べられる多くの「おばんざい」がおすすめ。おばんざいは、毎日料理の種類が変わるのも楽しみです。
せりべは、倉敷美観地区のすぐ南側で、「白壁通り」沿いにあります。すぐ横には倉敷川が流れ、店内からは倉敷川畔の町並が望める立地。
▼店内はカウンター席がメインです。
気さくな店主とカウンター越しにやり取りできるのも、せりべの魅力。
▼窓際には、4人がけのテーブル席もあります。
▼店内には、きれいに並べられた日本酒の瓶が。
日本酒にこだわったお店だとすぐに分かります。
全国各地から取り寄せた店主おすすめの日本酒
店主のベリーさん自身が、無類の日本酒好きであるせりべ。
せりべでは、全国各地から店主自ら厳選した日本酒を用意しています。
その数は、なんと100種類以上。
銘柄は時季ごとに入れ替わるので、お店に行くごとにいろいろないち銘柄を楽しめます。
たくさんそろった各地の日本酒のなかから、ベリーさんおすすめの銘柄を紹介してもらいました。
▼「木陰の魚(こかげのさかな)」。
倉敷市の西隣・浅口市寄島(よりしま)にある嘉美心酒造(かみこころ しゅぞう)のお酒です。
一口吞んだ瞬間、まるで白ワインかのようなフルーティーな香りが広がります。
もちろん、日本酒なので果汁など一切入っていません。それなのに、マスカットのようなさわやかな香りです。
日本酒が苦手な人でも吞みやすい、おすすめのお酒だと思います。
嘉美心は老舗の酒蔵ですが、新しい試みにも挑戦しているんです。
▼「阿櫻(あざくら) 」特別純米 無濾過生原酒 超旨辛口。
秋田県横手市の阿桜酒造のお酒です。
辛口らしいキレのある吞み口と、豊かな旨味を感じました。豊潤な香りが口内に広がり、鼻から抜けていきます。
▼「桂月(けいげつ) CEL(セル)24」純米大吟醸50。
高知県土佐町の酒蔵・土佐酒造のお酒です。
高知県工業技術センターで開発された酵母「CEL24」を使っています。甘くフルーティーな香りが特徴で、通から初心者まで楽しめる味わいです。
▼CEL24を使っていない「桂月」超辛口 特別純米酒60と吞み比べてみましたが、その風味の違いがすぐわかりました。
CEL24を使っている純米大吟醸60は、爽やかな香りが特徴的です。いっぽう、CCEL24を使っていない特別純米酒60は、キリリとした味わいでした。
▼「No.6 (ナンバー・シックス)」Xタイプ。
秋田県秋田市の老舗酒蔵・新政酒造(あらまさ しゅぞう)のお酒です。
おしゃれなデザインと横文字の名前で、一見すると日本酒に思えないおしゃれなお酒。
XタイプのXは、Excellence(エクセレンス)を意味しています。
人気のある銘柄で、ファンが多いお酒です。
スッキリとした吞み口で、上品な香りが感じられました。そのため女性ファンも多いそうです。
▼「郷内 (ごうない)」純米吟醸。
地元・倉敷市児島の郷内地区にある老舗酒蔵・熊屋酒造(くまや しゅぞう)のお酒です。熊屋酒造は「伊七 (いしち)」という銘柄で知られています。
この郷内という銘柄は、酒蔵のある郷内地区で育った朝日米を原料としたお酒です。郷内という地名を銘柄にしているのは、そのため。
地元でとれた地元を代表するお米を地元の酒蔵が使っているという、地元愛にあふれたお酒です。
サッパリとした口あたりで、吞みやすい印象。そして、ほのかに甘い香りが感じられました。
ほかにも多くの銘柄がそろっています。
