【試乗記】ボルボ EX30 循環型社会へ向けて新しい概念で作られた新鮮さをもつEVモデル

ボルボから新しいEVがデビューした。「EX30」はBセグメントサイズのコンパクトEVでボルボに期待する価値を全て備えているだけでなく、企業ビジョンでもあるサスティナブルな社会へ向けての重要なメッセージも背負ったプロダクトでもあるのだ。

ボルボEX30 ボディカラー:クラウドブルー

ご存知のようにボルボはEV専用メーカーになることを宣言し、2030年までに100%EVにするとしている。国内ではEV失速のニュースを目にする機会が増え、EV化を見直しているという記事も多々ある。しかし為替の問題やウクライナの問題など、外的要素の影響も多々あり、EV失速と決定づけるには早計で、EU政府も大筋では方針の変更はしていない。

さて、そうした国内では流動的なイメージはあるものの、ボルボにとって日本は重要なマーケットでもあり、EV化を進めていきたい本音はある。つまり循環型社会へと導くことも、CO2削減を進めることも、交通安全を促進することもカーメーカーとしての矜持であり、その役目を担っているのがEX30の牽引から始まると言っていい。ボルボの循環型社会を目指す話は別の機会にするとして、今回はEX30のプロダクトについてお伝えしていこう。

プラットフォームはBEV専用に開発したSEAプラットフォーム。Sustainable Experience Architectureで、持続可能性を体験できる構造体という意味になる。このプラットフォームのリヤアクスルにモーターを搭載したリヤ駆動のモデルだ。

駆動モーターは3in1の構成で、モーター、インバーター、減速機が一体化したユニットで、ERADという名称がある。Electrical Rear Axle Driveの略だ。200kW(272ps)/343Nmという高出力で、コンパクトサイズなだけに強烈なトルクとパワーを持っている。現在のラインアップではこのリヤ駆動モデルのみだが、本国ではツインモーターモデルもあり、今後国内にも導入する予定ということだ。搭載するバッテリーは69kWhで航続距離は560kmもある。

またインバーター内のスイッチング素子にSiCを採用しており、電流の流れを制御する上でかなり高いレベルで高効率化されている。ボルボ・カー・ジャパンによれば「電車のようなウィーンという音がしなくなってますよ」という話も聞けた。

搭載バッテリーは69kWh 航続距離は560km

ボディサイズは全長4235mm、全幅1835mm、全高1550mmで立体駐車場への駐車ができるサイズに日本がリクエストをしたということで実現している。じつは横幅も1800mmをリクエストしたそうだが、そこは残念ながら実現しなかった。

全高1550mmで立体駐車場への駐車が可能

ライバルとなりそうなモデルでは、EVモデルはほぼなく、プジョー2008あたりだがボディサイズや価格では競合になり得るモデルだが量販モデルの位置付けモデルでもある。その他はICE搭載モデルになりそうだ。あるいは価格から見るとEX30が559万円なので、レクサスLBX(ICE)がプレミアムBセグメントで、アウディQ2もICE搭載車。またテスラモデル3はサイズが大きく、ニッサンリーフの大容量バッテリーがほぼ同等価格になるが、こちらもCセグメントサイズなのだ。

言ってみればライバル不在のコンパクト市場で、特に国内では扱いやすいサイズであり、長い航続距離も安心材料と言えるだろう。

実際に東京都内を走行しても扱いやすい大きさであり、モーター駆動ならではのレスポンスの良さ、鋭い加速力、高い静粛性といったEVならではの特徴を十分に感じることができる。

さらにこのEX30は装備類や素材などへのこだわりもあり、従来の自動車の概念とは異なる新しい感覚を得ることができるのは大きな魅力だ。

キーを持って近づけば自動でロックが解除され、5m離れると自動ロックされる。ドアを開けるとメーターパネルはなくなり、ダッシュボードは至ってシンプル。かつてスイッチや計器類がたくさんあって「コックピット」という表現がピッタリだったクルマから、リビングのソファに腰掛けるように運転席に座ることができるのだ。

必要な速度計などはダッシュボードセンターのモニターに表示され、またヘッドアップディスプレイもあるので、不便はない。そしてボルボはGoogleアカウントが使えることも大きな魅力。例えば自宅で目的地までのルートを検索したとして、車両に乗り込み、自分のアカウントでログインすると検索履歴はそのまま表示されるというわけだ。

また音声認識も「OK Google」が利用でき、窓の開閉や室温変更などもGoogleアシスタンスが行なってくれるのだ。これは逆に違和感がない使い勝手と言える。

シフトレバーもなくなりステアリングコラムの右側にセレクターがある。出庫してから戻るまでこのセレクターレバーに触れることもない。モーターは無段階で0km/hからトップスピードの180km/hまで変速なく加速できるし、減速もアクセルペダルだけで減速できるワンペダル走行も可能なのだ。そして信号で止まった時もブレーキホールドがあり、運転操作は至って簡単になる。もちろん最新のADASも搭載しており、高速道路や渋滞時などでの運転支援は疲労軽減につながる。

インテリアではリサイクル素材へのこだわりが目に見えるのだ。ボルボはリサイクル素材やバイオ素材の使用拡大を目指しており、2050年までの目標値としてリサイクル&バイオ素材のプラスチックを25%、リサイクルアルミニウムを40%、リサイクルスチールを25%に高める目標で車両製造をしている。

EX30ではリサイクル素材が17%、リサイクルアルミが25%、そしてリサイクルスチールが17%使用されており、企業メッセージの牽引役にもなっているわけだ。実際車内のドアハンドルやダッシュボードはリサイクル素材で作られており、目に見える領域でもリサクイルが理解できる。

そしてシンプリストなインテリアが印象的だ。スイッチ類はなくなり、必要なものだけがセンターディスプレイに集約され、多機能化しているEVでありながら、必要な情報だけに整理している感性は見事だ。国産メーカーが見習うべきポイントと言える。

ちなみに2023年の国内EV販売状況ではトップがテスラ・モデルYで3000台強、つづいてアウディQ4 E-tronが2位に。ついでテスラのモデル3、レクサスRZ、メルセデスEQBと続き、ボルボXC40Rechargeとなっている。そのXC40Rechargeは1048台の販売で、EV販売の伸び率は133.4%という成長を見せている。

2024年はこのEX30を3000台以上販売したい目標があると想像するが、その狙いは単にクルマの販売だけでなく、その製品が循環型社会へむけて貢献している一台であるというメッセージも手に入れることができる。もちろん車両からのCO2排出はゼロであり、車両製造におけるCO2排出対策も進めていることも将来を見据えると感度の高い方には魅力的に映ると思う。

高橋アキラと山下麗奈

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3月23日放送 FMヨコハマ『THE MOTOR WEEKLY』
この「ボルボEX30」をご紹介しました。
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(聴取期限 3月30日29時=31日午前5時)

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