【奨学金】令和6年度よりさらに充実!奨学金制度をうまく利用しよう

お子様のいらっしゃる方必見!学費免除・減免になる「修学支援新制度」が充実しています。

大学進学率が年々上昇し、高等学校等卒業者の進学率は過去最高となる57.7%を記録したことが文部科学省が2023年12月に発表した「令和5年度学校基本統計(学校基本調査の結果)確定値」でわかりました。

少子化と大学全体の定員数の関係から「全入時代」とも揶揄されるほど大学進学のハードルが低くなっていますが、やはり子育てにおける総仕上げの大学は教育費の負担も大きく多くの家庭で学費捻出に頭を悩ましています。

そこで今回は、政府が進める「異次元の少子化対策」の一環であり今年4月からスタートする奨学金制度改正や返済不要の給付型奨学金などをご紹介していきます。

※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。

大学生の約半数が利用している奨学金制度

奨学金の需給状況はなんと大学生の約半数!2枚目の写真では文部科学省「高等教育の修学支援新制度」の詳細の図説をご覧ください。記事では「異次元の少子化対策」の目玉の一つ「給与型の新たな奨学金制度」について解説しています。

奨学金と聞くと苦学生が利用しているイメージがありますが、日本学生支援機構の「令和2年度 学生生活調査」から大学生(昼間部)では49.6%、大学院修士課程で49.5%、大学院博士課程で52.2%と半数の学生が何かしらの形で奨学金制度を利用していることが分かりました。

日本の奨学金制度は貸与型、いわゆる社会人になってから支払いの義務が発生する借金タイプが主流です。その中でも大学入学後に申請する場合、申請時の書類をもとに利息なしは利息ありの奨学金になるか日本学生支援機構が判断します。

貸与型の無利息タイプは年収約850万円以下(給与所得の4人世帯の目安)で申請者が高校生または大学1年次生の場合は高校での評定平均値が3.5以上(5段階評価)、利息ありは年収約1,200万円以下(給与所得の4人世帯の目安)で学習意欲がある、というのが利用条件になっています。

利息なしの方が条件が厳しく、大学進学後に奨学金の利用を考えている場合は「入試でいい点数を取ればいい」と思わず、高校時代から学校の成績も意識することも必要です。

在学中の支払い義務はありませんが、大学卒業後に毎月の返済がスタートします。安定した職に就ければまだしも、就職活動がうまくいかず不安定な雇用の中で奨学金の返済をすることも起こり得るため、「就職に失敗できない」というプレッシャーを感じる学生も少なくないです。

筆者も大学在学中に奨学金を利用しましたが、卒業後の長きにわたる返済は意外と家計への負担も大きかったです。利用者が学生の半数に近いことを踏まえると、将来結婚する場合は夫婦ともに奨学金利用者だったというケースも珍しくありません。

その場合、世帯への負担も増えるため「どのように家計を切り詰めて返済するか」という話し合いも必要になります。

4月から拡大する給与型奨学金

日本での奨学金は貸与型がメインで、欧米のような全額免除や一部免除といった給与型はごく限られた優秀な生徒のみが対象となる印象があり、日本では浸透しているとは言い難い状況でした。

2017年度から、独立行政法人日本学生支援機構の奨学金制度に給与型が新たに設けられたものの、対象となるのが「世帯年収380万円未満の世帯」(※両親、本人、中学生以下のきょうだいの4人世帯のモデルケース)とかなり限定されていました。

文部科学省では、しっかりとした進路への意識や進学意欲があれば、家庭の経済状況に関わらず、大学、短期大学、高等専門学校、専門学校に進学できるチャンスを確保できるよう、令和2年4月から高等教育の修学支援新制度を実施しています。