日本酒通には通向けの、あまり日本酒を吞まない人には初心者向けおすすめの、お酒をセレクトしてもらえます。
ベリーさんとの日本酒談義も、せりべのおすすめポイントです。
また、いろいろなお酒を呑み比べると、それぞれのお酒の個性がより分かりやすく楽しめると思いました。ぜひ、吞み比べてみてはいかがでしょうか。
なお、ここで紹介したお酒は、いつもあるわけではありません。
▼ほかにも焼酎やビール、ソフトドリンクなどがあります。
価格は消費税込。2024年(令和6年)3月時点のもの
各日本酒の価格については、店主・ベリーさんにお聞きください。
せりべの夜のメニュー
▼せりべの夜のメニューは、以下のとおりです。
価格は消費税込。2024年(令和6年)3月時点のもの
夜のメニューから、ベリーさんのおすすめを紹介します。
カウンター上に並べられる豊富な「おばんざい」の数々
▼一番のおすすめは「おばんざい」です。
夜の営業になると、カウンター上にさまざまなおばんざいが並べられます。
おばんざいの種類は、日替わり。
このなかから食べたい料理を選べます。
▼とある日のおばんざいの一例「キムチチヂミ」。
おばんざいは、どれも価格は390〜600円(税込)。
家庭的な料理で、日本酒に合うものばかりです。
「ベリー特製ポテトサラダ」は店主特製・家庭の味
▼「ベリー特製ポテトサラダ」は、人気があるメニューです。
お昼の「せりべ御膳」にも付いているのですが、夜のメニューではもう少しボリュームがあります。
「ベリー」とは店主・須藤さんの愛称。
もともと、このポテトサラダはベリーさんの家庭料理でした。しかし以前の職場で、プライベートのときに同僚にふるまったところ、大好評。
そして、独立してからせりべのメニューにラインナップしました。
「珍味五種盛り」は日本酒のアテにぴったり
▼ベリーさんが、特におすすめしているのが「珍味五種盛り」です。
ベリーさん自身が、日本酒のアテとして合う珍味を5種類選んで盛り付けます。
どれも酒が進むものばかり。なお、珍味の種類は日によって変わります。
取材時の珍味は、以下のとおり。
- ホタテの焙煎ゴマ和え
- マイカの白味噌柚子コショウ
- ツブ貝と葉ワサビの和え物
- ホタルイカの酢味噌和え
- 子持ちコンブとメカブの和え物
お酒好きには、ベリーさんがセレクトした日本酒とともに、珍味5種盛りも味わってほしいと思います。
鉄板料理で培ったステーキも堪能できる
▼せりべでは、牛肉のステーキもラインナップ。
▼以下の4種類の部位が楽しめます。
- サーロイン
- ひれ
- いちぼ
- ひうち
実は、以前に鉄板料理の店で働いていたというベリーさん。
その経験を生かしたステーキは魅力的です。
せりべのランチメニュー
▼せりべのランチメニューは、以下のとおり。
価格は消費税込。2024年(令和6年)3月時点のもの
昼のメニューのなかから、店主・ベリーさんのおすすめメニューを紹介します。
「せりべ御膳」は分厚い刺身・豊富な天ぷらなど盛りだくさんの内容
▼ベリーさんがおすすめするランチメニューは「せりべ御膳」。
お店の名前を冠している看板メニューです。
せりべ御膳の内容は、以下のとおり。
- ごはん
- 味噌汁
- 刺身(タイ・カンパチ・サーモン)
- 天ぷら(エビ2本・シシトウ・ナス・サツマイモ・ナンキン)
- ベリー特製ポテトサラダ
- サラダ
- 小鉢(日替わり)
- 漬物(梅干し)
- デザート(日替わり)
品数豊富で盛りだくさんです!
