フジタら/トンネル切羽の性状変化を毎日予報、発破振動データを活用

フジタと地球科学総合研究所(東京都文京区、阿部進社長)は、山岳トンネル掘削に伴う発破の振動を利用し、切羽の状態(性状)変化をリアルタイムに予測する「切羽予報」を開発した。前方150メートル先まで毎日、切羽性状の良しあしを天気予報のように「晴れ」「雨」などで4段階評価。作業関係者で情報を共有し安全性の向上につなげる。今後は同社施工の現場へ積極的に導入していく考え。
切羽から一定の距離に専用の記録装置を1台設置し、発破の振動を記録。地震波干渉法(自己相関処理)を使い、一つの振動データを波形処理する手法を確立した。切羽近傍の地質変化面から戻ってくる波(反射波)を抽出して分析し、1回の発破振動から切羽性状を予測することに成功した。
山岳トンネル工事では毎日複数回の発破を行う。その都度、振動データを取得し、切羽の性状変化を「晴れ(安全)」や「曇り(やや注意)」「雨(厳重注意)」といった天気予報のように予測。振動データは自動更新して作業当日、翌日の切羽予報が行える。
専用のウェブサイトからスマートフォンやタブレット端末でも確認でき、リアルタイムに作業へ反映できる。結果良否の投票機能も搭載。結果を蓄積することで予測精度の向上を図る。
国土交通省四国地方整備局の発注工事で2023年7月に竣工した「令和元-4年度横断道羽ノ浦トンネル工事」(徳島県小松島市~阿南市)に導入し、有用性が確認できたため実用化に至った。今後、複数の現場適用を通じて得られる大量の切羽予報データの活用やAIを組み合わせた予報精度の向上など、さらなる切羽近傍作業の安全性向上を目指していく。

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