「風化させてはいけない」 解けぬ心 冥福祈る 那須雪崩事故から7年 関係者や周辺住民ら献花 刑事裁判5月に判決

雪に覆われた事故現場を望む献花台の前で手を合わせる関係者=27日午前11時45分、那須町湯本

 栃木県那須町湯本で2017年3月、登山講習会中だった大田原高山岳部の生徒7人と教諭1人が亡くなった雪崩事故は27日、発生から7年を迎えた。事故現場の斜面が一望できる同所、小丸山園地展望台に設けられた献花台には、同日朝から関係者や地元住民らが訪れた。静かに手を合わせ、「事故を風化させてはいけない」と語った。雪崩事故を巡り、業務上過失致死傷罪に問われた教諭ら3人の刑事裁判は検察、弁護側が全面対決する中で2月に結審した。判決は5月30日、宇都宮地裁で言い渡される。

 この日、事故現場付近は一面が雪で白く覆われた。冷たい風が吹く中、献花に訪れた人たちは前方の白い斜面を見上げ、それぞれが8人の冥福を祈った。

 事故当時、救助活動に携わった那須山岳救助隊の相馬芳子(そうまよしこ)さん(76)は毎年、命日に献花に訪れる。「この時期になるといつも心がざわつく。何年たっても当時の状況を思い出す」と明かし、「安らかに眠ってほしい」と涙を浮かべた。

 県山岳・スポーツクライミング連盟は事故後、県内高校の山岳部の活動にアドバイザーとして同行するなどしている。訪れた5人の役員の一人で理事の大森基男(おおもりみちお)さん(75)は「忘れてはいけない。同じような事故が起きないように活動したい」と語気を強めた。

 発生当時、大田原高の教員だった男性(62)は副担任をしていた生徒を亡くした。「無念で仕方がない。7年たっても気持ちの整理がつかない」と声を絞り出した。後の世代に伝えようと、幼い孫らと訪れた地元住民の姿もあった。

 刑事裁判では、登山講習会の責任者や引率者だった教諭ら3被告が雪崩の発生を予見できたかどうかなどが主な争点となっている。検察側は「大量降雪や急斜面の危険性などを全く検討せず、安易に計画を変更し漫然と訓練を行った」などとして、それぞれに禁錮4年を求刑。3被告は「雪崩発生は予想できなかった」と無罪を主張している。

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