▼せりべ御膳の、一番の注目は刺身です。
▼刺身のこの厚み。食べ応え十分です
▼そして、揚げたての天ぷらにも注目です。
天ぷらは、抹茶塩がついています。
軽く抹茶塩を付けて食べるのがおすすめです。
▼天ぷらの内容は、以下のとおり。
- エビ 2本
- シシトウ
- ナンキン
- サツマイモ
- ナス
バラエティに富んでいるのが、うれしいです。
▼ベリー特製ポテトサラダは、夜でも人気の一品。
量は夜の単品メニューよりも控えめとなります。
▼野菜たっぷりのサラダ。
▼小鉢は日替わりです。
取材日は、ナスの煮浸しでした。
▼大きな梅干しは、適度な酸味に甘味も。
▼お米は地元・倉敷産のものです。
▼デザートは日替わりとなります。取材日のデザートは、紅茶のプリンでした。
これだけ豊富な品数のせりべ御膳。
食べ終わったら、満腹・満足でした。
「天丼」はエビ天5本にかき揚げも!
さらに、お昼のメニューでは「天丼」も人気メニューとのこと。
▼天丼はボリューム感があります。
天丼に乗る天ぷらは、エビ天5本にくわえ、なんとかき揚げまで!
これに味噌汁・漬物・デザートまで付いてくるので、お得ではないでしょうか。
こだわりの日本酒と多くの料理が魅力的な和酒楽食 せりべ。
せりべの店主・ベリーこと須藤 和隆(すどう かずたか)さんに話をききました。
せりべの店主・ベリーこと須藤 和隆さんにインタビュー
和酒楽食 せりべの店主・須藤 和隆(すどう かずたか)さん、通称「ベリー」さんに、開業のエピソードやお店への思いなどを聞きました。
インタビューは2019年9月の初回取材時におこなった内容を掲載しています。
開業に至った経緯
──開業に至った経緯について教えてください。
ベリー──
実は、私はIT業界という料理とはまったく無縁の仕事をしていたんですよ。
学校を卒業後、工場勤務を経てシステムエンジニア(SE)になりました。
SEとして2社ほど働いたんですが、1社目で働いていたときに東京に転勤になったんです。
東京時代、電車通勤ですからよく上司や同僚に誘われていろいろな飲食店に行きました。
そして、飲食店で働く人たちをみたり、料理を食べたりしているうちに、なんとなく将来は自分で飲食店をやりたいなぁと。
もともと料理が好きだったので、家でよく料理をしていたのもあります。
やがて、40歳になったのを機に、本当に将来飲食店をやろうと決意しました。
そして修行のために、料理の世界へ転職をしたんです。
──まったく未経験の業界への転職は、たいへんではなかったですか?
ベリー──
さいわい、人脈にめぐまれまして。
最初に面接を受けたお店では、採用はされなかったのですが、オーナーに大変気に入ってもらえました。
だから、オーナーの知人であるホテルの総料理長を紹介され、そこでアルバイトとして料理の仕事をさせてもらえることになったんです。
その後、総料理長の紹介で、倉敷の和食料理店で働けるようになりました。
就職の際、将来独立して店を持ちたいことを話すと、働きながらいろいろな技術や知識を教えてもらえたんです。
ただ、そのお店では厨房担当だったので、接客などは学べませんでした。
私は接客もやってみたかったので、料理の技術や知識をある程度学んだあと、接客も学べる環境を探して転職しました。
それが独立前に働いていた会社になります。
倉敷を中心にいろいろなお店を展開している会社です。
鉄板料理の経験を生かして、メニューにステーキを出していますが、鉄板料理の店もその会社での経験なんですよ。
そこで約4年間働きまして、いろいろなお店を経験し、店長もさせてもらえました。
そして、2018年(平成30年)6月に、この和酒楽食 せりべをオープンしたんです。
ただ、開業して約1か月後に「平成30年7月豪雨」が発生しました。
その影響で、オープンしてもかなり長いあいだ客足伸びなかったのが辛かったですね。
2019年(平成31年)の春先くらいから、ようやくお客さんが増えてきました。
店名の由来
──店名の「せりべ」には、どういった意味がありますか?
