【避難指示解除10年/田村・都路】住民つなぐ店、次世代に

買い物客に応対する渡辺さん(左から2人目)。店の利用者が増えていると感じている=田村市都路町・ど~も岩井沢店

 田村市都路町は4月1日で原発事故の避難指示解除から丸10年を迎える。住民の生活環境の整備や新しい産業の創出など、地域の復興・再生に向けた取り組みはどこまで進んだか。地域の現状を追った。

 阿武隈高地のほぼ中央に位置する田村市都路町。中通りと浜通りを結ぶ国道288号沿いのプレハブの建物には、昼時になるとトラックの運転手や工事関係の作業員、近隣住民といった買い物客が次々やって来る。「年々利用する人は増えたかもしれないね」。プレハブの商業施設「Domo(ど~も)岩井沢店」を運営する都路町商業施設協議会長の渡辺美保さん(58)は、開店から10年の歩みを振り返る。

 商業施設は、東京電力福島第1原発事故による避難指示が解除された5日後の2014年4月6日にオープンした。都路町商工会に加盟する小売店の肉や魚などの生鮮食料品、生活用品を扱う。目の前の国道は復興事業で大型車などの交通量が多いことから、弁当やおにぎりなど手軽に食べられる商品も増やした。

 帰還した住民にとっては日用品の買い物に加え、交流の場にもなってきた。仕事帰りの男性は弁当などを購入し、渡辺さんらと世間話をしてから家路に就くのが日常だ。「お互いの体調を話したり、育てた野菜を商品として置いたりして、人がつながる場所になっている」と渡辺さんは話す。

 都路地区には東日本大震災当時、約1000世帯約3000人が住民登録していた。今年2月29日現在の住民登録は849世帯1938人で、住民の死亡や出生による増減に加え、転出入などを踏まえて帰還率は93%となっている。住民の生活環境を良くするため、市は2025年中のオープンを目指し、都路地区に複合商業施設を新設する計画を立てている。渡辺さんの店も複合商業施設内に移転する予定だ。

 だが、建設場所の選定やテナントに入る事業所の不調などがあり、思うように計画が進まなかった。都路地区には現在、コンビニ1店と個人店が数店あるのみで、十分な商業施設があるとは言いがたい。渡辺さんも整備計画が二転三転したことで、移転を迷う時もあった。採算が取れるか見通せないことも、不安に感じている。

 それでも移転を決めた。「都路に買い物をする場所がなくなることは避けたいし、帰還した住民が買い物の不便さを感じるようでは、帰還も進まないのではないか」。そう感じているからだ。渡辺さんは「次の世代に都路をつないでいくためにも、やれることをやっていきたい」と言葉に力を込めた。

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 商業施設「Domo(ど~も)」 田村市都路町への帰還支援策の一環で岩井沢、古道両地区に1店舗ずつ公設で整備された。都路町商工会員でつくる都路町商業施設協議会が運営している。古道店は2019年7月に閉店し、岩井沢店が営業を続けている。

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