しかし、政府の「異次元の少子化対策」の目玉の一つとして今年4月から所得制限が厳しかった給与型の新たな奨学金制度が始まります。

それまで対象世帯の条件が緩和され「世帯年収600万円程度」になりますが、注意点もあります。具体的に新たに対象として含まれるのは以下の世帯に限られます。

  • 年収600万円までで扶養する子どもが3人以上いる多子世帯
  • 年収600万円までで私立の理工農系の学生の世帯

世帯年収の条件が緩和されても、多子世帯ではない文系学部の生徒は条件を満たさないため利用することができないので注意が必要です。

また、支援額も住民税非課税世帯では最大70万円の年間授業料が免除、給付型奨学金年間約91万円、270万円から300万円世帯(モデルケース)は3分の2免除、300万円から380万円世帯(モデルケース)が3分の1免除、そして新たに加わる対象世帯のうち多子世帯は4分の1、私⽴学校の理⼯農系の学生世帯は「⽂系との授業料差額に着⽬した⽀援」がそれぞれ免除となり、自宅外通学か自宅からの通学かによって額も変動します。

高等教育での支援新制度の対象機関は文部科学省のホームページで公表されているので、申請を検討する際は進学する大学または志望校が対象となっているか確認してください。

民間団体での給与型奨学金

企業や民間団体でも給与型奨学金で支援の輪が広がってきています。

日本学生支援機構のような公的機関での奨学金のほかにも、企業や民間団体でも学習意欲が高い学生や優秀な学生が経済的な理由で大学での学びを断念しないよう給与型奨学金で支援の輪が広がってきています。

奨学金では成績や世帯年収などの制限がつきものですが、なかには成績や世帯年収を問わない奨学金制度もあります。

キーエンス財団の奨学金

工場向けのセンサーや測定機を主力製品とする株式会社キーエンスが2018年に設立した「キーエンス財団」では2024年2月1日から4月5日の午前10時までの期間、新大学一年生、新大学2年生から4年生対象の奨学金について、以下の通り応募を受け付けています。

新大学1年生対象(締め切り2024年午前4月5日10時まで)

新大学1年生を対象とした返済不要の給付型奨学金の応募を受け付けています。

対象学部、所得制限はなく600名募集しています。既定の必要書類を提出し、一次選考、二次選考を突破した学生が奨学金を受けられます。給付期間は4年で、毎月10万円が支給されるので学費の捻出に不安を感じる家庭にとって心強い奨学金です。ただし、他の給与型奨学金との併用は不可となっています。

新大学2年生から4年生対象(締め切り2024年4月17日午前10時まで)

同じくキーエンス財団では新大学2年生から4年生を対象とした30万円を一括支給する返済不要の奨学金「がんばれ!日本の大学生」の応募を4月17日午前10時まで受け付けています。大学、学部学科、入学年度、取得済みの単位数等をWEB登録し、800字以内のテーマに沿った文章をWEB上に登録。その他に学生証のコピー、在学証明書、成績証明書、住民票を提出し本選考となります。

なお、在学生向けの奨学金は他の奨学金との併用不可の縛りはありません。

※詳細および最新の情報については、キーエンス財団のHP「https://www.keyence-foundation.or.jp/」をご確認ください

官民問わず多種多様な奨学金がある

多様な奨学金を利用できるチャンスがある

経済的に不安を抱えて進路進学に悩み、進学を断念する人は今も昔もいます。しかし、親世代の頃の奨学金制度に比べると、公的なものや民間、企業問わずかなり充実してきています。

欧米諸国に比べると給与型奨学金の浸透が遅れていた日本でも、少しずつ変化が起きています。家庭の事情で優秀な学生が進学を断念することないよう官民の奨学金制度をくまなく調べ、給与型奨学金への応募を積極的に行うようにしたいですね。

参考資料

  • 文部科学省 報道発表「令和5年 12 月 20 日 令和5年度学校基本統計(学校基本調査の結果)確定値を公表します」(PDF)
  • 日本学生支援機構「令和 2年度学生生活調査結果」
  • 文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
  • 文部科学省「経済的に困難な学生・生徒が活用可能な支援策」
  • 東京海洋大学「安心してこどもを産み育てられるための奨学金制度の改正」(PDF)
  • 文部科学省「支援の対象となる大学等の一覧」
  • キーエンス財団

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