年金10万円でも「キツすぎる負担」…日本で「30年後に高齢者になる人」を待ち受けるもの

(※写真はイメージです/PIXTA)

人生100年時代。一体何歳まで働き続けなければならないのか……という不満はともかく、実際何才まで働くことができるのか……という不安が強いですが、「年金」をあてにしていても大丈夫なのでしょうか。本記事では「日本人の年金」について見ていきます。

「65歳から100歳まで」年金を受け取ったとしたら…

いわゆる「年金」と言われる制度は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2階建て構造になっており、それぞれ以下の条件で受給できます。

“老齢基礎年金

老齢基礎年金は、保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上ある場合に、65歳から受け取ることができます。

また、20歳から60歳になるまでの40年間の全期間保険料を納めた方は、65歳から満額の老齢基礎年金を受給できます。保険料を全額免除された期間の年金額は2分の1(平成21年3月分までは3分の1)となりますが、保険料の未納期間は年金額の計算の対象期間になりません。

老齢厚生年金

厚生年金の被保険者期間があって、老齢基礎年金を受けるのに必要な受給資格期間を満たした方が65歳になったときに、老齢基礎年金に上乗せして老齢厚生年金を受給できます。ただし、当分の間は、60歳以上で下記の条件により受給資格を満たしている方は、65歳になるまで特別支給の老齢厚生年金を受給できます。

・老齢基礎年金を受けるのに必要な資格期間を満たしていること

・厚生年金の被保険者期間が1年以上あること”『日本年金機構』ホームページより

60歳からの繰上げ受給をすることもできますが、「65歳から」が基本となっている制度です。上記の仕組みからわかるように積立方式であり、自分が支払った保険料から将来受け取る額が算出されます。

65歳から受け取れる制度であり、「何歳まで」という上限は記載されていません。100歳まで受け取ったとしたら、35年間、ざっくり年間100万円(月およそ8万3000円)もらったとしても、3,500万円が受給される計算となります。

ところで、このお金はどこから支払われるのでしょう。

2050年には「1.2人で1人の高齢者を背負う」ことに

年金制度のもう一つの特徴として、賦課方式であることが挙げられます。現在、受給者に支払われている年金の財源は現役世代であるということです。よく言われる話ではありますが、改めて直視すると、超高齢化社会の日本において、この先も成り立たせるのができるのか非常に不安な制度です。わかりやすい例があります。

“実際に今から50年ほど前までは、現役世代9.1人が1人の高齢者を支えていました(総務省「国勢調査」、社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口/2012年1月推計」)。これは「胴上げ型」とも呼ばれ、多くの人で支えていますから、1人の負担はそれほど多くありませんでした。

それが、2010年の時点では2.6人で1人の高齢者を支えるようになりました。これは「騎馬戦型」と呼ばれています。小中学校の運動会などで騎馬戦の経験のある人もいると思います。3人で1人を支えるのは不可能ではありませんが、なかなか大変なものです。少しの間ならまだしも、そのままずっと生活するとなれば、いずれ耐え切れなくなってしまうでしょう。

騎馬戦型の場合、単純計算で高齢者に毎月10万円の年金を支払うためには、現役世代が1人当たり、毎月4万円程度を負担しなければならないことになります。現役世代はマイホーム資金や子どもの教育費と、ただでさえ家計が苦しいのに、高齢者のためにそれだけの出費をしなければならないのは大きな負担です。

これだけでは終わりません。

さらに、2050年になると、1人の高齢者を現役世代1.2人が支えるようになるといいます。これは「肩車型」と呼ばれています。ほぼ1人が1人の年金を負担するわけですから、現実問題としては、ほとんど不可能ではないでしょうか。無理に支えようとすれば、現役世代自体が破綻しかねません。”『30歳から定年までで2億円つくる ほったらかし資産運用術』より

高齢者が長生きし続け、現役世代は減り続ける……。恐ろしい超少子高齢化社会を直視すると、年金制度をこの先成り立たせることができるのか、甚だ疑問です。

対策としては、①年金の受給額を減らす、②受給できる年齢を引き上げる、などが考えられますが、これはあくまで「年金制度を成り立たせる」ための対策であって、そのときの受給者(高齢者)に負担を強いるものとなります。

「老後2,000万円不足問題」から風潮が変化

だからといって、減り続ける「現役世代」が支えきれるものでもありません。一時期、「老後2,000万円不足問題」が取り沙汰されましたが、現状の貯蓄額からあまりに乖離している人が多かったためか大混乱を招き、「人生100年時代」というやわらかい感じの言葉で、老後不安を「みんなでがんばっていこう」という風潮に変わりました。

厚生労働省のホームページには、「人生100年時代」について以下のように掲載されています。

“(人生100年時代構想会議中間報告より引用)

ある海外の研究では、2007年に日本で生まれた子供の半数が107歳より長く生きると推計されており、日本は健康寿命が世界一の長寿社会を迎えています。

100年という長い期間をより充実したものにするためには、幼児教育から小・中・高等学校教育、大学教育、更には社会人の学び直しに至るまで、生涯にわたる学習が重要です。

人生100年時代に、高齢者から若者まで、全ての国民に活躍の場があり、全ての人が元気に活躍し続けられる社会、安心して暮らすことのできる社会をつくることが重要な課題となっています。”

「日本は健康寿命が世界一の長寿社会」と書かれていますが、これは暗に「働き続けてください」と言われているような感覚も得ます。「働くことはやむなし」と観念したところで、「仕事はあるのでしょうか?」。

年金制度の危機的状況に鑑みて、「老後の備え」はしておきたいものです。

© 株式会社幻冬舎ゴールドオンライン