『Eye Love You』二階堂ふみの “ブランディング” 大成功…ヒット作ではないがファンの好感度はさらに上昇【ネタバレあり】

視聴率や見逃し配信などで高い数値を出しているわけではないので、とても大ヒットとは言えない結果だが、二階堂ふみにとっては主演して大正解だったのではないか。

3月26日に最終話(第10話)が放送された二階堂ふみ主演のファンタジック・ラブストーリー『Eye Love You』(TBS系)。TBSの恋愛ドラマ枠である「火曜ドラマ」の作品である。

主人公・侑里(二階堂)はチョコレートショップを立ち上げている社長。12年前の海での事故がきっかけで、目が合った相手の心の声が聞こえてしまうテレパス能力を持っている。侑里は他人の本音が読めてしまうゆえに傷つくことが多く、恋愛から長らく遠ざかっていた。

そんな侑里が、年下の韓国人・テオ(チェ・ジョンヒョプ)と偶然知り合うのだが、心の声が韓国語なので本音がわからないことが新鮮。そして、表に出す言葉や感情表現が超ストレートでピュアなテオに惹かれていく――という物語だ。

■【ネタバレあり】別れてしまった2人の結末は?

最終話序盤で2人は別れることに。「心が聞こえる少女」という絵本の内容が、侑里とテオに起きていた現実の出来事とリンクしており、その物語はテレパス能力者と愛する者が一緒にいると不幸になってしまうという結末が描かれていたためだ。

――結論を言うと、2人は復縁してハッピーエンドとなった。

テレパス能力を消す方法がわかり、能力がなくなれば一緒にいても不幸にならずにすむとのことで、侑里とテオは再会。ただ、テオがそのままの侑里を望んだため、能力は消さず、ともに歩んでいくことにする。

後日、絵本に描かれていた不幸になる結末自体が誤りだったと判明し、テレパス能力を持ったまま2人は結ばれるというフィナーレ。

忌憚なく言わせてもらうなら、主人公カップルに困難が降りかかり、その壁を乗り越えてのハッピーエンドというのは、王道中の王道なので、完全に予定調和の最終話。予想の斜め上をいくような出来事が起こってハラハラする展開はなかったので、終始、安心して観ていられた。

本作を最終話まで視聴したファンの多くは、この予想を裏切らない万全のハッピーエンドを求めていた人が多そうなので、作品としてこの終わり方が大正解だっただろう。

冒頭でもお伝えしたとおり、視聴率や見逃し配信の数字的には大ヒットとは言えないが、SNSなどで「ロス」を訴える熱量の高い視聴者が多く、固定ファンがしっかりついているので、二階堂ふみのキャリアとして、本作への出演は大正解だったように思う。

■固定ファンからの好感度が急上昇で計画どおり?

二階堂と言えば、考察ブームで社会現象を巻き起こした『VIVANT』(2023年/TBS系)のヒロインを演じたことからも、力の入った大型ドラマにキャスティングされる実力派というイメージが強い。

2012年の映画『ヒミズ』をはじめ、2013年の映画『脳男』、2014年の映画『私の男』など、エグい社会派問題作で憑依型のキレッキレ演技を見せていたため、“通好みの作品” に出演するこだわり女優といった印象もあるかもしれない。

しかし、二階堂自身はそうしたイメージだけで固定されないように出演作を厳選している気がする。

たとえば不条理なコメディ映画『翔んで埼玉』シリーズ(2019年、2023年)にGACKTとダブル主演しているし、2021年にもドタバタ系のラブコメ『プロミス・シンデレラ』(TBS系)で主演していた。

意外とポップな作品やライト層に刺さる作品にも積極的に出演しており、その流れからの『Eye Love You』主演だったというわけだ。おそらく二階堂は自身のブランディングとして、ポップかつライトなエンタメ作品にも出演するのだろう。

『Eye Love You』はがっつりと固定ファンを掴んでおり、そのファンの間では二階堂の好感度がさらに上昇したはず。だから、大ヒットとはならなかったものの、彼女としては計画どおりの成果が得られたのではないか。まさにブランディングの勝利と言えそうだ。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。『日刊SPA!』にて恋愛コラムを連載中。ほかに『現代ビジネス』『文春オンライン』『集英社オンライン』『女子SPA!』などにコラムを寄稿

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