『TENET テネット』との繋がりも? ノーランが『オッペンハイマー』を語る特別映像公開

3月29日に全国公開されるクリストファー・ノーラン監督最新作『オッペンハイマー』の特別映像が公開された。

第96回アカデミー賞で作品賞を含む最多7部門を受賞した本作は、第二次世界大戦下、世界の運命を握った科学者J・ロバート・オッペンハイマーの栄光と没落の生涯を実話にもとに描いた伝記映画。2023年7月の全米公開を皮切りに、世界興収10億ドルに迫る世界的大ヒットを記録。実在の人物を描いた伝記映画としては歴代1位の記録を達成した。

公開されたのは、ノーラン監督が、オッペンハイマーの人生を映画化するに至った理由を語る特別インタビュー映像。ノーラン監督は、「1980年代のイギリスで育ちました。1980年代、私はティーンエージャーで、冷戦の終結に至るまで、核兵器と核兵器の危険性について大きな懸念が持たれていました。兵器に対する人々の意識は非常に高かったのです。それは、ポップカルチャーの中にありました。映画やテレビ番組、歌の中にあったのです」と、青春期を振り返る。彼が“オッペンハイマー”という名前を聞いた最初の記憶はスティングの楽曲「ラシアンズ(Russians)」の歌詞だといい、「核兵器のことを『オッペンハイマーの死のおもちゃ』と歌っていました。それが、原爆に関連してオッペンハイマーという名前を聞いた最初の記憶です」と明かす。

時を経て、その物語にさらに興味を持つようになったと続けるノーラン。「特に、『トリニティ実験』に至る過程で、オッペンハイマーと彼の仲間の科学者たちは、その装置を作動させることで全世界を破壊してしまう可能性があるのを完全に排除できなかったという情報を知ったときに」大きな衝撃を受けたと語る。世界滅亡の危機を感じながら、「それにもかかわらず、彼らは先に進んで、ボタンを押し、その一歩を踏み出してしまった。それはとても劇的な瞬間です。私は、オッペンハイマーの物語になぞらえて、SFのコンセプトを説明するために、それを『TENET テネット』の中の台詞で使うことにしました」と振り返る。

「『TENET テネット』が終わった後、映画に出演していたロブ(ロバート)・パティンソンから、オッペンハイマーが1950年代に行ったスピーチをまとめた本をもらい、そこで核の脅威について、そして核の脅威にどう対処するのが最善かについて話されていました。それが世界の歴史や私たちが生きている世界と関連していて、私はますますオッペンハイマーと彼の物語に興味を持つようになりました」と、天才物理学者の人生にさらに関心を深めていったというノーラン。そして、本作の原作となるカイ・バードとマーティン・J・シャーウィンによる『オッペンハイマー』読んだと続ける。「それは驚くべき本で、J・ロバート・オッペンハイマーの人生が深く研究され、詳細に考察されていました。その本を読んで、彼の人生を映画にするのは可能だと確信したのです」と、映画化に踏み切ることになった経緯を明かしている。

ノーランがオッペンハイマーの人生に興味をもった経緯には、スティングとロバート・パティンソン、そしてカイ・バードとマーティン・J・シャーウィンによる原作との出会いがあったことがわかる映像となっている。

(文=リアルサウンド編集部)

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