大企業の退職金は「2000万円」!? それだけあれば老後は安泰? 中小企業との相場も比較

大企業と中小企業では退職金額に1000万円の差!

厚生労働省「令和3年賃金事情等総合調査」によると、大企業(従業員1000人以上かつ資本金5億円以上)におけるモデル退職金(学校を卒業してすぐ入社した人が標準的な能力と成績で勤務した場合の退職金水準)は、大学卒の事務・技術職の場合、調査産業計では約2564万円、製造業では約2342万円となっており、2000万円を超えています。

一方、東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」によると、中小企業(従業員300人未満)におけるモデル退職金は大学卒で約1092万円となっており、大企業との間に約1000万円もの差があることがわかります。

大企業では、退職金制度も充実している場合が多いです。退職時に一括で支払われる退職一時金のほか、確定給付企業年金制度(DB)や企業型確定拠出年金制度(DC)などにより年金として受け取ったり資産運用をしたりすることができることもあります。中小企業では退職一時金のみであることが多く、あるいは退職金そのものがない企業の割合も増えます。

2000万円あっても老後は厳しい?

では、大企業で働き2000万円の退職金があれば老後は安泰と言えるのでしょうか?

少し前に「老後2000万円問題」が話題になったことがあります。これは、金融庁が2019年に発表した報告書の中で、高齢者夫婦無職世帯の平均的な実収入が20万9198円に対し、実支出が26万3718円となっており、毎月5万4520円の赤字が生じるため、個人が保有する金融資産から補填することが必要と提言したことを端緒に巻き起こった議論です。

老後を30年として試算すると、5万4520円×12ヶ月×30年=約1963万円となり、老後に備えて2000万円の準備が必要だと言われました。

2000万円の退職金を受け取れれば、老後2000万円問題も解決できそうに思われます。しかし、老後の支出は個人の状況によって異なります。家が持ち家か賃貸かによって住居費は変わりますし、住宅ローンが残っている場合もあります。

医療介護の費用が思った以上にかかることもあるでしょう。趣味やレジャーの費用も人によって必要な額は異なります。これらが人よりも多くかかってしまうという場合であれば、2000万円超の退職金が入ったとしても老後が安泰と言い切るのは難しいかもしれません。

退職金がない大企業もある!?

大企業だからといって、必ず退職金があるわけではありません。厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」によると、退職金制度がない会社は全体の24.8%でしたが、大企業の中でも8.8%の会社で退職金制度がないという結果でした。大企業で退職金がないのは外資系に多く、企業型確定拠出年金制度のみで退職一時金がないという場合もあるようです。

退職金制度は会社が独自で定めるもので、なくても違法ではありません。ただし退職金制度がある場合は、就業規則に明記するよう労働基準法で定められているので、自分の会社の制度がどうなっているか、一度確認しておくとよいでしょう。

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