ホーネッツの新人ミラーの“GOAT”はコビーやレブロンではなくポール・ジョージ「僕らの世代で参考にする上で最高の人物」<DUNKSHOOT>

2023年のドラフト1巡目全体2位でシャーロット・ホーネッツから指名されたブランドン・ミラーは、ここまで64試合の出場で平均16.8点、4.3リバウンド、2.4アシストに3ポイント成功率36.8%(平均2.3本成功)を残している。

今季はビッグマンのヴィクター・ウェンバンヤマ(サンアントニオ・スパーズ)とチェット・ホルムグレン(オクラホマシティ・サンダー)が新人王候補のトップ2だが、201㎝・91㎏のフォワードは1、2月にイースタン・カンファレンスの月間最優秀新人賞に選ばれるなど、上々のルーキーシーズンを送っている。

2002年生まれのミラーは、テネシー州で生まれ育ち、アラバマ大で1年間プレーしてNBA入りした。彼がNBA選手で憧れていたのはマイケル・ジョーダン(元シカゴ・ブルズほか)、レブロン・ジェームズ(ロサンゼルス・レイカーズ)、コビー・ブライアント(元レイカーズ)などではなく、ロサンゼルス・クリッパーズでプレーするポール・ジョージだという。

3月26日(日本時間27日)に米スポーツ専門局『ESPN』に公開された記事のなかで、ミラーは自身の“GOAT”(史上最高の選手)をこう語っていた。

「レブロンを研究したことは一度もなかったね。別にレブロンを貶しているわけじゃないよ。(多くの人たちにとって)レブロンがGOATで、ベストプレーヤーなのはわかっている。でもレブロンやコビーを研究したことはないんだ。
僕の眼にはポール・ジョージこそがベストプレーヤーであると映っている。彼よりも多くプレーを観たり、その動きを取り入れようとした人はいない。ジョージが僕のGOATなんだ」

今季でNBA14年目のジョージは、ウイングとして申し分ないサイズ(203㎝・100㎏)を持ち、これまでオールスターに9度、オールNBAチームに6度、オールディフェンシブチームにも4度選ばれている攻守のバランスが取れたオールラウンダー。

現在リーグにはレブロンやカリー、ケビン・デュラント(フェニックス・サンズ)といったベテランが君臨しているが、新陳代謝が激しいウイングポジションで長年活躍を続けているジョージについて、ミラーはこう話す。

「今のリーグがどのようにして構築されてきたのかを表わしているようなものさ。僕らの世代でポール・ジョージは参考にする上で最高の人物なんだ」

昨年現役を引退したカーメロ・アンソニーは、昨年12月に自身がホスト役を務める番組『7PM in Brooklyn』にて、子どもたちが憧れる選手に彼の名前を挙げていた。

「子どもたちが話しているのは6フィート11インチ(211㎝)でボールを操り、シュート力があり、スナイパーとなって驚異的なプレーができるタイプなんだ。どうして今の子どもたちがPG(ジョージ)について話すのかって? 彼は『2K』(人気バスケットボールゲーム)で作ったようなタイプの選手だからさ」
ジョージの友人であるカール・アンソニー・タウンズ(ミネソタ・ティンバーウルブズ)も次のように語っている。

「彼のゲームは実に滑らかで、コート上でなんでもこなしてしまう。彼にはポストアップ、フェイダウェイ、ステップバックが備わっていて、(左右)どっちでも向かっていける。彼はなんでもできるのさ」

また、デンバー・ナゲッツで主力を務める28歳のアーロン・ゴードンは、ステップバックなどジョージのムーブを取り入れるべく練習を重ねてきた。その過程で本人からアドバイスを受けたこともあり、兄のように慕っているという。
「ポールはリーグで最もクールな選手の1人。本当に影響力があるんだ。俺たちは毎回対戦し、その度に彼はちょっとした専門的な知識や助言をしてくれるんだ」

現在33歳のジョージが、若手から声をかけられるようになったのはインディアナ・ペイサーズ時代の2015-16シーズンのこと。「あの年からちょっとずつ耳にするようになった。『あなたは僕の大好きな選手で、尊敬している』とかね」と本人は振り返る。

クリッパーズが誇る万能戦士は、初のリーグ制覇を向けて奮闘を続けているが、若手からベテランまで多くの人物に慕われていることは、選手冥利に尽きるだろう。

文●秋山裕之(フリーライター)

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