【宮田莉朋F2密着】耐え抜いた末の連続入賞も満足はせず「焦らずに前進していきたい」/第3戦レビュー後編

 2024年FIA F2第3戦メルボルン、日曜日のフィーチャーレースにおいて宮田莉朋(ロダン・モータースポーツ/TGR WECチャレンジプログラム)は前日のスプリントレース同様、12番手からスタートを迎えた。ポイント獲得のためにオーバーテイクを積極的に仕掛けていきたい宮田だったが、なかなかレースペースが上がらなかった。

「土曜日のスプリントレース後に、フィーチャーレースに向けてバランスを改善するためにセットアップを変更したんです。ただ、求めていたものよりも大きく変化してしまって、結果的に裏目に出てしまってしまいました。そのため、レースではプッシュできなかったのがちょっと悔しいです」

 フィーチャーレースはタイヤ交換が義務付けてられており、宮田は軟らかいコンパウンド(オプション/スーパーソフト)のタイヤでスタートした。そのリヤタイヤのデグラデーション(性能劣化)を抑えようとした変更が、裏目に出たようだ。

「アンダーステアがひどくて、フロントタイヤのデグラデーションが大きかったです」

2024年FIA F2第3戦メルボルン 宮田莉朋(ロダン・モータースポーツ/TGR WECチャレンジプログラム)

 そんな宮田に味方したのがピットストップのタイミングだった。この日もレースはバーチャル・セーフティカー(VSC)やセーフティーカー(SC)が出される荒れた展開となった。まず6周目に他車の接触によるアクシデントでVSCが出たが、VSC中はタイヤ交換義務が消化できないため、9周目のVSC解除後に上位勢が一斉にピットへ向かう。

 このとき、宮田が所属するロダン・モータースポーツは宮田の前を走行していたチームメートのゼイン・マローニをピットインさせ、宮田をステイアウトさせた。2台同時ピットインをすれば、あとからピットインする宮田が待たされて大きくロスするからだ。

 そのため、宮田はその翌周にピットロードへ向かった。そのタイミングと同時に、タイヤ交換を終え事実上のトップを走行していたデニス・ハウガー(MPモータースポーツ)のクラッシュに伴う2度目のVSCが出された。

「VSCが出たら入らないつもりだったし、チームからもいまピットインしても大丈夫と言われてピットインしたので心配はしていません。ピットインするまでずっとステアリング上のデルタが表示されていないかどうかをチェックしていて、ピットレーンに入った直後にステアリング上にデルタタイムが表示されたので、本当にギリギリのタイミングでした」

 さらに幸運だったのは、その直後にVSCからSC導入に変わったことだろう。そのため、コース上を走行しているマシンはさらに速度を落とさなければならず、ピット作業している宮田にとってはピットストップロスが大幅に削減され、ピットストップを終えたグループの中で4番手の状態で、再スタートを切ることとなった。

2024年FIA F2第3戦メルボルン 宮田莉朋(ロダン・モータースポーツ/TGR WECチャレンジプログラム)

 ただし、タイヤをプライム(ミディアム)に交換したレース後半でも、宮田はフロントタイヤのデグラデーションに悩まされて攻めることができず、ポジションを守るのが精一杯の状態だった。

「守って守ってのレースで、この順位でフィニッシュできたことは良かったです。また、勉強しながらのレースで土曜日に続いて日曜日もポイントを獲得できたことはいい経験になりましたし、サポートしてくれたチームに感謝しています。タイヤを理解していくことができれば、こうして順位を上げることができることがわかりました。また、クルマもこういうバランスだったら、戦えることがわかりました」

「あとは初めてのコースに、限られた時間でいかに対応していくかです。もっとタイヤを理解したうえで予選を戦うことができれば、もう少し前のグリッドからスタートできていたと思うし、そうなっていれば、もっと多くのポイントを獲得できていたと思います。ただ、それもステップ・バイ・ステップ。焦らずにチームとともに前進していきたいと思います」

2024年FIA F2第3戦メルボルン 宮田莉朋(ロダン・モータースポーツ/TGR WECチャレンジプログラム)

 3戦目でダブル入賞した宮田に、チームのエンジニアも高く評価している。

「彼らはプロフェッショナルなので、結果よりも内容を見てくれていて、前戦のジェッダでもレース終盤にファステストラップ争いをしていたことを評価していました。だから、ここでも『ポジションは気にしないでいいよ』と言ってくれて、成長しているところを見てくれていることはすごくうれしいです」

 しかし、宮田自身はまだまだ納得はしていない。

「日本でのダブルタイトル獲得を経て参戦しているので、僕としては初戦からトップ争いをしなければいけないという気持ちで戦っていました。僕の可能性を信じて採用してくれたチーム、そして送り出してくれたモリゾウさんをはじめトヨタ/TGRの皆さん、そして応援している多くのファンの皆さんの期待に応えるには結果を出すことなので、今回の5位という結果は少なからず、その期待に応えられたかなと思っています」

 オーストラリアでのレースが始まる前、宮田は「予選とレースでトップ5を目指したい」と語っていた。有言実行を果たして、WEC世界耐久選手権のテストが行われるポルトガル・ポルティマオへと向かった。

2024年FIA F2第3戦メルボルン ゼイン・マローニ(左)と宮田莉朋(右)
2024年FIA F2第3戦メルボルン 宮田莉朋(ロダン・モータースポーツ/TGR WECチャレンジプログラム)

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