中建審が工期基準改定へ/受発注者の責務拡充、上限規制前提に見積もりを

国土交通省は27日に開かれた中央建設業審議会(中建審、大久保哲夫会長)総会で、時間外労働の罰則付き上限規制の適用を踏まえた「工期に関する基準」の改正内容を提示した。会長一任で取りまとめることで了承され、中建審が近く実施を勧告する見通しだ。上限規制を順守した工期を確保するため、受発注者それぞれの立場で必要となる対応を追記。適正工期が確保された見積もりを受注者が提出し、その内容の確認や尊重を発注者に求める。両者の協調した行動を促し、適正な工期設定に実効性を持たせる。=2面に関連記事
中建審が2020年7月に実施を勧告して以降、基準改定は初となる。23年10月の前回会合で、上限規制の適用を間近に控えても工期不足に起因した時間外労働が多く発生している現状を複数の委員が問題視。理念的な規定にとどまる現行基準を、より具体的で実効性を持たせた形に見直すよう求める意見が上がり、事務局の国交省が検討に乗り出していた。
受発注者の責務として互いに求められる具体的な行動を順序立てて書き加えた。契約締結前や変更契約が必要となる場合、まずは上限規制を順守した工期が確保された見積もりの提出を受注者の努力義務とする。発注者には提出された見積もりの内容を確認し、尊重してもらう。
仮に上限規制を順守できない工期が設定された場合、誰のどのような行為に問題があったのか事後的にチェック可能な枠組みにする狙いもある。発注者や元請の立場で、受注者や下請が上限規制を順守できる工期設定に協力し、規制違反を助長する行為を控えることも新たに明記する。
さらに工期全般や工程別に考慮すべき事項を拡充。技能者やオペレーターの移動時間が労働時間に含まれる可能性や、運送業者が物品納入に要する時間、猛暑日による不稼働などを考慮する必要性を追記する。工期や労働者の確保、交代勤務などの実施に必要な経費を請負額に適正に反映させるべきとも明記。勤務間インターバル制度を有効な取り組みとして例示する。
国交省が主導した今回の基準改定は、上限規制への対応に迫られた緊急措置的な意味合いが強い。今国会に提出された建設業法改正案では、現行で発注側に限られる「著しく短い工期の禁止」の適用範囲を受注側にも広げる方向。同日の総会では法改正を視野に入れ、さらなる基準見直しの検討を求める声もあった。

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