株式会社キャステムのSNS担当者に聞く ~ SNS発信で何が変わった?

漫画・アニメのマスクや、有名人本人を3Dスキャンして作ったオリジナルグッズ、おいしそうな食堂のメニューやイチゴなど…。
株式会社キャステム(以下、キャステム)は、X(旧Twitter)やYouTubeなどのSNSで、次々と会社の魅力を発信しています。

そこで、キャステムの魅力を一番よく知っているSNS運用チームのみなさんを訪ね、日頃どのようなことを意識しながら情報発信をしているのか、SNSの発信で何が変わったのか、などを聞いてきました。

キャステムには「広報部」がない?

今回集まっていただいたのは4人の社員さんです。

左から神原さん、藤田さん、池田さん、石田さん
  • グループ戦略本部 営業企画室 神原翔(かんばら かける)さんは、YouTube担当。
  • グループ戦略本部 営業企画室 藤田悠希(ふじた ゆき)さんは、公式X(旧Twitter)担当。
  • グループ戦略本部 営業企画室 上席主任 石田和之(いしだ かずゆき)さんは、公式Xの前担当。
  • 新規事業本部 IRON FACTORY(アイアンファクトリー) 上席課長 池田真一(いけだ しんいち)さんは、Xの「IRON FACTORY IKEDA」 のアカウントを運用。

アイアンファクトリーとは?

株式会社キャステムの中にある新規事業本部。
オリジナル商品やコラボレーショングッズなど、今までなかったものを開発している。

──みなさんの肩書を見て気づいたのですが、キャステムには「広報部」がないのですか?

石田(敬称略)──

ええ。弊社に「広報部」はありません。私たちは普段、別の仕事をしながらSNSの発信も担当しています。
現在、キャステム公式Xは1.3万人、池田のアカウントは2.2万人のフォロワー様に見ていただいています。

藤田(敬称略)──

弊社には、多くのSNSアカウントがあります。1人の担当者が社内の動きのすべてを把握することは難しいのですが、このようにアカウントを分けているので、現場にいる社員が旬の情報をいち早く発信できるのです。

こちらにそれぞれリンクしていますので、ぜひ、興味のあるところの情報を見ていただきたいです。

──これほど多くアカウントがあるとは知りませんでした!さっそく拝見します。

SNS発信で目指すこと

──誤解を承知で分類すると、キャステムでは「おもしろ製品」と「真面目製品」の両方を作っていますよね。SNSでは「おもしろ製品」の情報が多いと感じますが、実際の製品の割合はどれくらいになるのですか?

池田(敬称略)──

「おもしろ製品」は全体の2%くらいですね。圧倒的に、「真面目製品」のほうが多い。

──2%!そうなのですね。インパクトが大きいので、かなり多いのかと思っていました。

藤田──

お客様に納める製品は、公開できないものが多いのです。ですから、公開しやすい自社製品に関する情報発信が多くなってしまいますね。

石田──

フォロワー様におもしろがってもらえるもの、パッと見てなんだかわかるもの、という視点で発信する情報を探すと、やはりアイアンファクトリーが作っているものは紹介しやすいんです。

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──どうやって日々の投稿ネタを見つけているのですか?

藤田──

定期的に工場を回りますね。アイアンファクトリーの製品を作っている途中の動画を撮ったり、社員食堂のメニューを紹介したり。
SNSで一般の人が見てもわかりやすいもの、そのとき自分がおもしろいと思ったものを、投稿するようにしています。

池田──

私は、そのとき話題になっているニュースを意識しています。たとえば、ブロッコリーが「指定野菜」に追加されたニュースに合わせて、「メタルブロッコリー」を紹介するとか。
新しいカープグッズがお披露目されて話題になったタイミングで、弊社の新しいカープ商品の写真や動画をアップしたときには、1.2万いいね、123万インプレッションを達成しました。

休みの日も正月も関係なく、毎日の投稿を3〜4年続けています。
ネタを探すのも大変ですが、スマートフォンの中にある写真を使いまわしながら、文章を変えて投稿していますよ。

──メタルバナナは今、大人気だそうですね。

池田──

あれもSNSから台湾のメディアに取り上げられて、台湾でいろいろな記事になったんです。注文がどんどん入って生産が追いつかないので、フィリピンの工場でも今、バナナを作っています。

写真提供:株式会社キャステム

──本当の「フィリピンバナナ」ですね(笑)。つまり、SNSの目的は商品の直接の売上アップでしょうか?

池田──

うちの部署は、そうです。売上と部署の認知を上げることが主です。

石田──

キャステム公式としては、本社自体の認知を目指しています。取り上げやすいのはアイアンファクトリーの商品になりますが、ネタとしておもしろいものだけではなく、キャステムとしての取り組みを発信していこうと思っています。お客様が見学に来られましたとか、こんな取り組みを始めましたとか、設備を導入しましたとか。

今のキャステムにはいろいろな事業がありますので、キャステムの活動を知ってもらうことや、キャステムに興味を持ってもらうことを目指して発信しています。

写真提供:株式会社キャステム

SNS発信で変わったこと

──私自身は、いつもワクワクしてキャステムのSNSを見ているのですが、実際フォロワーさんにどのような影響があると感じていますか?たとえば、入社希望者数の変化などありますか?

神原(敬称略)──

学生のエントリーは増えていますね。ただ、アイアンファクトリーの「おもしろ製品」よりも、普通の製品のほうが圧倒的に多いので、期待と違う、と思われてしまうことはありますけれど。

それでも、キャステムという会社の認知度は、SNSを通して上がっているようです。

石田──

2024年現在、エントリーしている学生は800人だそうです。僕が入社した15年前(2009年)は、10人か20人くらいでした。

神原──

僕は入社して4年ですが、そのときの応募者は200人くらいだったので、この4年で4倍になったわけですね。

──800人!その中から、何人が採用されるのですか?