ベリー──
お店の名前を付けるとき、自分が大切にしているものから名前を取ろうと思いました。
私は、トヨタのスポーツカー「セリカ」が好きなんですよ。
現在も1994年(平成6年)式のセリカに乗っています。
ちなみに、これが2台目のセリカです。
あと、私の趣味はブルーベリー栽培なんですよ。
知人からブルーベリーの苗をいただいたのをきっかけに栽培するようになりました。
今では庭に50鉢以上を栽培。
世界各国のいろいろな品種を育てているんですよ。
そこで、愛車「セリカ」と趣味の「ブルーベリー」から文字を取って「せりべ」になったんです。
──ところで、名刺やメニューなどで愛称の「ベリー」が使われています。もしかして「ベリー」という愛称もブルーベリーから来ているのでしょうか?
ベリー──
そのとおりです!
ブルーベリー栽培って日本ではめずらしいので、インパクトがあるみたいです(笑)。
ちなみに、ブルーベリーは完全な趣味なので、仕事であるせりべのメニューには、あえて使っていません。
ブルーベリーの旬は夏なのですが、家で良いブルーベリーが採れたら、お客さんに「おすそ分け」という形で出すときもありますよ。
あくまで趣味なので「おすそ分け」ですし、常にあるわけではありません。
日本酒はどのように選んでいるのか
──せりべは日本酒にこだわっていて、ベリーさんは日本酒が好きだと聞きました。どのように日本酒の情報を得て、どのように選んでいるのですか?
ベリー──
2通りあります。
ひとつは、酒屋さんとのやり取りです。
酒屋さんからいろいろな情報を得て、そのなかから自分の勘にピンと来たり、自分で吞んでみて良いと思ったものを仕入れています。
もうひとつは、酒蔵から。
ときどき、各地の酒蔵のかたが飛び込みやってくることがあるんですよ。
酒蔵のかたの話を聞いたり、実際に吞ませていただいたりして「これはいいな」と思ったら、お店で出しています。
あと、当店は意外と地酒のラインナップは少なめなんですよ。
というのも、倉敷周辺では地酒を扱っている店はけっこうあるんです。
だから、あえて地酒を少なめにして、全国各地で良いなと思うものを集めているんですよ。
地酒をメインに扱っているお店の人が、いろいろな土地の酒を吞みたくて当店に来ることもあるんです。
なお、お酒はいつも同じ銘柄を扱っているのではなくて、時季によって銘柄は変わりますよ。
たくさんありますので、わからないときは気兼ねなく私に相談してください!
お店のコンセプト・今後の展望
──今後の展望などがありましたら、教えてください。
ベリー──
展望……はありませんね(笑)。
というのも、自分の飲食店を持つことが目標だったわけですが、その目標を今叶えてしまいました。
だから強いていうなら、このせりべというお店を今のままずっと続けていくことが、今後の目標といえるでしょうか。
私は、せりべを大きくして人を雇ったりとか、支店を出したりとかするつもりはないんです。
自分の好きな料理をつくり、好きなお酒・好きな料理をお客さんに出して、お客さんがそれを楽しみ、私とお客さんが楽しい時間を過ごすという、今のせりべのお店がすごく好きなんです。
だから、これからも変わらずにお店を運営していきたいですね。
おわりに
取材をして、せりべの店主・ベリーさんは本当に日本酒や料理が好きなんだなというのが、ひしひしと伝わってきました。
ベリーさんの人柄も、店の魅力のひとつ。
せりべは、お店に付けられた「和酒楽食」のとおり、ベリーさんとお客さんがお酒を通して語り合い、料理を通して楽しい時間を共有するお店だと思います。
ぜひベリーさんがセレクトした銘酒、そしてお酒に合う料理の数々を楽しんでみてください。
あまり日本酒を吞まない人も、ベリーさんが初心者向けに吞みやすいお酒を選んでくれますよ。
鉄板料理の経験を生かした牛肉のステーキ、お昼のランチメニューなどもおすすめです!