「それでは、Enjoy!」坂本龍一が語った最後のメッセージ『Ryuichi Sakamoto | Opus』コメント映像

2023年3月に逝去した坂本龍一の最後のピアノ・ソロ演奏を記録した、長編コンサート映画『Ryuichi Sakamoto | Opus』が、4月26日より自らが音響監修を務めた109シネマズプレミアム新宿で先行公開、5月10日より全国公開される。このほど、収録場所で撮影した坂本龍一のコメント映像が披露された。

昨年の3月に逝去した音楽家 坂本龍一。闘病生活を続けていた彼が最後の力を振り絞り演奏したソロ・コンサート。2022年9月、東京のNHK 509スタジオで行われた撮影に、坂本のためにカスタムメイドされ、長年コンサートで愛用したヤマハのグランドピアノだけで臨んだ。「Merry Christmas Mr. Lawrence」、2023年に発表された最後のアルバム「12」からの曲、初めてピアノ・ソロで演奏された「Tong Poo」まで、自身が選曲した20曲から構成。ボーダーを越え活動を続けた坂本の軌跡を辿る曲目、鍵盤を奏でる指と音楽家の息遣い、その人生が刻みこまれた手。坂本が全面的に信頼を寄せた監督と撮影クルーたちが入念に撮影プランを練り上げ、親密かつ厳密な、世界でひとつしかない宝物のような映画空間を生み出した。坂本自身がアプルーブし、入念なポストプロダクションを経て完成した、坂本の最初で最後の長編コンサート映画だ。

本作は、ヴェネチア国際映画祭でのワールドプレミア上映以降、ニューヨーク、山形、東京を始めとする世界中の映画祭で絶賛され、既に28カ国もの国と地域での公開が決定している(3月25日時点)。海外メディアからは「坂本龍一の音楽的キャリアの広さと深さの全てを完璧に表現している」(variety)、「これは坂本龍一からの贈り物だ」(The New York Times)、「1台のピアノ演奏から生まれるあらゆる音の響きや息遣い、モノクロームで演出された光の変化、丁寧なカメラワーク、そして映し出される世界的音楽家。これは言葉のない心を揺さぶられるドラマである」(The Hollywood Reporter)と多くの賞賛を浴びている本作だが、この度坂本龍一自らが本作について撮影時に語った貴重なコメント映像と、坂本が全面的に信頼を寄せた、監督をはじめとするメインスタッフからのコメントが到着した。

本作の撮影が行われたのは坂本が亡くなる約半年前の2022年の9月。映像では「2020年の6月に癌であることが分かり、表立った活動はしておらず現在も治療を続けています」と自らの状況を告白。そして「かなり体力も落ちてしまって、通常のコンサートは難しいんですよね。今回は1曲ずつここで撮影して編集し、一つのコンサートとして発表することにしました」と本作を撮影するに至った経緯を話す。続いて本作の収録場所となったNHKの509スタジオについて「40年前かな、NHK‐FMの番組を担当していた時に毎週のように来ており、このような大きなスタジオは特別な時にしか使えませんでしたが、(509スタジオは)とっても音が良いんですね、何度も録音したことがありますが、ここを今回特別にお借りすることができました」と1980年代にDJを務めていたNHK-FM「サウンドストリート」当時の話を引き合いに出しつつ、坂本が「日本でいちばん音のいいスタジオ」と評する場所での撮影が実現したことを語った。最後に作品を鑑賞する我々に向けて「通常のコンサートのように楽しんで頂けたら。それでは、Enjoy!」と締めくくった。

また、本作は坂本が全面的に信頼を寄せた約30名ものスタッフが集い、8日間にわたり撮影が行われた。監督を務めた空音央は「坂本龍一が意図したコンサートをできるかぎり忠実に映画化するため、本人含めスタッフ一同、全身全霊でOpusを作り上げました」と丁寧に親密に作品を作り上げたことを語り、「ウトウトしたら音楽に揺さぶられながら寝ちゃうのも一興。本物のコンサートのつもりで音に身を預け、体験していただければ、(坂本龍一)本人も嬉しかったんじゃないかと思います」とコンサート映画である本作ならではの楽しみ方について言及する。

