血痕は「黒くなる」「赤み残る可能性ある」…証人尋問は最後まで平行線【袴田事件再審公判ドキュメント⑫】

1966年、静岡県旧清水市(現静岡市清水区)で一家4人を殺害したとして死刑判決を受けた袴田巖さん(88)の再審は3月27日、最大のヤマ場とされる証人尋問が終わりました。検察側、弁護側双方の証人が法廷に立ちましたが、「5点の衣類」の血痕に赤みが残るのか、見解ははっきりと割れました。
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<村山浩昭元裁判官>
「長いですね。長すぎる。10年経って、まだ再審公判の判決出てないんですからね。外で普通の市民生活されていたっていうことなんですけど、ただ、結局まだ身分的には死刑囚なんですよね」

袴田さんの再審公判が行われたこの日、静岡市の街頭で再審法の改正を訴えたのは、村山浩昭元裁判官です。2014年3月27日、静岡地方裁判所の裁判官として、袴田さんの再審開始と釈放を認めました。あれからちょうど10年、袴田さんの再審は大詰めを迎えています。

<LIVEしずおか 滝澤悠希キャスター>
「3日連続の証人尋問も、きょうが最終日。きょうは、検察側と弁護側の証人合わせて5人全員が法廷に集まり、裁判官らの質問に回答します」

1966年、一家4人が殺害されたいわゆる「袴田事件」で死刑が確定している袴田さんの再審は25日から証人尋問に入り、3日目は、検察側2人、弁護側3人の証人が一堂に会して、質疑を受ける「対質」が行われました。

最大の争点は事件発生から1年2か月後に現場のみそタンクから発見された、「5点の衣類」の血痕に赤みが残るのか、黒く変化するのかです。検察側証人の法医学者2人はいずれも「赤みが残る可能性はある」とあらためて説明し、「弁護団の実験は、みそタンク内の酸素量などを考慮せず結論づけている」と指摘しました。一方、弁護側の証人3人は、裁判官からの質問に対しても「血痕は黒くなる」と主張。双方の証人の見解はずれたままでした。

裁判官からは、検察側が主張する血痕が黒くなる反応の「阻害要因」についての質問が集中しました。

<裁判官>
「醸造中のみその状況は」
<検察側証人 久留米大学 神田芳郎教授>
「嫌気的になる」
<弁護側証人 旭川医科大学 奥田勝博助教>
「急激な(酸素の)減少があっても、酵母菌が死滅するほどではない」
<弁護側証人 旭川医科大学 清水惠子教授>
「酸素はゼロではない」

<袴田弁護団 間光洋弁護士>
「この3日間の尋問で、疑いの余地ないまで立証された。揺るがしようのない所まで立証できたと証明できた」
<弁護側証人 旭川医科大学 清水惠子教授>
「(検察は)1年以上みそ漬けされた衣服に付着した血痕に赤みが残る抽象的な可能性論を展開。それは仮説。それを実証実験と通して示していただきたいと申し上げた」

証人尋問という審理のヤマ場を越えた袴田さんの再審公判。次回は4月17日に開かれ、5月22日には審理を終える予定です。

<袴田さんの姉・ひで子さん(91)>
「ひと山、ふた山も越えた」

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