災害に強い地域を目指して 植木区長と網代会長が対談 横浜市瀬谷区

自治会・町内会の大切さを話す網代会長

元日に発生した能登半島地震。被災地の惨状に、防災・減災の重要性が改めてクローズアップされている。今回は瀬谷区の植木八千代区長と瀬谷区連合町内会自治会連絡協議会の網代宗四郎会長にインタビューを行い、日頃の備えなどについて語ってもらった。※敬称略

能登半島に甚大な被害

――能登半島地震の被災地では今なお厳しい状況が続いています。

植木「1月の能登半島地震では多くの方が亡くなられ、家屋などにも甚大な被害が発生し、現在も多くの方が避難生活を送っています。お亡くなりになられた方のご冥福をお祈りするとともに、被害にあわれた皆様に心からお見舞いを申し上げます。横浜市では発災当初から職員を派遣しており、瀬谷区からもこれまでに8人派遣しました。これからも1日も早い復旧・復興に向けてお支えしていきます」

網代「令和6年能登半島地震でお亡くなりになられた皆様のご冥福をお祈り申し上げますととともに、被害にあわれた皆様にお見舞い申し上げます。私もニュースなどから見聞きする被害の大きさや避難生活の様子に胸が痛くなります。それと同時に、横浜で同じような地震が起きたら自分や家族の命、そして地域を守れるだろうかと考えさせられました」

--被災地支援の取組や現地の様子は。

植木「1月末に職員が応援に入った地域では多くの木造家屋などが全半壊し、水道などのライフラインにも甚大な被害が発生していました。多くの方が先の見えない避難生活を余儀なくされていました。支援にあたる役所の職員も多くが被災者で、疲弊しながら災害対応を行っていました。

派遣から戻ってきた職員からは、日ごろ地域の方々が工夫を重ねながら、実践的な訓練を行っていただいていることが、実際に災害が起きたときには必ず効果を発揮すると強く感じたという報告を受けました」

自然災害の脅威と不安

--昨年は関東大震災から100年という節目の年でした。

植木「関東大震災100年を契機に、瀬谷区では防災啓発に力を入れてきました。この100年、市内で震度6以上の地震は起きていませんが、地震はいつ、どこで起こるか予測できず、今、大きな地震が襲ってくるかもしれません」

網代「能登半島地震の被害の大きさを見て自治会の皆様からは『地震の備えに何が必要か』などの声が多く聞かれるようになりました。穏やかな日常を一瞬にして破壊した自然災害の脅威を自分事と感じているのではないかと思います」

自助の重要性

--自治会・町内会ではどのような対策を。

網代「南瀬谷ニュータウン自治会でも様々な訓練や備蓄をしています。それぞれの自治会や町内会で訓練などが行われていますので、参加したことのない人や子どもたちにもぜひご参加いただきたいと思っています。そして、ご自身やご家族をどう守っていくか、地域でどのような取組をしているのかをより多くの人に知っていただき、災害に備えていただきたいと思います」

--「自助」もクローズアップされています。

網代「訓練では初期消火や避難所運営など災害を想定して行いますが、それは自分の命が守れて初めて行えること。まずは自宅などで自分や家族の命を守ることが何より大事です。家具の固定、高い所に物を置かない、火災防止のため消火器を備えるなど対策をしていただきたいと思います。

ご家庭での備蓄については年齢や季節、障害やアレルギーなど、それぞれの家族の状況に合ったものを備えていただくことが必要と思います」

植木「区役所としても各家庭での備蓄に関しては、水や食料など最低3日分、出来れば1週間分をご準備いただきたいとお知らせしています。今回の地震でトイレは非常に大きな問題となっています。トイレを心配して必要な水分をとらないと、体調を崩す恐れもあります。トイレパックの備蓄はとても大切だと改めて思いました。ペットを飼われている方は、ペットの居場所の安全確保や備蓄も必要ですね」

ご近所での「共助」

--「共助」において、自治会町内会が果たす役割も大きいですね。

網代「大地震が起きた時、真っ先に力になるのはご近所です。お互いに声を掛け合い、助け合うことがとても大事だと思います。阪神淡路大震災の時、救助された方の約8割はご近所の方などに助けられたということです。いざという時に助け合えるには、ご近所同士での顔の見える関係を日ごろから作っておくことが大事だと、地域で皆さんと話しています。自治会、町内会にぜひ加入し、防災訓練をはじめ、お祭りやスポーツ大会、公園愛護や福祉保健の活動、子どもたちの見守りなどを通じて、ご近所同士が知り合い、お互いを思いやれる関係を作っていけるようにと思っています」

植木「日ごろから地域のつながりができる場づくりをしていただき、ありがとうございます。このつながりは『いざ』というときの大切な力。区役所としても、こうした地域のつながりづくりを支援するとともに、地域での活動をより多くの方に知っていただき、地域活動の大切さを伝えていきたいと思います」

網代「道で会った時の『おはよう』『こんにちは』といった何気ない普段のあいさつも立派な取組の一つ。『困ったときはお互い様』の『顔の見える関係づくり』を地域全体でつくっていければと思います」

行政の取組

--「公助」を担う区の取組を教えて下さい。

植木「今回の地震を受け、横浜市の令和6年度予算に新たな内容として様々な震災対策を盛り込んでいます。また、瀬谷区では、新たな防災の担い手を育てる取組もしています。より多くの区民の方々が自分やご家族の命を守ることができるよう防災について考えていただく機会をつくっていきます。

そして、地域を守るためには地域の中でのつながりが重要です。お住まいの地域の自治会・町内会などが行う訓練や様々な行事に参加するなど、地域でのつながりづくりをしていただきたいと思います」

今日から備えよう

--災害対策は地域における喫緊の課題です。

網代「大震災はいつ発生するか分かりません。発生してから慌てるのではなく、日ごろの備えが重要であることを改めて実感しました」

植木「みなさまも『自分だけは大丈夫』と思わずに、出来る事を今日から、ぜひ実施していただきたいです」

--本日はありがとうございました。

横浜市や瀬谷区の取組を話す植木区長

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