スキー場だけじゃなかった!誰もが無関係じゃない意外な「暖冬の影響」を気象予報士が解説

2023年から2024年にまたがる冬は「暖冬」を実感した人が多いと思いますし、実際に気温のデータを見ても平年を上回る傾向。
ただ、おそらく多くの人が「暖冬だとスキー場は雪不足で大変そうだけど、自分は関係ないよね」「むしろ寒すぎなくて助かる」と感じているのでは…と思いますが、じつはそうではありません。

今回は、野菜ソムリエ・気象予報士・防災士の資格を持つ植松愛実さんが、誰もが無関係ではいられない意外な「暖冬の影響」を解説します。

雪が「いつも降る場所」で降らない

「西高東低の冬型」の天気図のイメージ(筆者作成)

「暖冬」というのは文字通り「暖かい冬」で、気温が平年を大きく上回る冬のことですが、その特徴は天気図にも表れます。

冬の典型的な天気図と言えば、小中学校の教科書にも載っている「西高東低の冬型」。
日本海側で雪が降りやすく、太平洋側で晴れて乾燥しやすい気圧配置です。

ところが暖冬になると、この「冬型」の天気図の日が圧倒的に減って、いつも雪が降る日本海側であまり降らなくなります。

雪不足で困るのは…?

いつもの冬と比べて雪が少なくなると、まず思い浮かぶのが、スキー場など雪を観光資源とする場所が困りそうだ、ということです。
もちろんこれは深刻な問題で、実際に営業ができなかったり、オープンが遅れたりしたスキー場がありました。

一方で、私たち日本人は、知らず知らずのうちに雪をレジャー以外の目的にも利用しています。
それが、ダムに貯める水。
正確には、冬の間は雪を貯めていて、春以降に徐々に解けて水となりダムの安定的な貯水量につながります。

そして、当然ながらダムは「いつも雪が降る場所」に建設されていますから、暖冬で天気図が変わってしまうと、春以降のダムの貯水量が激減してしまうのです。

実際にあった!暖冬後の渇水

今から8年前の2016年、東北から九州にかけてほぼ全国的に渇水(水不足)となったことがありました。

このときは暖冬の影響に加えて初夏の雨も少なく、とくに関東と四国では深刻な状況に。
「減圧給水」と言って、水道水の圧力を下げる措置が取られた地域もあり、水道が出にくかったことを覚えている人もいるかもしれません。

2016年より以前にもこのパターンはくり返し起きていて、暖冬による水不足はめずらしいことではありません。
そしてこれまでの積雪量を考えると、2024年も同じような状況になってもおかしくないのです。

私たちにできることは?

まずは、日頃の生活の中で水を大切に使う習慣をつけたいところ。
ひとりひとりが取り組むことでできれば水不足を避けたいですし、もし水不足になってしまっても節水が身についていれば苦労が減ります。

一番簡単な取り組みは、歯磨きのときにコップを使うこと。
水を流しながら手ですくって口をゆすぐよりも、圧倒的に節水になります。

また、野菜ソムリエの資格も持つ筆者としては、野菜の「ため洗い」がおすすめ。
「ため洗い」は流水ではなくボウルなどに溜めた水で野菜などを洗うことですが、節水になるだけでなく、ブロッコリーやカリフラワーなど流水ではきれいにならない野菜の汚れや小さな虫が簡単に取れます。

もちろん水道代の節約にもなっていいことづくしですから、ぜひ今日からやってみてください。

■執筆/植松愛実…身近な食材でできる時短作り置き料理やパーティー料理、簡単に彩りを増やせる料理のコツや、いざという時に備える災害食まで、「食」に関する情報を発信。また、東北や東海、関西にも住んだ経験から、各地の伝統的な食材にも詳しい。野菜ソムリエ、食育インストラクター、気象予報士など保有資格多数。
編集/サンキュ!編集部

※記事の内容は記事執筆当時の情報であり、現在と異なる場合があります。

© 株式会社ベネッセコーポレーション