メルセデス・ベンツ「E200アバンギャルド」に見るメーカーのプライド

昨年フルモデルチェンジをしたメルセデス・ベンツ「Eクラス」。伝統的なミドルサイズセダンとあって「今回はどんな感じなのか?」と気になるファンは多いだろう。新型もこれまでと同じくセダンとステーションワゴンという2種類のボディタイプが選べる。今回試乗したのは「E200」で、2.0リッター、直列4気筒ターボのガソリンエンジンだ。

現在のところ、セダンのパワートレインは3車種。ガソリンモデルのE200と「E300」、ディーゼルモデルの「E200d」はともに2.0リッター、直列4気筒ターボにマイルドハイブリッドシステム(MHEV)を搭載。トップモデルの「E350e」は2.0リッター、直列4気筒ターボのガソリンエンジンに129psを発生するモーターを組み合わせたプラグインハイブリッド(PHEV)という展開だ。

7年ぶりに登場した新型は、見た目はセダンのお手本のような仕上がり。フロントマスクは黒い開口部風(近年は空気抵抗を考え、開いているようで開いていないものが多い)のパートが増えているものの、全体的なシルエットは先代を踏襲している。サイズも“微増”程度の変更にとどまり、新型に乗り換えても不都合は生じないはずだ。

室内の仕上がりは、外観の変化よりもアピールが強い。ダッシュパネルやドアインナー、センターコンソールを縁取るイルミネーションが賑々しい。夜間にはデジタルコンソールと相まって、さらなる華やかさを演出する。もちろんイルミネーションの色や輝度は調節でき、乗員が「フルデジタルの最新モデルに乗っている」と強く感じられる。

一方、往年のファンは「4気筒しかないの?」という点が気にかかるのではないだろうか。メルセデスといえば、直列6気筒が主役という考えが根強くあるものの、先代のEクラスも4気筒が幅を利かせていたことを考えれば、ダウンサイジング後の主役は2.0リッター、ターボ+MHEVに置き換わっていると考えて間違いない。もちろん今後、直列6気筒モデルもラインアップに追加される見通しだ。

「ハイ、メルセデス」と呼びかけてMBUX(インフォテインメントシステム)を起動させ、「シートヒーター入れて」と頼んでから、右ウインカーレバーの位置にあるシフトを操作して走り出す。排気音がかすかにするのでエンジンはかかっているはずだが、振動はほとんど感じられない。BEV(電気自動車)のように静かに走り出し、淀みなく加速していった。

これはおそらくエンジンのみならず、205Nmものトルクを誇るモーターが良い仕事をしているおかげだろう。MHEV搭載モデルを名乗っていても、実際はほとんど仕事をしていない場合もあるのだが、メルセデスのMHEVは確実に動力性能の向上に効果を発揮している。それらの相乗効果によって、ブランドが誇る「ドイツ的いいモノ感」が、ゆったりと動いていくフィーリングの部分にしっかりと反映されていた。

乗り心地もまるでフェルトの上を走っているかのようにスムーズだった。街中でADAS(先進運転支援システム)を作動させれば、ステアリングを巧みに操り、半自動運転を実現してくれる。先代の仕上がりも相当なものだったので、はっきりと進化していることを言い当てるのは難しいが、新型が全方位的に厚みを増していることは確実に感じられた。

ちなみにメルセデスはつい先頃、以前から掲げていた「2030年までに完全なEV化を果たす」という目標を撤回し、新エンジンを開発していることを公表した。世の中の情勢はまだ「多様化を望んでいる」と判断したようだ。とはいえ、今回のE200に搭載されているMHEVの効果に代表されるように、“電動化”は自動車の進歩に確実につながっている。次の一台としてチョイスするのは、現代における最適解のひとつだと思う。

メルセデス・ベンツ E200 アバンギャルド 車両本体価格: 894万円(税込)

Text : Takuo Yoshida

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