世界の携帯電話契約サービス数・スマートフォン出荷台数調査を実施(2023年)~2023年のスマートフォン世界出荷台数は前年比7.0%減の12億2,629万台の見込、インド市場では今後スマートフォンの普及期に入る一方、中国市場は5Gサービス構築の恩恵があるものの需要は頭打ち~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、日本を含む世界主要34市場(33カ国1地域)の携帯電話サービス契約数やスマートフォンやフィーチャーフォンの市場を調査し、通信事業者別契約数や各種の出荷台数を予測し、メーカーシェアなどを明らかにした。 ここでは、世界の携帯電話サービス累計契約数、5Gサービス累計契約数、スマートフォン出荷台数、5Gスマートフォン出荷台数の予測について公表する。

1.市場概況

2022年の世界の携帯電話サービス累計契約数は約84億4,503万契約だった。2023年は約85億5,176万契約の見込みである。2030年には90億9,945万契約を予測する。

世界の携帯電話サービス契約数はASEAN、アフリカや中南米市場は依然として増加しており、世界市場全体を牽引しつつある。また、5G(第五世代移動体通信サービス)の導入も緩やかに進んでいる。これまでは一部の設備について4G(第四世代移動体通信サービス)向けのシステムを転用するNSA(ノンスタンドアローン)が主流であったが、2024年以降は専用設備で構築するSA(スタンドアローン)※1網での構築が進む見通しで、5Gの持つ能力を生かしたネットワークスライシング※2サービスが相次いで登場する見通しである。

2022年の世界のスマートフォン出荷台数は13億1,802万台だった。2023年は12億2,629万台を見込む。

世界の携帯電話端末市場はインド市場がスマートフォンの普及期に入り、市場が拡大すると共に、ASEAN、アフリカ市場は携帯電話サービス契約数の伸びに支えられ順調に拡大している。これまで市場を牽引してきた中国は世界で最も5Gサービスの普及が進んでいるものの、契約数飽和や経済の伸び悩みにより出荷台数は減少傾向が続く。一方で中国国内では国内メーカーの人気が高まっており、海外メーカーは苦戦を強いられている。

※1. SA(スタンドアローン)サービスとは4Gの設備を転用したNSA(ノンスタンドアローン)とは異なり、5G専用の設備(基地局、コアネットワーク)を構築して運用するサービスで、5Gの特徴である「高速大容量通信」「高信頼低遅延」「多数同時接続通信」に対応できる点がメリットである。
※2. ネットワークスライシングとは、ネットワークを仮想的に分割する技術で、帯域中のある部分は高速大容量に適した形で用い、別の部分は高信頼・低遅延に向いた形にするなどネットワーク上でやり取りするデータの条件に合わせて最適化して運用することを可能にする。

2.注目トピック~衛星通信サービスの導入

Beyond5G、6Gサービスの商用化に付随した動きとして、衛星通信サービスへの関心が高まっている。既に米国、中国をはじめとする市場では商用サービスが導入され、日本市場においても導入が始まっている。衛星通信サービスは海上、航空に加え、基地局がカバー出来ない遠隔地や山岳地などで通信サービスが利用でき、現存する2G(GSM網;Global System for Mobile communications)の代替や災害対策としての用途を兼ね備えていることから、注目されている。

3.将来展望

5G商用サービスが開始されて約5年が経過したが、米国、中国以外の市場ではNSA(ノンスタンドアローン)中心の構築で真の5Gサービスとは言えない状況が続いてきた。新型コロナウイルス感染症による社会・経済活動への影響、半導体不足などの要因が加わったとは言え、設備投資負担が大きく、ミリ波やsub6帯といった高周波数帯の運用が難しいといった5Gサービス特有の問題が通信事業者の設備投資意欲を減退させたことも事実である。一方で、通信事業者各社は3Gサービスを終了させ、SA(スタンドアローン)による5Gサービス網構築を進めており、2024年以降はこの動きが本格化する見通しである。また2025年から2026年に掛けて5.5世代にあたる5G-Advancedの導入が本格化する。更にBeyond5G、6Gサービス導入を視野に衛星通信をはじめとする新しいシステムを導入する動きが活発化することが見込まれ、IoT分野や自動車向けコネクテッドサービス分野、XR(VR/AR/MR)分野での活用等が期待される。

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