『ブギウギ』みのすけの思いが込められた大きな拍手 スズ子×鮫島のらしさ溢れた引退会見

『ブギウギ』(NHK総合)第124話では、スズ子(趣里)が引退会見当日を迎えた。羽鳥(草彅剛)と話しができないまま、会見の日を迎えたスズ子だったが、多くの記者の前ではっきりと引退を口にする。

記者の中には、スズ子やりつ子(菊地凛子)をねちっこく問い詰めてきた芸能記者・鮫島(みのすけ)の姿もあった。鮫島は引退会見当日も鮫島らしい。挙手もせず「最近は福来スズ子の人気も落ちてきていた。そこに水城アユミ(吉柳咲良)なんて若手も出てきて、もう勝てないなんて思いはなかったんですか?」と勝手に発言する。スズ子の言葉を聞いている時のジトっとした目つきや揚げ足を取るような発言は相変わらず憎たらしい。

「水城アユミから逃げるってことなんじゃないですか?」という問いかけに、スズ子が「そう見られてもしゃあないです」と答えれば、鮫島は「負けを認めますと」と自分の解釈でスズ子の言葉を書き留めた。

しかしスズ子の言葉に耳を傾ける鮫島の表情にはどこか寂しさも感じられた。実際、スズ子が羽鳥への感謝の思いを語ると、鮫島はこれまでになく素直に納得した様子を見せ、「なるほどね。よっく分かりました」とうなずく。そしてふと立ち上がると、「でも、な~んか……」とやや口ごもったあと、「寂しくなるな」と口にした。仮にスズ子が引退せず、歌手としての活動を続けていれば、鮫島はこれまでと変わらず執拗にスズ子を追いかけ回すことだろう。それゆえスズ子の引退会見での鮫島の言動によって、これまでの憎たらしさがなくなることは決してない。だが、鮫島がスズ子を追っかけ回すことにやりがいを感じていたのであれば、「寂しくなるな」という言葉は本物だ。

最後まで食えない感じを醸し出していた鮫島だが、番組公式X(旧Twitter)が明かしたみのすけの言葉が印象に残る。

「鮫島は最後まで嫌なやつで、ある意味信念を貫く記者だった。実は一番の福来スズ子のファンだったんじゃないかと思う」

●スズ子(趣里)に尊敬の念を込めて大きな拍手を送った鮫島(みのすけ)

鮫島が一番スズ子のファンだったかもしれない、そう感じたのは引退会見終盤での出来事だ。「一曲聴かせてほしいな」という鮫島に、スズ子は明るく笑いながら、「そら、あきまへん。ワテ、一曲では止まらへんようになってしまいますわ」と言う。

そんなスズ子に鮫島が意地の悪さを見せつけるかと思いきや、鮫島はしてやられたという風な顔でニヤリと笑っていた。最後までスズ子らしく語り、けれど引退への揺らがぬ意志を見せたスズ子に感銘を受けた、そんな風にも見えた。会見の終わり、鮫島はトレードマークともいえる帽子を脱ぎ、スズ子に大きな拍手を送る。スズ子への尊敬の念が感じられた。

第124話では、引退後、大切な家族に感謝を伝えるスズ子の姿や、尊敬できる後輩・秋山(伊原六花)や水城アユミからの言葉にほっと一息つくスズ子の姿が映し出された。残るは羽鳥との対話だ。「先生がいなかったら今の自分はなかった」というスズ子の言葉を知った羽鳥は何を思ったのだろうか。
(文=片山香帆)

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