選抜高校野球大会 夢舞台 常総ナインを後押し 記録員・小野寺さん 「夏また戻る」

試合前、スタンドにあいさつしてベンチに戻る小野寺稜輝記録員(左)。右は若林佑真主将=甲子園

選抜高校野球大会2回戦で前回準優勝の報徳学園(兵庫)に敗れ、8強入りを逃した常総学院(茨城)。甲子園までの戦いで、記録員としてチームを陰で支えたのが小野寺稜輝(いずき)さん(3年)だ。選手として甲子園の土を踏むことはできなかったが、この日は大きな声でナインを後押し。健闘もかなわず敗れたが、試合後には「甲子園の雰囲気は最高だった」と夢舞台をすがすがしい表情で振り返った。

小野寺さんは、東京都出身で小学1年から野球を始めた。中学生の頃、2003年夏の甲子園大会決勝でダルビッシュ有選手(米大リーグ・パドレス)を擁する東北高(宮城)を破り、全国制覇を成し遂げた映像を見て、常総学院に憧れた。

「本気で野球をやりたい。ここで勝負したい」。そう志して入学したが、1年秋から相次いでけがに見舞われた。2度の手術を余儀なくされ、昨夏の甲子園出場を懸けた県大会では入院先で試合を観戦したことも。当時を「もどかしく悔しかった」と振り返る。

リハビリ生活を続けながら「何かチームのためにできることを」と考えた結果、選手復帰を目指しながら選手のサポートもできる記録員の道を見つけた。しかし、スコアを付けた経験はゼロ。書籍などを読みあさり、練習試合ではスコアを記録する「実践練習」を積み重ねた。

記録員として初めてベンチ入りしたのは昨秋の県大会。続く関東大会でチームは4強入りを果たし、センバツ出場がかなった。

データ収集班としても活躍し、試合映像やスコアを読み取り、対戦校の特徴などを選手に伝えた。ベンチでは「誰よりも声を出して、メンバーが力を最大限に発揮できるよう意識している」といい、細かな声かけも忘れない。グラウンドに立つ選手たちも「ベンチでいつも前向きな言葉をかけてくれる」と信頼を置く。

この日の試合では、03年夏の全国制覇時の主将で、現在は野球部長を務める松林康徳さん(38)とともにベンチ入り。投打の記録をスコアブックに刻みながら、選手たちを試合終了まで鼓舞し続けた。

目標の頂点には届かなかったが、「良い経験をさせてもらった。相当努力をしないと背番号は背負えないが、全力を尽くして夏にまた戻ってきたい」と成長を誓った。

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