「子どもの安全を確保できない 不信感しかない」退職を決めた先生たちの悲痛な叫び…幼稚園教諭15人中13人が一斉退園=静岡・焼津市【独自・詳報】

静岡県焼津市の私立幼稚園で教諭の大半が3月末で一斉退職する問題。退職する教諭らが取材に応じ、幼稚園を辞める理由について、経営者側の現場を顧みない姿勢が原因だと話しました。

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<退職する教諭>
「子どもの安全を確保できない環境。経営陣が子どもファーストでない。本当に不信感しかありません」

3月27日、SBSの取材に応じたのは、幼稚園を退職する教諭たちです。

焼津市にある私立の幼稚園では、在籍する教諭15人のうち13人が3月末で一斉退職することがわかっています。静岡県によりますと、一斉退職の理由について園側は「労働条件について教諭側が納得できないため」などと説明したということです。

しかし、実情は違うと教諭らは主張します。

「労働条件が理由ならこんなに長く働いていない」

<退職する教諭>
「私たちの退職理由は労働条件ではありません。先生の人数、環境を整えてほしいと再三声をあげたにもかかわらず、応えてくれないことが原因です」

「労働条件が退職理由なら、こんなに長く働いていない」

教諭たちが訴えたのは、園を経営する理事長の現場を顧みない姿勢でした。この幼稚園は理事長を夫が、園長を妻が務めています。教諭らによりますと、理事長が園を訪れることはほとんどなく、園長は体調不良を理由に2023年6月頃から休んでいるということです。

<退職する教諭>
「配置について子どもたちを見ているが、今の人数では足りないところがある」「理事長に(教諭の)人数を増やしてほしいとお願いしてきたが、用意されなかった」
「現場のことは現場に押しつけ、まったく関わろうとしてくれなかった」

教諭らによりますと、理事長は園に顔を出さない一方で「ちゃんと基準の人数はいるから」などと話し、教諭らの意見に聞く耳を持たず、アドバイスを送ることなどもなかったということです。

退職する教諭らは、園側に対し、補充される教諭への引き継ぎの機会を希望しましたが、これも聞き入れてもらえず、会わせてもらうことができないまま、退職を迎えることになりました。

「子どもたちのことが大事」本当はやめたくない…

<退職する教諭>
「とにかく子どもたちのこと、保護者のことを第一に考えてほしい。子ども、保護者、先生の気持ちに寄りそって現場を知ることから始めてほしい」

退職する教諭の1人は「退職する教諭も、残る教諭も、子どもたちやこの園が大好き。職員間も連携が取れていて、いい雰囲気のなかで働いてこれた。しかし(この経営者のもとでは)これ以上、子どもたちにとっていい環境が揃えてあげられないという気持ちが出てきてしまった。子どもたちのことが大事で、やめたくない気持ちのほうが強い先生がほとんどだと思うが、この状況では続けられない。ひとりひとりが多くの葛藤の末に退職の決断をしたと思う」と話しました。

幼稚園の理事長は、今回の一斉退職について、関係する皆さんに迷惑をおかけしたなどとお詫びした上で、大量退職が起きた理由については、理事長、園長と現場職員との間に信頼関係が構築できなかったためとコメントしています。

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