アニメ業界の実態を調査 時給600〜800円が最多「搾取と言われても反論が難しい」

一般社団法人 日本アニメフィルム文化連盟(NAFCA)が、アニメ業界従事者への実態調査を実施。323件の回答をもとにした調査結果を3月27日に発表した。

アニメ業界従事者の月間平均労働時間は、平均で219時間、中央値が225時間であり、最大で月間336時間働いていることが判明。

また、時間単価(いわゆる時給)で見ると、600円〜800円相当が14%と最も多く、中央値は1111円であることが明らかになった。

「低収入・長時間労働」なアニメ業界の実態調査

日本アニメフィルム文化連盟は、サンライズ元常務、A-1pictures元社長、アニプレックス元社長の植田益朗さんが代表理事をつとめる業界団体。設立は2023年4月27日。

日本アニメフィルム文化連盟によれば、今回の調査は、「低収入・長時間労働」などアニメ業界のイメージが実態とどの程度合致・乖離しているのかを確認するために実施。アニメ業界の現状を把握することで、今後政策提言などに活かすとしている。

なお、323件の回答のうち、アニメーターが最多(全体の59%)の191人。

次いで、演出が44人、制作関係が35人、キャラ・メカデザインが27人、プロップ・衣装デザインが23人、声優が23人、監督が20人、仕上げが15人、美術が14人、撮影が11人、CGが11人、音響関係が10人、シナリオライターが4人だった。

今回は、プリプロダクションおよびプロダクション工程の職種にしぼって分析が行われた(※)。

(※)日本アニメフィルム文化連盟はその理由について、「アニメ業界の中で声優は働き方が他職種と一線を画すことが改めて確認された」と説明。今後声優に特化した調査を行うとしている

【調査概要】
・調査期間 :2023年12月4日〜2024年1月31日
・調査主体:一般社団法人日本アニメフィルム文化連盟(NAFCA)https://nafca.jp/
・調査対象:NAFCA会員のうちアニメ業界従事者
・有効回答数:323件
・調査方法:Webアンケートツールを用いたオンライン調査

中央値は月間225時間 アニメ業界の超長時間労働

労働時間について、全体の71.4%が1日8時間以上、30.4%が10時間以上働いており、平均月間休日数は58.8%が6日未満であると回答した。

これらを元に、アニメ業界従事者の月間平均労働時間を計算すると、平均が219時間、中央値が225時間、最大で月間336時間働いているという結果に。

日本全体の平均月間労働時間162.3時間(厚生労働省調べ)と比較しても、過剰な長時間労働が強いられており、日本アニメフィルム文化連盟も「異常とも言える状態が見てとれます」と指摘。

この労働時間は年齢が高くなっても改善される傾向は薄く「業界の慢性的な人材不足の問題が数値として表れた」と分析している。

約4割がアニメ関連月収20万円以下

収入については、全体の37.7%がアニメ関係からの仕事が月収20万

円以下、年収に換算すると240万円以下であると回答した。

(なお、アニメ業界以外の仕事に従事しているかの質問には、77.6%が「現在は従事していない」「従事したことがない」と回答している)

月間平均収入と労働時間を掛け合わせて、時給換算すると、600円〜800円相当が14%と最も多く、中央値は1111円という結果になる。

これは、最低賃金の全国平均額1004円(2024年3月現在)は超えるものの、東京の最低賃金1113円は下回っている。

こうした状況について、日本アニメフィルム文化連盟も「やはりこのままでは搾取と言われても反論が難しい状態」と指摘。

3兆円規模の市場を生み出している制作現場としてはあまりにも低いと言わざるを得ません」と苦言を呈している。

なお、より詳細な調査レポートについては、NAFCAの公式サイトで公開されている。

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