国交省/24年度の直轄港湾工事・業務実施方針、上限規制見据え支援強化

国土交通省は2024年度の直轄港湾工事・業務の実施方針を固めた。23年度に続き「働き方改革」「担い手の育成・確保」「生産性向上」を柱に据える。4月から建設業に適用される時間外労働の上限規制に対応するため、人件費などの超過費用を発注者が負担する施策などを新たに打ち出す。業界団体からの要望を踏まえ、発注見通しに掲載する情報の拡充や技術者育成支援策の強化にも取り組む。
上限規制によって元請職員の労働時間が減ると、派遣職員を雇用したり業務を外注したりして、労働力不足をカバーするケースが想定される。これらの必要経費を発注者側で負担する枠組みを検討する。
追加の給料(人件費)などが積算計上分を上回った場合、その費用を契約変更時に計上できるようにする。24年度から2年間の試行を通じて工事規模ごとの追加費用を把握。予定価格の算出に用いる現場管理費率に反映できるかを判断する。
現行の積算上8時間を超える就業時間を設定している作業船(グラブ浚渫船など)を使う工事は、積算基準の見直しに着手する。ICT施工などの生産性向上策を取り入れ、就業時間を8時間とする試行工事を実施。従来と同じ工期や工事費で、所定の施工数量を確保できるかを確認する。
各地方整備局が作成する発注見通しは、業界団体からの要望を踏まえ掲載情報を拡充する。入札予定時期は、四半期単位から月単位での表示に変更。監理技術者を専任で置く開始時期も記載し、受注の計画を立てやすくする。発注ランクや適用する試行工事といった内容も掲載する。
監理技術者が特定の工種だけで受注機会が増え、他の工種で実績を積めない点が課題となっている。人手不足に対応するため技術者の育成制度を充実させる。24年度に、現行の「若手技術者登用促進型(工事)」で40歳未満としている年齢制限を撤廃。すべての技術者がいつでも、新たな工種で実績を積めるようにする。
現場技術者の負担となっている工事関係書類の作成や管理にかかる手間を減らす。書類作成の受発注者間の役割分担や書類の電子化といった改善策をまとめた手引を国交省が策定し、各整備局に周知する。工事検査に必要な検査書類数も40種類から7種類に減らす。
中小企業のICT活用を促すため、所定の技術を導入した事業者に加点する「モデル工事」も内容を変更する。これまで試行項目だった「遠隔臨場」「小黒板情報の電子化」「電子検査」の三つは一定程度普及したため、対象から除外。24年度からは、出来形計測や事前測量などへの「ICT機器の活用」と「施工管理システムの活用」の二つを対象にする。これまで実施していた工事成績評価への加点措置も廃止し、ICT機器の導入費用を補助する内容に切り替える。

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