東北整備局/インフラDXセンター開設から1年、人材育成の好循環へ

インフラ分野のDX推進には人材育成が不可欠だ。東北地方整備局が宮城県多賀城市の東北技術事務所に「東北インフラDX人材育成センター」を開所して間もなく1年、産官学から約1300人が利用した。東北技術事務所の職員がアイデアを出し合いカリキュラムを工夫。利用者のDXに対する興味をかき立て、学びを実務につなげるステップを後押ししている。

□実務へ役立つ研修を□
センターの立ち上げや研修、講習会のカリキュラム作成で中心的な役割を担い、講師役も務める施工調査・技術活用課の伊藤秀樹技術活用係長は「正解がない状態でスタートした。この場所で何を学べば実務に役立つかをひたすら考えた」と振り返る。
建設業界の人材不足は極めて重い課題だ。解決策の一つとして脚光を浴びるのが建設の生産プロセスにICTを活用し、生産性向上を図る「i-Construction」の展開だ。インフラDXはi-conを中心に現場の効率化に向けた取り組みの幅を広げる狙いがある。人材育成センターには、3Dデータの処理や3DCADソフトの操作を学ぶ高性能パソコン20台を置き、直轄で原則適用するBIM/CIMに対応できるカリキュラムを組む。
「参加者の満足度を高めるため、欲している情報を取りこぼさないよう、アンテナを高くしていくことが大事」と伊藤係長。ともに研修の講師を務める同課の田中孝之計画係長は「機器の使い方も分からない状態からDX関連を担当してきた。まずはやってみることが大事だ」という。日進月歩で進化する技術と向き合い、自らスキルアップする努力も欠かせない。

□活躍の場、士気の高まり期待□
東北整備局は、インフラ分野のDX推進に職員の士気の高まりを期待する。山本巧東北整備局長と宮本健也企画部長は「DX研修とi-Construction新技術体験学習会に関する取り組み」「東北インフラDX人材育成センターの視察など運営および説明対応」を高く評価。それぞれ「Good Job賞」を伊藤係長と田中係長に贈った。講師として利用者の多くの質問に答え、自らの仕事に真摯(しんし)に向き合ってきた。災害時を想定し、東北技術事務所にある体験型施設を空撮し、点群化をベースに断面図の作成まで一連の流れを研修することでいざという時に対応できる人材を育成するという目標もある。
職員の成長を見守り、支えてきた東北技術事務所の高橋秀典所長は「訪れる方の職種やレベルに合わせ工夫した研修が口コミで広がり、多くの方が利用してくれた」と職員をねぎらう。「他の事務所に異動しても東北技術事務所からきた職員はDXに強い、と言われるはず」と活躍の場が広がることを期待する。

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