撮影を務めたビル・キルスタインは「撮影が始まると、坂本さんの演奏、美しいレコーディング・ホール、入念なサウンド・レコーディングが相まって、まるで大聖堂で撮影しているかのような、あるいは森の中でじっと座っているかのような、独特の雰囲気が生まれました」と撮影中の神秘的な空間に魅了されたとコメント。

編集を務めた川上拓也は「監督や現場スタッフのみなさんが、それぞれの役割を全うされて、丁寧に捉えた美しい撮影素材をお預かりし、その素材の素晴らしさに常に新鮮な刺激を受けながら、坂本さんが音のひとつひとつと語り合うドキュメンタリー映画と捉え、編集しました」とスタッフ、そして世界的音楽家である坂本へのリスペクトを語った。

長らく坂本龍一とタッグを組み本作で整音を務めたZAKは「この音を通して、その創造力、ピアノと一体化した身体、それが空間と調和する美しい生命を見て欲しい」と坂本龍一が全身で奏でる“音”の素晴らしさについてコメントした。

モノクロの4Kフォーマットカメラ3台を使用、そして坂本が絶賛するスタジオで撮影された本作は、通常のコンサートでは見ることのできなかった坂本の表情、ペダルを踏みこむ音、坂本の身体表現と共に奏でられる鍵盤の音や光の揺らめきが詳細に捉えられている。

▼スタッフ コメント

■空音央(監督)
坂本龍一が意図したコンサートをできるかぎり忠実に映画化するため、本人含めスタッフ一同、全身全霊でOpusを作り上げました。出来上がった映画には物語やセリフはありません。ピアノと身体、音楽と表情だけのコンサート映画です。ウトウトしたら音楽に揺さぶられながら寝ちゃうのも一興。本物のコンサートのつもりで音に身を預け、体験していただければ、本人も嬉しかったんじゃないかと思います。Enjoy the concert!

■ビル・キルスタイン(撮影)
『Ryuichi Sakamoto | Opus』での私の担当は照明とカメラでした。撮影が始まると、坂本さんの演奏、美しいオーケストラ・レコーディング・ホール、入念なサウンド・レコーディングが相まって、まるで大聖堂で撮影しているかのような、あるいは森の中でじっと座っているかのような、独特の雰囲気が生まれました。私は常に観察する状態を維持するよう努めようと、坂本さんのライブ・パフォーマンスをスクリーンに収めるために、あらゆる仕草やディテールを記録できるように準備しました。
My responsibilities on Opus were light and camera. Once filming began, the combination of Mr. Sakamoto’s performance, the beautiful orchestral recording hall and the meticulous sound recording created a unique atmosphere – as if we were filming in a cathedral or sitting motionless in a forest. I tried to maintain a state of constant observation – to be ready to record every gesture and detail that could help translate the experience of Mr. Sakamoto’s live performance to the screen.

■川上拓也(編集)
監督や現場スタッフのみなさんが、それぞれの役割を全うされて、丁寧に捉えた美しい撮影素材をお預かりし、その素材の素晴らしさに常に新鮮な刺激を受けながら、坂本さんが音のひとつひとつと語り合うドキュメンタリー映画と捉え、編集しました。大変光栄であり、純粋に楽しい作業でした。

■ZAK(録音・整音)
この音を通して、その創造力、ピアノと一体化した身体、それが空間と調和する美しい生命を見て欲しい。

『Ryuichi Sakamoto | Opus』
2024年4月26日(金) 109シネマズプレミアム新宿にて先行公開、5月10日(金) 全国公開
音楽・演奏:坂本龍一
監督:空音央
撮影監督:ビル・キルスタイン
編集:川上拓也
録音・整音:ZAK
配給:ビターズ・エンド

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