神原──

20人前後でしょうか。

──狭き門ですね!では、そういったSNSでの反響は「真面目製品」の受注にもつながっているのでしょうか?

神原──

はい。SNSやメディアを通じて全国に知っていただいたことで、お取引につながっています。

私たちは各地で開催される「展示会」にも行くのですが、そのときに「見たことある」と足を止める人が増えました。そこで、弊社はこういうことをしている会社ですがなにかお困りごとがありますか、というお話をして実際のお取引につながることが珍しくなくなってきています。

──なるほど。SNSが「見たことある」を増やしているのですね。ところで、SNS発信で気をつけていることがあれば教えてください。

藤田──

そのときのトレンドを意識しています。どんなハッシュタグが使われているかとか、他の企業さんはそれにどう乗っかっているかをチェックして、真似することもありますね。

神原──

YouTubeも同じような戦略です。トレンドを追いかけるようにしています。

池田──

1万フォロワーに達するまでは、すべてのコメントに返事をしていました。今はさすがにしんどくなったので、自分が返したいときに返しています。

藤田──

公式Xは、今、精力的にコメントを返しています。
インプレッションが多い他の企業さんのポスト(旧ツイート)にコメントすると、こちらのコメントを見てくれる人も増えるんです。ですから、フォロワーの多い有名な企業さんと仲良くなって、キャステムのことを知っている人を増やす努力をしています。

最近では大手の企業さんが、企業さん同士で訪問し合ったりバーベキューをしたりといった投稿をされているのを、いいなあと思って見ているんです。いつか企業さんを社員食堂に招待して交流会をして、キャステムの認知をより広げたいですね。

──社員食堂で交流会!それは企業さんも喜ばれそうですね。

神原──

社員食堂のようすをSNSで見て「一度キャステムの社員食堂のメニューを食べてみたい」と、おっしゃる人も多いです。来社して食事をしながら営業担当者と見積もりをしたり、ということもあるんですよ。

──社員のための食堂が、営業拠点にもなるのですね。興味深いです。

石田──

2025年にキャステムは55周年を迎えます。この機会に大きく変わっていく部分が出てきますので、キャステムの今後に注目してもらいたいと思っています。

──どんどん大きくなるキャステムの取り組みの発信が楽しみです!

次々に魅力的な商品を開発できるのはなぜ?

──アニメとのコラボレーション商品や有名人の顔のステッカーなど、次々と魅力的な商品を作っていますが、その企画力の秘密を教えてもらえますか?

池田──

カープですね

──カープ?

池田──

2017年からアイアンファクトリーでいろいろなモノを作っているのですが、最初に売れた商品が、カープグッズでした。選手の手形を貯金箱にしたりとか、ヘルメットを自転車のベルにしたりとか。
そのときは、まだアイアンファクトリーも無名で、カープに商品の企画を持っていっていたんですね。今でもそうですが、カープグッズというのは、一風変わった商品が多いんです。どこにもない商品を最初に出したい、と強く思っておられるカープに、企画力を鍛えられました。

カープグッズで話題になってからはいろいろな球団さんに広がりましたし、2018年には「キン肉マン」のグッズで多くの人に知られるようになりました
そこから「ポケットモンスター」や「鋼の錬金術師FA」と、事例が増えるたびにどんどん広がっていくという感じですね。

「鋼の錬金術師FA」アルの鎧は、2024年2月現在福山駅の新幹線口に展示中

──キン肉マングッズは、使用許可を取るのが大変だったのではないですか?

池田──

直接、作者である「ゆでたまごの嶋田先生」に連絡して許可を取りました。

──えっ?

池田──

家でSNSを見ていたら、あるTシャツ屋さんがキン肉マンのTシャツを作りたくて作者に直談判した、OKが出て商品化できた、というニュースが目に留まったんです。それで私も「うちはこういう会社で、カープグッズを作っていて、キン肉マンの商品も金属で作りたい」とメッセージを送りました。
そうしたら、「おもしろいからマネージャーとやり取りしてください」ってメッセージと電話番号が送られてきたんです。

今もその流れで、芸人さんやサッカー選手にInstagramのDMで連絡して、じゃあグッズ作りましょう、と決まっていきます。今のSNS時代ならではですね

──SNSは情報の発信だけではなく、企画にも力を発揮しているのですね!

池田──

そうですね。キャステムのブランディングになっています。
アイアンファクトリーの商品は、かなり高額なものもありますが、井上尚弥(いのうえ なおや)さんの手型は1つ100万円でも売れるんです。
自分たちの製品にいかに付加価値をつけるか、というのは非常に大切だと思っています。

藤田──

ロビンマスクを製作する動画を投稿したときには、「やっぱり職人さんはすごい!」と大きな反響がありました。高い技術を持った社員の存在が次のお取引にも求人にもつながりますし、本人にとってもやりがいになります。反響がわかるのが、SNS発信のおもしろいところですね。

モノづくりのおもしろさをどんどん発信!

SNSでの発信がきっかけとなって商品が売れるだけではなく、商品開発にも求人にもつながり、新たな取引を呼んでいるようすを聞けました。

「これからも、モノづくりのおもしろさを発信していきますので、ぜひ、フォローやチャンネル登録をお願いします!」と石田さん。

2025年に55周年を迎えてますます発展していくキャステムに、これからも注目していきます!

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