「定礎」って何!?マニア歓喜のグッズもある!?知られざる「定礎」の正体を徹底調査しました

建物の入り口付近でしばしば見かける「定礎」って何!?設置される意味から内部に隠された秘密、多様なデザインまで、知られざる定礎の世界を深掘り!

定礎とは!正体と読み方について

建物入り口でよく見かける「定礎」とは、建物が完成したことを記念して設置されるプレートのことです。読み方は「ていそ」といい、定礎には建設年や建築主、施工者の名前などが記されています。

外壁に設置されることが多く、腐食を防ぐために御影石や大理石、ステンレスなどの素材でできているものがほとんど。

定礎はオフィスビルをはじめ、マンションや商業施設、学校などの公共施設等に設置されていますが、特に設置義務があるわけではありません。あくまで建物を建てるときの慣習で設置されるものであり、設置するかしないかはそれぞれの自由。

また「定礎」と記さなくてはならないといった決まりもないため、どんな形、どんな名前でもOK。建設時の想いや建物の歴史を残して設置するものが「定礎」であり、建物の「心」のような存在です。

ちなみにインターネット上には、あらゆる場所で定礎が見られることから、「定礎を設置しているビルは、株式会社定礎という巨大企業の所有施設」というジョークも存在するほど。そのまま聞いていたら信じてしまいそうな絶妙なジョークですよね。おそるべし!

定礎式で建物に定礎を設置する意味

建物を建てる時には、工事開始から完成までの間に、安全と繁栄を祈願する神事が行われます。

・工事を始める前に、土地を清め安全成就を祈願する「鎮魂祭」や「起工式」
・建物の基本構造の完成時に、これまでの感謝と工事完了までの安全を祈願する「上棟式」
・建物完成にあたり、建物の末永い安全と堅固な礎を築く意味を込めて行なう「定礎式」
・すべての工事が完了後、無事完成したことを神々に奉告する「竣工式」

定礎は、建物完成時に行われる定礎式で設置されますが、定礎を設置する理由は、建物の安泰を願うためです。私たちが何気なく目にしている定礎は、単に建物の一部として飾られているわけではなく、実は利用者の安全の願いも込められている意味深い存在なのです。

ちなみに定礎式は、ヨーロッパの建築着工時に行われる、礎石を据え付ける儀式に由来したもので、ギリシャ・ローマ時代から続くものと言われています。

国内でも、昔は着工時に建物の完成を祈願して行われていましたが、時代とともに建築の種類や工法が変わり、現在では建物完成時に行うのが一般的。

定礎には中身がある!タイムカプセルの役割を果たす定礎箱

定礎が意味深い存在であると言えるのには、もう一つ理由があります。それは、定礎がタイムカプセルの役割を果たすためです。

先述した定礎式では、御影石や大理石、ステンレス製の定礎板(定礎石)でしっかりと封じられた「定礎箱」というものを設置します。この定礎箱に大きな秘密があり、中にはなんと建築当時の新聞や紙幣、硬貨、建物に関する資料、さらには関係者のメッセージなどが封入されています。※定礎箱がない場合もあります。

一見すると単なるプレートに過ぎない定礎。実は内部に時代の証が秘められていること、ご存じなかった方も多いのではないでしょうか。

定礎箱は、腐食に強い素材で作られた定礎板で密封されているため、建物が取り壊されるまで中身を見ることはできません。定礎は、建物の安全を祈願する神事的な意味合いを持つと同時に、その時代の記録を後世へと伝える重要な役割も果たしているのです。

実は定礎にはさまざまな種類がある!ユニークなデザインに注目

ここまでは知られざる定礎の役割について詳しくご紹介しました。

建物の歴史を示す役割と後世へと情報を残す役割を持つ定礎。建物としての重要な役割を担っていますが、実は定礎には決まったデザインの型がなく、建物ごとに形が違うのも大きな魅力。

アート作品のような美しいデザインのものから、一風変わったユニークな形状のものまで、建物の特色や建築主の意向によってさまざまなスタイルの定礎が存在しています。

SNS上にも「#定礎」で投稿されている定礎がたくさんあり、マニアの方も多くいる様子。投稿を見ていると本当にユニークな定礎がたくさん出てくるので、写真を見ているだけでも楽しいですよ。

私も本記事を執筆中に、街中の定礎を探してみたくなり、散策がてらウォッチしてきました!いくつかご紹介させていただきます。

これぞ王道!どっしりと構えた定礎

まずは定礎の文字がしっかりと目立つデザイン。どれも似たように見えますが、フォントの種類やサイズなどが微妙に違います。個人的には左下のきゅっとコンパクトに収まったようなデザインが好み。右上は、時代を感じる定礎ですが、定礎の文字色がすりたての墨で書いたようなくっきりとした色合いになっています。

伝統的でありながらもスタイリッシュな定礎

こちらは、文字色が付けられていない定礎たちです。ぱっと見では定礎の文字を認識できない、主張が控えめのデザイン。でもこのタイプの定礎は、さきほどの王道タイプに比べて記載事項が多いように感じます。書いていることが多いからこそ、主張が強くなりすぎないように色を付けていないのかなと考察してみました!

こんな書き方もアリ!表現をアレンジした定礎

こちらは別の言葉で表現されている定礎。定礎と気づけたときのなんとも言えない達成感!特に一番上の1992は、定礎であると気付ける人も少ないのではないでしょうか。洋風なデザインでとてもスタイリッシュですよね。右下の「竣工」と名付けられた定礎は、誰が見ても意味がわかりやすくて◎

定礎ウォッチの醍醐味!個性的なデザインの定礎

最後にご紹介するのは、ユニークなデザインの定礎たち。左下は銅像と一体になっている珍しい定礎です。定礎のプレートの隣には、銅像の作品名のプレートも別で設置されていました。右下は三鷹の森ジブリ美術館の定礎。入り口のすぐ近くにひっそりと設置されています。タイルで作られていてとても可愛いですよね!

ちなみにジブリ美術館では、この定礎のデザインを採用した定礎Tシャツというグッズも販売されています。

マニア必見!定礎グッズは見つけたら即買い級!?

定礎に魅了されるマニアは多く、過去には定礎のマグネットやミニチュア、シールなどのグッズも販売されていました。現在は、定礎にまつわるグッズがかなり限られているようなので、今後の商品展開に期待したいところ。

すこしニッチですが、定礎は全国どこにでもあるので、集め始めたら長く続く趣味になるかもしれませんよ!

文/滝谷遥 ※暮らしニスタの人気記事を再配信しています。

© 株式会社主婦の友社