『ゴッドランド/GODLAND』本編映像公開 乙一、小島秀夫、本木雅弘ら著名人コメントも

3月30日に公開される北欧映画『ゴッドランド/GODLAND』の本編映像が公開された。

第96回アカデミー賞国際長編映画賞のアイスランド代表に選出された本作は、未知なる異国への旅路と大自然との対峙、異文化の衝突を描く北欧発の人間ドラマ。日本ではトーキョーノーザンライツフェスティバルで紹介された『ウィンター・ブラザーズ』や『ホワイト、ホワイト・デイ』を手がけたフリーヌル・パルマソンが監督・脚本を務めた。

物語の舞台は、デンマークの統治下に置かれていた19世紀後半のアイスランド。若きデンマーク人の牧師ルーカスが、植民地アイスランドへ布教の旅に出る。任務は、辺境の村に教会を建てること。しかしアイスランドの浜辺から馬に乗り、陸路ではるか遠い目的地をめざす旅は、想像を絶する厳しさだった。デンマーク嫌いでアイスランド人の年老いたガイド、ラグナルとは対立し、さらに予期せぬアクシデントに見舞われたルーカスは、やがて狂気の淵に落ちていく。瀕死の状態で村にたどり着くが……。

映画『ゴッドランド/GODLAND』本編映像
公開された本編映像は、植民地アイスランドにやってきた若きデンマーク人の牧師ルーカスと、デンマーク嫌いで、アイスランド人の案内人ラグナルが初めて対面を果たすシーンだ。

対面を果たし「ルーカス、牧師だ」とデンマーク語で自己紹介するルーカスに対し、ラグナルは「デンマークの悪魔め」とアイスランド語でぼそりと毒づく。ルーカスから「馬はあるか」「私が乗る馬は?」などと、デンマーク語で聞かれ続け、とうとうラグナルはアイスランド語で「この馬だ」と返事をするのだった。

その後、ルーカスは移動のため馬に乗る練習をすることになる。馬の名前をルーカスが聞いたところ、「トルクルだ」とアイスランド語でラグナルが答えたため、ルーカスには「タラ?」「魚のタラか?」と言葉が伝わらない。上手く馬を乗りこなせないルーカスだったが、「手綱は均等に引け」「馬を手荒に扱うな」というラグナルのアドバイスもアイスランド語のためわからない。最後には「いい馬を潰すな」とラグナルからアイスランド語で言われてしまう。

本作は、アイスランド南東部にて2年以上かけて撮影された。パルマソン監督は「脚本は、私が住んでいる地域、アイスランドの南東海岸周辺を念頭に置いて書かれています。ほとんどのロケ地は私が何度も訪れている場所です。なかには、車で行くことが不可能な場所もありました。そこでは、すべての機材を自分たちで運び、馬だけで移動しなければいけませんでした。この過程があったからこそ、この辺りの風景をとてもリアルに描くことができたと思います」と話す。

アイスランドで生まれ育った後、デンマークに長く住み“2つの全く異なる国によって分断されてきた”というパルマソン監督が、両国を対峙させ、文明と自然の対立、コミュニケーションの断絶による異文化との衝突、支配や信仰など、現代にも通じる普遍的な主題をあぶり出している。

また、3月30日には、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムにて、対談イベントが開催されることが決定。アートディレクター・映画ライターの高橋ヨシキと、映画評論家・翻訳家の柳下毅一郎による対談が予定されている。

あわせて、作家の乙一、ゲームクリエイターの小島秀夫らによるコメントが公開された。

コメント
乙一(作家)
死生観に変革を起こす神秘的な映像体験。
自分が人間であることを忘れないために、
人の姿を撮りつづけていたのかもしれない。

小島秀夫(ゲームクリエイター)
冬までに植民地アイスランドに教会を建てろ! そう命じられたデンマークの若き牧師の過酷な布教の旅。壮大で美しく、時折り見せる無垢なまでに悪意を放つアイスランドの大地。川、雪山、平原、砂漠、湿地、降り続く雨。デススト感がハンパない。人間を阻む大自然と信仰心との葛藤。そして、踏破した牧師を待つものは? 壊れていく牧師と移りゆきつつも威厳を放つ大自然との対比が素晴らしい。

佐藤健寿(写真家)
宣教師は「異端」を歩く。
しかし過酷な自然の中では人間そのものが「異端」なのだ。
美しい連続写真のような映画だった。

シバノジョシア(写真家)
アイスランドでの撮影中、向き合うのは大自然と圧倒的な孤独だ。異国から来た牧師が旅の先に見たのは何だったのか?
反芻が止まない。

南佐和子(写真家)
繊細さは大胆さにつながり 優しさは残酷さにエネルギーを注ぎこむ
それが心 我々は心に憧れ 心に気を許すべきではない

名越康文(精神科医)
写真家として、大きなカメラ機材を馬で運び過酷な旅をする姿に感動した。
人にとって大切な事は何かを教えてくれる。

本木雅弘(役者)
脈打つように迫る物語と、息を呑む映像美、
残酷なまでに清らかな大地が語りかけてくる、、
不変の引力を持つ作品。

琉花(モデル・フォトグラファー)
アイスランドでの息を呑むほどの美しい景色の数々。
自然の強さ、恐ろしさを知るとともに、本当に恐ろしいのは人間なのではないかと気づかされた。
(文=リアルサウンド編集部)

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